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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する
第3話 沈黙魔法
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「うん。だいたい分かった」
急遽受験する事にした魔法学校について、宿のロビーに置いてあった本を読み、概ね理解した。
「あら、凄いじゃない。さっき受けるって決めたばかりなのに、その本がスラスラ読めるのかい?」
「えぇ。国内最大のアストリア魔法学校は、入学試験及び半年に一度の試験で成績順にクラスが入れ替わる。尚、一番上のAクラスの中の更に成績優秀者は、Sクラス生と呼ばれ、授業料が免除となる」
「……って、それ魔法学校のパンフレットじゃない! 参考書を読んでいたんじゃなかったの!?」
「いえ、先ずは入学する学校の事を知らないと……と思いまして」
「え……ま、まぁそうね。が、頑張ってね」
宿の人が引きつった笑みと共に、どこかへ行ってしまったけれど、この魔法学校は当たりではないだろうか。
家から通う事が出来ない遠方から来る生徒は、学校敷地内の寮に住む事が出来るらしく、朝夜の食事とお昼のお弁当まで付くらしい。
しかも、Sクラス生になれば、授業料だけでなく寮の利用料まで無料になるとか。
授業は一年生で魔法全般の事を学び、二年生では専門とする魔法を決めて、その勉強に専念。三年生は、就職に向けた実践的な魔法を訓練するのだとか。
一先ず、入学してSクラスになれば、三年間は暮らしていけるから、その間に何をして生きていくか決めれば良いだろう。
「よし! そうと決まれば、Sクラス入学のための勉強ね。この参考書を読めば良いのね」
今度こそ、ちゃんと参考書を手に取り、読み始め……気付けば朝になっていた。
「あら? ちょ、ちょっと貴女! まさか、ここでずっと参考書を読んでいたの!?」
「はい。ダメでしたか?」
「ダメでしたか……って、試験前はちゃんと睡眠を取らないと! とはいえ、今更仕方ないわね。一先ず、お腹いっぱい食べちゃうと眠くなっちゃうだろうから、軽めに少しだけ食べて行きなさいよ。食堂はあっちだから」
「ありがとうございます」
言われるがままに軽めの朝食を食べ終えると、
「はい、これ。筆記用具とかサービスで用意しておいてあげたから。頑張ってね! この道を真っすぐ行けば魔法学校だから」
ペンとインクをプレゼントしてくれて、道を教えてくれた。
……流石に少し眠いので、
「リフレッシュ」
悪い状態を解除する神聖魔法で眠気を吹き飛ばす。
それから続けざまに、
「クリーン」
昨日お風呂へ入っていないし、服も洗濯出来なかったので、身体と服を纏めて綺麗にしておく。
心も身体も綺麗になった所で、大きな建物が見えて来た。
おそらく、これが魔法学校なのだろう。
「おはようございます。受験生の方は、こちらの列にお並びください」
沢山の受験者が居るので、大人しく列に並んでいると、
「おい。この俺様を待たせるつもりなのか?」
執事やメイドさんを連れた、如何にも貴族! といった感じの男が騒ぎだす。
「げっ! あれ、ロレーヌ公爵のバカ息子だろ? アイツも受けるのかよ」
「あれだろ? いつも平民を見下して偉そうにしてる嫌な奴。生まれた家が良かっただけで、アイツは何にも偉く無いっての」
私の近くに並んでいた二人がコソコソと話していると、
「おいっ! 何をしているんだ!? 他の者など放っておいて、俺様を先にしないかっ!」
その内容を肯定するかのように、喚きだした。
見れば、周囲の執事やメイドさんたちも困っているようだ。
そうこうしている内に、列を無視してズカズカと前に来て、
「早くしろと言っているんだ、このグズがっ! 俺様が誰だか知らないのか!?」
「……サイレンス」
「……! ……!?」
