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第40話 封印のクリスタル

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 街を駆け抜け、王宮の門の前へ来ると、兵士たちが何事も無かったかのように門の前で立っていた。
 中で何が起こっているのか気付いていないのか、気付いているからこそ、中に街の人を入れないようにしているのか。どちらかは分からないが、いずれにせよこいつらに時間を取られている場合ではない。
 なので、走ってきた勢いそのままに、大きく跳躍し、門を飛び越えると、そのまま中へ。
 いつもの謁見の間? みたいな所に向かって走っていると、

「くっ! 我らの結界をことごとく無視しおって!」
「エスパナは魔法の後進国のくせに、何故我らの攻撃を避けられたのだ!?」
「今一度、今度は皆で一斉に攻撃魔法を……」

 途中で変な声が聞こえてきたけど、構っている暇は無いので、そのまま奥へ。
 目的の場所まであと少しという所で、

「エスパナの者がか。ここを通りたければ、我らポーツグスの精鋭魔法隊の……ぐほぁっ!」

 立ち塞がっている奴らが居たので、とりあえず蹴っておいた。
 数人の男たちを蹴り倒し、謁見の間へ入ると、十数人の人が半透明の石の中で固まっている。

「あぁ、お前が居たか。だが残念だったな、料理人。見ての通り、この国の要人は、全員水晶の棺の中……ぐぅっ! 何だ、この力は!?」
「モレノ! 姉さんの力を返してもらうっ!」
「姉さんの力とは……まさか、お前はクララの弟なのか!?」
「お前は何を言っているんだ? 寝言は寝て言えっ!」
「がっ……ちっ! 料理の腕といい、俺の魔力壁を超えて来る力といい、惜しいな。だが、ここまでだ……おごぉっ! ……お、おい。こういう時は空気を読め! 相手の話を聞け! 後悔するのはお前だからなっ!?」

 前回はモレノを殴ろうとしても、見えない変な壁みたいなのに阻まれてしまったので、今回は助走からの飛び膝蹴りを放ち、かなり威力は削がれてしまったものの、ダメージを与える言葉が出来た。
 なので、関節技をキメ……何か言っているな。

「よ、よく聞け。見ての通り、この水晶……待て! 本当に待て!」
「何が言いたいか知らないが、姉さんの力が先だ」
「いや、お前の言う姉、クララが水晶に……」
「だから、クララは姉では無いと言って居るだろっ!」
「おい、止め……折れるっ! 本当に折れるぅぅぅっ!」

 ……ん? 今、クララが水晶にどうこうって言ったな?
 我に返って見てみると、クララが半透明の石の中に閉じ込められていた。

「モレノ! 姉さんだけでなく、クララまで!」
「だから、最初からそう言っているだろ! それと、もしもお前が俺に一定以上のダメージを与えたら、あの石に閉じ込められた者たちの魔力を使って……」
「ふざけるなっ! 姉さんの力とクララを返せっ!」
「ぐはっ! おま……殴りやがったな!? ふはは、忠告してやったのにな。これで条件は揃った! 俺に攻撃してきた愚かなお前に、裁きの雷が……おい! 俺を盾にするな! この腕を離せ……ぎゃぁぁぁっ!」

 モレノがどういう魔法を使ったのかは分からないが、人の入った石が一つずつ光り、その度に俺へ……というかモレノへ光が突き刺さる。
 とりあえず、クララを石から出してあげなければと、モレノの関節をキメたままクララの石に近付くと、

「ふっ……何をする気かは知らないが、それは水晶――クリスタルを用いた封印だ。硬さと魔力増幅効果を持っているから、お前がどうこう出来る代物では……はぁぁぁっ!?」
「お、何だ。案外簡単に割れるな。クララ、大丈夫か?」

 手刀を放って水晶を割り、中のクララを助け出す。

「あ、アルフレッド様! ありがとうございます!」
「大丈夫そうで何よりだ。フレイアとソフィアは?」
「二人は……あちらですね。どうか助けてくださいませんか?」
「任せておけ」

 クララの指し示す先――部屋の隅を見てみると、二人揃って水晶に閉じ込められていたので、クララと同じ様に助け出す。

「アルフレッド! すまない。助かった」
「アルフレッドさーんっ! 絶対に来てくれるって信じてましたぁぁぁっ!」

 フレイアとソフィアが泣きそうになりながら喜んでいるが、次は姉さんの力を返してもらわないとな。

「……あ、そうか。さっきの水晶みたいに割れば、姉さんの力が戻ってくるかも」
「お、おい! 止めろっ! 姉さんの力とは何の事だっ!? 返す……何でも返すから、その水晶を割る程の力を俺に向けないでくれっ!」

 まだ何もしていないのだが、モレノが一人で怯えだし、姉さんの力を返すと言い出した。
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