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第38話 国境へ

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 ラスカフリャの村からは、貸切馬車で王宮まで戻ってきたのだが、

「お帰りなさいませ、クララ様、フレイア様。……おい、そこのお前たち二人は止まれ! どさくさに紛れて忍び込もうとするな! 投獄するぞ!」

 前回同様に俺とソフィアは止められてしまった。

「この二人は私の友人です。通してください!」
「しかし、クララ様……ま、待て! この男、魔物を連れているぞっ!」
「魔物ではありません。見えませんか? 白いお身体が。そちらの男性の肩に乗っているのは、聖獣様です。それより通しなさい! 一刻を争う事態なのです!」

 結局クララが一喝し、中へ入ると、そのまま王族たちの居る謁見の間? みたいな場所へ。
 中央の玉座に、威厳のある中年男性が座り、その隣には王女様だろうか。
 その二人を挟むようにして、沢山の人が立っていた。

「国王陛下。モレノ様が……この国を裏切られました」
「な……どういう事だ!?」
「私の護衛という事で、聖獣様の所へ共に行ったモレノ様が不思議な魔法を使い、聖獣様をこのようなお姿に」
「し、白い子虎……ほ、本当にこの虎が聖獣様なのか?」

 クララから国王陛下と呼ばれた男が、半信半疑の目を向けてくると、

「久しいな、レオよ。しかし、もう忘れてしまったのか? 聖女だけではなく、この国の王となった者には、我との会話する力を与えてやっているというのに」
「え……その声は、まさか本当に聖獣様なのですか!?」
「無論だ。あと、その少女が言っている事は真実だ。してやられたわ」
「な、何という……お、おい! 誰かモレノを探して来い! あと、レスターもだ!」

 周囲の人間が、大慌てで部屋から出て行き、少しすると何人かが戻って来る。

「モレノ様の姿が何処にもありません!」
「も、モレノ様の姉上……レスター様の奥様も居られません!」
「第二王子レスター様、参られました」

 多くの人が入り乱れて慌ただしい部屋に、一人の男がやって来て、時間が止まったかのように静かになった。

「父上。お呼びでしょうか」
「うむ。モレノが我が国を裏切った」
「はっはっは、何をバカな事を。今も聖女と共に聖獣様の所へ行って居るハズですが」
「お前の目は節穴か? すぐそこに聖女が居るでは無いか。それで、お前の妻はどうして居る?」
「え? つ、妻は昨日、自国へ一時帰国したいと言ったので、許可しておりますが……ま、まさか、そんなっ!」

 なるほど。モレノの姉も昨日から帰国……間違いなく、この国を攻めようとしているのだろう。

「分かった。時間が勿体無い。俺はモレノが居る国との国境へ行って来る」

 第二王子の、誰だこいつは……という言葉を完全に無視して、早速出発しようとすると、クララが話し掛けてくる。

「アルフレッド様!? でしたら、私も……」
「いや、お主はここに居るべきじゃろうて。アル一人の方が移動は速い。それに、お主であれば離れた我に話し掛けられるであろう」
「え? しかし私は……」
「む? お主にはその力があるであろう。我にはお主の持つ我の力が見えているのだが」
「ほ、本当ですか!? か、畏まりました。では、何かありましたら、聖獣様へご報告させていただきます」

 クララと姉さんの話もまとまったので、

「フレイア。そのポーツグスっていう国はどっちなんだ?」
「え? 王宮から真っ直ぐ西に行けばあるが……」
「分かった。じゃあ行ってくる」

 早速部屋を飛び出し、姉さんと共に国境を目指す。
 人前で白虎の力を使うなと言われてはいるけど、緊急事態という事で、王宮を出て街中を駆け抜け、街道を駆け抜ける。
 暫く走っていると、南北に長く伸びる壁が見えてきた。
 街道に門のような物があり、すぐ隣に小屋があるので、ここが国境で間違いなさそうだ。

「とりあえず、この辺りを見渡せる場所を探そうか」
「そうだな。敵が街道を通って来るとは限らぬしな」

 周囲を見渡し、背の高い木があったので、姉さんと共にそこへ登ると西側を見渡し……一先ず、今のところは何も居ないようだ。
 暫く、木の上で国境周辺を見張る事にした。
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