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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する
第2話 普通の少女になる元聖女
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「どうしてソフィア様が出て行かなければならいのでしょうか。シャルロットが出ていけば良いと思います」
「ソフィア様が居られないと、聖女の祈祷や病人の治癒という、教会のお仕事に支障が出てしまいます」
これでも聖女と呼ばれる立場に居たので、シャルロットを除く侍祭たち全員が不安を口にしながら、教会を出て行こうとする私を見送る。
「大丈夫です。今は未だシャルロットも未熟かもしれませんが、きっと立派な聖女になってくれるでしょう」
侍祭たちを宥めながら、小さな鞄と数枚の金貨を手に、長年過ごした教会から外へ。
五歳の時に教会へ入り、十年間ここで過ごす事になったのだけど、お使いなどは必ず複数人で行っていたので、一人で外へ出るのは初めてだ。
暫くは真っすぐ道なりに進み、ふと振り返る。
すると、いつしか視界に教会が映らなくなっていた。
いきなり姿を消してしまうと風情がないと思っていたけど、もう良いでしょ。
「よしっ! これで私は完全に自由よっ! 先ずはこの窮屈な修道服を着替えないとね……テレポート!」
私が得意とする、神の力を借りて奇跡を起こす神聖魔法は、主に怪我を治したり、呪いを解いたりと、聖女として必須の魔法だ。
その中の一つであるテレポートは、私自身が行った事のある場所へ瞬時に移動出来るので、早速近くの街へ。
今までは前を通る度に羨望の眼差しを向けるだけで、一切入る事がなかった服屋さんに入り、私に似合う綺麗な服を見立ててもらった。
流石に仕立ててもらうと時間がかかり過ぎるので既製品の服を購入したけど、黒くて地味な修道服に比べれば、どの服も素敵だ。
試着室で店内で買った服に着替えると、
「ストレージ」
別名を神様の鞄とも呼ぶ神聖魔法により、どこか不思議な空間へ修道服を仕舞う。
もちろん好きに取り出し可能なこの魔法のおかげで、荷物を殆ど持たずに教会を出る事が出来ている。
凄く便利なんだけど、どういう訳か教会の皆は、あまり使わないのよね。
テレポートを使う人も殆ど居なくて、お使いもわざわざ歩いて行っていた。
あ……皆でお喋りしながら歩くのが好きだったのかな?
「お、おい……あの娘、めちゃくちゃ綺麗じゃないか!?」
「そうだな。金色の髪が光り輝いているみたいに見える」
次はどこへ行こうかと考えながら、街をプラプラと歩いていると、聖女として向けられていた視線とは少し違う、熱っぽい視線が通行人から向けられた。
……そっか。修道服を着ていた時は、聖女に見られていたけど、今は普通の少女として見られている訳か。
私は十三歳で聖女に選ばれて、それ以降あのバカ王子と婚約していたから……そうね。本でしか読んだ事がないけれど、せっかくなので、恋愛というのを体験してみるのも良いかもしれない。
しかし、恋愛というのは、どこに行けば出来るのだろうか。
そんな事を考えながら歩いていると、
「そこのお嬢さん。随分と悩んでいるみたいだけど、そんな状態で明日の試験は大丈夫かい? うちの宿は長年受験者を泊めてきて、そこから合格者も沢山出ているからね。どうだい? うちに泊まっていかないかい?」
突然年上の女性から声を掛けられた。
「……受験対策サービス?」
「そうだよ。見た所、十五歳くらいだろ? 明日行われる魔法学校の入学試験の受験生じゃないのかい?」
魔法学校? ……そっか、学校か!