うるさいので言葉を発せなくなる魔法を掛けておいた。
まったく……バティスト王子といい、この貴族といい、どうして自分勝手な行動しか出来ないのかしら。
急遽受験する事にした魔法学校について、宿のロビーに置いてあった本を読み、概ね理解した。
「あら、凄いじゃない。さっき受けるって決めたばかりなのに、その本がスラスラ読めるのかい?」
「えぇ。国内最大のアストリア魔法学校は、入学試験及び半年に一度の試験で成績順にクラスが入れ替わる。尚、一番上のAクラスの中の更に成績優秀者は、Sクラス生と呼ばれ、授業料が免除となる」
「……って、それ魔法学校のパンフレットじゃない! 参考書を読んでいたんじゃなかったの!?」
「いえ、先ずは入学する学校の事を知らないと……と思いまして」
「え……ま、まぁそうね。が、頑張ってね」
宿の人が引きつった笑みと共に、どこかへ行ってしまったけれど、この魔法学校は当たりではないだろうか。
家から通う事が出来ない遠方から来る生徒は、学校敷地内の寮に住む事が出来るらしく、朝夜の食事とお昼のお弁当まで付くらしい。
しかも、Sクラス生になれば、授業料だけでなく寮の利用料まで無料になるとか。
授業は一年生で魔法全般の事を学び、二年生では専門とする魔法を決めて、その勉強に専念。三年生は、就職に向けた実践的な魔法を訓練するのだとか。
一先ず、入学してSクラスになれば、三年間は暮らしていけるから、その間に何をして生きていくか決めれば良いだろう。
「よし! そうと決まれば、Sクラス入学のための勉強ね。この参考書を読めば良いのね」
今度こそ、ちゃんと参考書を手に取り、読み始め……気付けば朝になっていた。
「あら? ちょ、ちょっと貴女! まさか、ここでずっと参考書を読んでいたの!?」
「はい。ダメでしたか?」
「ダメでしたか……って、試験前はちゃんと睡眠を取らないと! とはいえ、今更仕方ないわね。一先ず、お腹いっぱい食べちゃうと眠くなっちゃうだろうから、軽めに少しだけ食べて行きなさいよ。食堂はあっちだから」
「ありがとうございます」
言われるがままに軽めの朝食を食べ終えると、
「はい、これ。筆記用具とかサービスで用意しておいてあげたから。頑張ってね! この道を真っすぐ行けば魔法学校だから」
ペンとインクをプレゼントしてくれて、道を教えてくれた。
……流石に少し眠いので、
「リフレッシュ」
悪い状態を解除する神聖魔法で眠気を吹き飛ばす。
それから続けざまに、
「クリーン」
昨日お風呂へ入っていないし、服も洗濯出来なかったので、身体と服を纏めて綺麗にしておく。
心も身体も綺麗になった所で、大きな建物が見えて来た。
おそらく、これが魔法学校なのだろう。
「おはようございます。受験生の方は、こちらの列にお並びください」
沢山の受験者が居るので、大人しく列に並んでいると、
「おい。この俺様を待たせるつもりなのか?」
執事やメイドさんを連れた、如何にも貴族! といった感じの男が騒ぎだす。
「げっ! あれ、ロレーヌ公爵のバカ息子だろ? アイツも受けるのかよ」
「あれだろ? いつも平民を見下して偉そうにしてる嫌な奴。生まれた家が良かっただけで、アイツは何にも偉く無いっての」
私の近くに並んでいた二人がコソコソと話していると、
「おいっ! 何をしているんだ!? 他の者など放っておいて、俺様を先にしないかっ!」
その内容を肯定するかのように、喚きだした。
見れば、周囲の執事やメイドさんたちも困っているようだ。
そうこうしている内に、列を無視してズカズカと前に来て、
「早くしろと言っているんだ、このグズがっ! 俺様が誰だか知らないのか!?」
「……サイレンス」
「……! ……!?」
うるさいので言葉を発せなくなる魔法を掛けておいた。
まったく……バティスト王子といい、この貴族といい、どうして自分勝手な行動しか出来ないのかしら。
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