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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する
第5話 Sクラス(仮)
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「諸君、入学おめでとう。我がアストリア魔法学校は……」
数日前の入学試験で当日に合格を言い渡され、今日の入学式を迎えたのだけれど、この学長といい、教会にいた司祭といい、どうして年配の男性は話が長いのだろうか。
「では、以上で入学の式典を終わります。このホールを出て真っ直ぐ進んだ所に、新入生のクラス分けを貼り出していますので、各自の教室へ移動してください」
やっと終わった。
人の波に乗りながらホールを出ると、そのままクラス分けが張り出されている場所へ。
私の名前は……あった。
当然のSクラス。
一夜漬けとはいえ、筆記試験は完璧だったし、魔法も使えるしね。
だけど、「ソフィア=ロートレック(仮)」というのは、どういう事かしら。
私以外にSクラスとなった人が四人いるけど、その人たちには(仮)なんて、付いていないのだけど。
とりあえず教室へ移動してみると、
「お、来たね。ソフィア、僕の事を覚えているかな?」
「えぇ、もちろん。錬金魔法の先生ですね?」
生徒は未だ誰も来ておらず、入試の時に会った若い試験監督の人が居た。
「はっはっは。その通りだよ。皆が揃ったら改めて自己紹介するけど、僕はヴィクトール=ジェラン。このSクラスの担任だ」
「担任の先生……では、クラス分けに記載されていた、(仮)の意味を教えて欲しいんですけど」
「あー、あれね。いやー、正直に言うと、かなり驚かされたんだよ。ソフィアはテレポートだなんて物凄い魔法を使えるだろ? だから僕は迷わずSクラスに推したんだけど……その、筆記試験の点数がね……」
「え!? もしかして私、筆記試験でどこかミスがありました? 満点……とまではいかないにせよ、九割以上は取れている自信があったんですけど」
「うん。魔法理論は完璧だった。これまで前例の無い、満点の回答だったよ。……魔法理論は」
やった。思っていた通り、完璧っ!
……って、ヴィクトール先生の言い方だと、まさか一般知識がダメだったって事なの?
あれこそ、完璧に解答出来たのに。
「あー……察したみたいだね。その通りで、ソフィアは一般知識の点数がかなり低くてね」
「何故ですか!? 完璧な解答だと思うのですが」
「納得いかないって顔だね。じゃあ、試験に出て来た問題を、かなり簡単にした問題をいくつか出題しよう。……お使いで、一つ銀貨三枚の食料を五個買いに行くと、銀貨何枚支払う?」
え? こんなの一般知識どころか、就学前の幼児でも分かる問題じゃない。
「馬鹿にしないで下さい! こんなの答えはゼロに決まっています!」
「……計算式は?」
「街の皆さんが教会へ寄付してくださるので、ゼロ枚の物を何個買おうとゼロ枚です」
「…………分かった。幾つか確認しようと思ったけど、今ので十分だ」
「何がですか?」
「ソフィアが、魔法理論も魔法実技も満点なのに、一般知識が一番下のFクラス並の点数だった理由だよ」
え? 一番下のクラスの点数? 私が? 何故!?
「どうしてですかっ!?」
「おそらく、ソフィアは幼い頃から教会に居たんだろうね。なんて言うか、ちょっと普通の生徒とは考え方にズレがあるかもしれないね。だけど魔法に関しては、このSクラスの中……いや、魔法学校の教師を含めてトップクラスだ。ソフィアの考え方が、教会の常識から脱したら、(仮)が外れるよ」
「ど、どういう意味か分からないのですが」
「大丈夫。僕がついているからね。素晴らしい魔法の才能を持つソフィアを、僕が脱教会へ導く。それが担任である僕の役目だ」
ヴィクトール先生が熱く語っているけど、私は別にズレてなんていないんだからっ!
余計なお世話よっ!
数日前の入学試験で当日に合格を言い渡され、今日の入学式を迎えたのだけれど、この学長といい、教会にいた司祭といい、どうして年配の男性は話が長いのだろうか。
「では、以上で入学の式典を終わります。このホールを出て真っ直ぐ進んだ所に、新入生のクラス分けを貼り出していますので、各自の教室へ移動してください」
やっと終わった。
人の波に乗りながらホールを出ると、そのままクラス分けが張り出されている場所へ。
私の名前は……あった。
当然のSクラス。
一夜漬けとはいえ、筆記試験は完璧だったし、魔法も使えるしね。
だけど、「ソフィア=ロートレック(仮)」というのは、どういう事かしら。
私以外にSクラスとなった人が四人いるけど、その人たちには(仮)なんて、付いていないのだけど。
とりあえず教室へ移動してみると、
「お、来たね。ソフィア、僕の事を覚えているかな?」
「えぇ、もちろん。錬金魔法の先生ですね?」
生徒は未だ誰も来ておらず、入試の時に会った若い試験監督の人が居た。
「はっはっは。その通りだよ。皆が揃ったら改めて自己紹介するけど、僕はヴィクトール=ジェラン。このSクラスの担任だ」
「担任の先生……では、クラス分けに記載されていた、(仮)の意味を教えて欲しいんですけど」
「あー、あれね。いやー、正直に言うと、かなり驚かされたんだよ。ソフィアはテレポートだなんて物凄い魔法を使えるだろ? だから僕は迷わずSクラスに推したんだけど……その、筆記試験の点数がね……」
「え!? もしかして私、筆記試験でどこかミスがありました? 満点……とまではいかないにせよ、九割以上は取れている自信があったんですけど」
「うん。魔法理論は完璧だった。これまで前例の無い、満点の回答だったよ。……魔法理論は」
やった。思っていた通り、完璧っ!
……って、ヴィクトール先生の言い方だと、まさか一般知識がダメだったって事なの?
あれこそ、完璧に解答出来たのに。
「あー……察したみたいだね。その通りで、ソフィアは一般知識の点数がかなり低くてね」
「何故ですか!? 完璧な解答だと思うのですが」
「納得いかないって顔だね。じゃあ、試験に出て来た問題を、かなり簡単にした問題をいくつか出題しよう。……お使いで、一つ銀貨三枚の食料を五個買いに行くと、銀貨何枚支払う?」
え? こんなの一般知識どころか、就学前の幼児でも分かる問題じゃない。
「馬鹿にしないで下さい! こんなの答えはゼロに決まっています!」
「……計算式は?」
「街の皆さんが教会へ寄付してくださるので、ゼロ枚の物を何個買おうとゼロ枚です」
「…………分かった。幾つか確認しようと思ったけど、今ので十分だ」
「何がですか?」
「ソフィアが、魔法理論も魔法実技も満点なのに、一般知識が一番下のFクラス並の点数だった理由だよ」
え? 一番下のクラスの点数? 私が? 何故!?
「どうしてですかっ!?」
「おそらく、ソフィアは幼い頃から教会に居たんだろうね。なんて言うか、ちょっと普通の生徒とは考え方にズレがあるかもしれないね。だけど魔法に関しては、このSクラスの中……いや、魔法学校の教師を含めてトップクラスだ。ソフィアの考え方が、教会の常識から脱したら、(仮)が外れるよ」
「ど、どういう意味か分からないのですが」
「大丈夫。僕がついているからね。素晴らしい魔法の才能を持つソフィアを、僕が脱教会へ導く。それが担任である僕の役目だ」
ヴィクトール先生が熱く語っているけど、私は別にズレてなんていないんだからっ!
余計なお世話よっ!
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