なるほど。学校というのは良いかもしれない。
一度も行った事はないけれど、侍祭の中には通っていたという子も居て、話を聞いて心をときめかせた事もあったっけ。
まぁ聖女になってから、そんな気持ちはすっかり忘れてしまっていたけど。
「すみません。私は魔法学校の受験生ではないのですが、今から受ける事って出来るんですか?」
「受けるのは誰でも出来るよ。明日の朝に、入学審査料の金貨一枚を持って魔法学校へ行くだけだからね。基礎的な一般知識と魔法知識。それから、簡単な魔法の実技試験だよ」
なるほど。
魔法は何の魔法でも良いのだろうか。
神聖魔法に限定すれば、それなりに知っているし、実技も問題ないのだけれど。
「じゃあ、一泊お願いします」
「お、泊まるって事は、受験するのかい? ……そうだ。前に、うちへ泊まって合格した人たちが置いて行った参考書とかがあるから、読んでみると良いんじゃないかい? そこの本棚にあるから自由に使ってもらって構わないよ」
教会を追い出され、特に行くあても無かったけれど、一先ず魔法学校の入学試験を受けてみる事にした。
「ソフィア様が居られないと、聖女の祈祷や病人の治癒という、教会のお仕事に支障が出てしまいます」
これでも聖女と呼ばれる立場に居たので、シャルロットを除く侍祭たち全員が不安を口にしながら、教会を出て行こうとする私を見送る。
「大丈夫です。今は未だシャルロットも未熟かもしれませんが、きっと立派な聖女になってくれるでしょう」
侍祭たちを宥めながら、小さな鞄と数枚の金貨を手に、長年過ごした教会から外へ。
五歳の時に教会へ入り、十年間ここで過ごす事になったのだけど、お使いなどは必ず複数人で行っていたので、一人で外へ出るのは初めてだ。
暫くは真っすぐ道なりに進み、ふと振り返る。
すると、いつしか視界に教会が映らなくなっていた。
いきなり姿を消してしまうと風情がないと思っていたけど、もう良いでしょ。
「よしっ! これで私は完全に自由よっ! 先ずはこの窮屈な修道服を着替えないとね……テレポート!」
私が得意とする、神の力を借りて奇跡を起こす神聖魔法は、主に怪我を治したり、呪いを解いたりと、聖女として必須の魔法だ。
その中の一つであるテレポートは、私自身が行った事のある場所へ瞬時に移動出来るので、早速近くの街へ。
今までは前を通る度に羨望の眼差しを向けるだけで、一切入る事がなかった服屋さんに入り、私に似合う綺麗な服を見立ててもらった。
流石に仕立ててもらうと時間がかかり過ぎるので既製品の服を購入したけど、黒くて地味な修道服に比べれば、どの服も素敵だ。
試着室で店内で買った服に着替えると、
「ストレージ」
別名を神様の鞄とも呼ぶ神聖魔法により、どこか不思議な空間へ修道服を仕舞う。
もちろん好きに取り出し可能なこの魔法のおかげで、荷物を殆ど持たずに教会を出る事が出来ている。
凄く便利なんだけど、どういう訳か教会の皆は、あまり使わないのよね。
テレポートを使う人も殆ど居なくて、お使いもわざわざ歩いて行っていた。
あ……皆でお喋りしながら歩くのが好きだったのかな?
「お、おい……あの娘、めちゃくちゃ綺麗じゃないか!?」
「そうだな。金色の髪が光り輝いているみたいに見える」
次はどこへ行こうかと考えながら、街をプラプラと歩いていると、聖女として向けられていた視線とは少し違う、熱っぽい視線が通行人から向けられた。
……そっか。修道服を着ていた時は、聖女に見られていたけど、今は普通の少女として見られている訳か。
私は十三歳で聖女に選ばれて、それ以降あのバカ王子と婚約していたから……そうね。本でしか読んだ事がないけれど、せっかくなので、恋愛というのを体験してみるのも良いかもしれない。
しかし、恋愛というのは、どこに行けば出来るのだろうか。
そんな事を考えながら歩いていると、
「そこのお嬢さん。随分と悩んでいるみたいだけど、そんな状態で明日の試験は大丈夫かい? うちの宿は長年受験者を泊めてきて、そこから合格者も沢山出ているからね。どうだい? うちに泊まっていかないかい?」
突然年上の女性から声を掛けられた。
「……受験対策サービス?」
「そうだよ。見た所、十五歳くらいだろ? 明日行われる魔法学校の入学試験の受験生じゃないのかい?」
魔法学校? ……そっか、学校か!
なるほど。学校というのは良いかもしれない。
一度も行った事はないけれど、侍祭の中には通っていたという子も居て、話を聞いて心をときめかせた事もあったっけ。
まぁ聖女になってから、そんな気持ちはすっかり忘れてしまっていたけど。
「すみません。私は魔法学校の受験生ではないのですが、今から受ける事って出来るんですか?」
「受けるのは誰でも出来るよ。明日の朝に、入学審査料の金貨一枚を持って魔法学校へ行くだけだからね。基礎的な一般知識と魔法知識。それから、簡単な魔法の実技試験だよ」
なるほど。
魔法は何の魔法でも良いのだろうか。
神聖魔法に限定すれば、それなりに知っているし、実技も問題ないのだけれど。
「じゃあ、一泊お願いします」
「お、泊まるって事は、受験するのかい? ……そうだ。前に、うちへ泊まって合格した人たちが置いて行った参考書とかがあるから、読んでみると良いんじゃないかい? そこの本棚にあるから自由に使ってもらって構わないよ」
教会を追い出され、特に行くあても無かったけれど、一先ず魔法学校の入学試験を受けてみる事にした。
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