42 / 48
第36話 モレノの魔法
しおりを挟む
「姉さんっ!? モレノっ! 一体何を……」
「はっはっは。エスパナは、聖獣の力に頼るだけの国。この聖獣の力さえ封じれば、ただの弱小国よ。後は私自ら軍を率いて潰してくれ……ぐはっ!」
白い霧を生み出したモレノが、調子に乗って長々と話し始めたので、一発殴ってやったけど……何か弾力のある物に阻まれ、拳が振り抜けなかった。
「くっ……我が魔法壁を突破してくるとは。貴様、ただの料理人ではないな!?」
「元より料理人ではなくて冒険者だけどな。それよりお前は何者なんだっ!」
「こいつらから聞いていないのか? まぁいい。俺の目的は達した。さらばだ……テレポート」
そう言うと、モレノの姿が一瞬で消える。
何処へ行ったのかは分からないが、名前からして瞬間移動の類だろう。
まさか、そんな魔法が存在して、モレノがそれを使えるとは。
……そうか。あの大きな熊を倒す時も、昨日結界を張った時も、俺たちを油断させる為に、わざと力を抑えていたんだ。
「逃げられた……いや、それより姉さん!」
白い霧に飛び込んだが、そこに姉さんの……大きな白虎の姿は無い。
何も見つけられないまま、白い霧から飛び出すと、思わずその場に崩れ落ちる。
「そんな。姉さんが消えてしまうなんて……」
「アルフレッド様! お待ち下さい! 何か……います」
「えっ!?」
クララの声で起き上がると、徐々に消えていく霧を見つめ……先程まで姉さんが居た場所に、小さな白い虎が居た。
「えっと、姉さん?」
「あぁ、そうだ。あやつめ……まさか我の力を封じる魔法が使えるとはな」
「ごめんなさい! 俺があんな奴を連れて来たばっかりに……」
「いや、そう言うでない。アルがあやつを殴って、魔法の効果を途中で止めてくれたおかげで、まだ僅かだが力は残っておる。それに、奴は封印と言っておった。あくまで封じられただけで、失った訳ではなさそうだからな」
姉さん曰く、身体の中に力があるのは感じられるらしい。
ただ、それを行使出来ないそうだが。
「それにだ。我が弟アルが居るではないか。姉の力を取り戻す為に協力してくれるだろう?」
「勿論だ」
「ふふふ……あやつに、アルの力を見せつけてやるのだ」
そう言うと、小さな子虎姿の姉さんが俺の肩に飛び乗ってくる。
「む……何故か姿が小さくなり、視界が低くなってしまったが、こうしてアルに密着出来るのは、悪くないな」
「ね、姉さん!? こんな時に何を言っているのさ」
子虎姿の姉さんが、俺の顔にスリスリと顔をくっつけてくると、
「そ、そうですよ! そういう事は、これから私がしますから……」
「いやいや、フレイアさんは鎧がぶつかって、アルフレッドさんが痛そうなので私がします」
「あの、今回アルフレッド様と共に聖獣様の所へ来たのは、元を辿れば私が原因です。ですから、ここは私が……」
再び三人が謎の言い合いを始める。
とりあえず、それどころではないし、訳がわからないのでスルーして、
「ところでクララ。モレノの事なんだが……」
「は、はい! アルフレッド様がお望みでしたら、私を……え!? モレノ様の話ですか?」
クララが慌てていて、触れて欲しくない話題だという事はわかるが、ここはハッキリさせておかなくては。
「あぁ。奴は王族なんだろ? それなのに、どうしてこの国に居てくれている姉さんを……聖獣を弱らせるような事をするんだ?」
「すみません。流石にそこまではわからないです」
「……あ! そういえば、国がどうとかって言っていたけど、その辺りで何か無いか?」
「モレノ様は第二王子の奥様の弟君に当たります。奥様もモレノ様も、元は隣の国ポーツグスの出身で……あれ? まさか……」
「可能性はあるよな。モレノの姉の指示なのか、本人の独断なのかまでは分からないが」
おそらくモレノは……もしくはモレノの姉は、祖国であるポーツグスとこの国で戦争を引き起こすつもりなのだろう。
その為に、この国を守る聖獣……姉さんの力を封じる為、俺たちに同行したのか。
攻めてくるとしたら王宮だろうけど、そのポーツグスっていう国との国境に注意だな。
「はっはっは。エスパナは、聖獣の力に頼るだけの国。この聖獣の力さえ封じれば、ただの弱小国よ。後は私自ら軍を率いて潰してくれ……ぐはっ!」
白い霧を生み出したモレノが、調子に乗って長々と話し始めたので、一発殴ってやったけど……何か弾力のある物に阻まれ、拳が振り抜けなかった。
「くっ……我が魔法壁を突破してくるとは。貴様、ただの料理人ではないな!?」
「元より料理人ではなくて冒険者だけどな。それよりお前は何者なんだっ!」
「こいつらから聞いていないのか? まぁいい。俺の目的は達した。さらばだ……テレポート」
そう言うと、モレノの姿が一瞬で消える。
何処へ行ったのかは分からないが、名前からして瞬間移動の類だろう。
まさか、そんな魔法が存在して、モレノがそれを使えるとは。
……そうか。あの大きな熊を倒す時も、昨日結界を張った時も、俺たちを油断させる為に、わざと力を抑えていたんだ。
「逃げられた……いや、それより姉さん!」
白い霧に飛び込んだが、そこに姉さんの……大きな白虎の姿は無い。
何も見つけられないまま、白い霧から飛び出すと、思わずその場に崩れ落ちる。
「そんな。姉さんが消えてしまうなんて……」
「アルフレッド様! お待ち下さい! 何か……います」
「えっ!?」
クララの声で起き上がると、徐々に消えていく霧を見つめ……先程まで姉さんが居た場所に、小さな白い虎が居た。
「えっと、姉さん?」
「あぁ、そうだ。あやつめ……まさか我の力を封じる魔法が使えるとはな」
「ごめんなさい! 俺があんな奴を連れて来たばっかりに……」
「いや、そう言うでない。アルがあやつを殴って、魔法の効果を途中で止めてくれたおかげで、まだ僅かだが力は残っておる。それに、奴は封印と言っておった。あくまで封じられただけで、失った訳ではなさそうだからな」
姉さん曰く、身体の中に力があるのは感じられるらしい。
ただ、それを行使出来ないそうだが。
「それにだ。我が弟アルが居るではないか。姉の力を取り戻す為に協力してくれるだろう?」
「勿論だ」
「ふふふ……あやつに、アルの力を見せつけてやるのだ」
そう言うと、小さな子虎姿の姉さんが俺の肩に飛び乗ってくる。
「む……何故か姿が小さくなり、視界が低くなってしまったが、こうしてアルに密着出来るのは、悪くないな」
「ね、姉さん!? こんな時に何を言っているのさ」
子虎姿の姉さんが、俺の顔にスリスリと顔をくっつけてくると、
「そ、そうですよ! そういう事は、これから私がしますから……」
「いやいや、フレイアさんは鎧がぶつかって、アルフレッドさんが痛そうなので私がします」
「あの、今回アルフレッド様と共に聖獣様の所へ来たのは、元を辿れば私が原因です。ですから、ここは私が……」
再び三人が謎の言い合いを始める。
とりあえず、それどころではないし、訳がわからないのでスルーして、
「ところでクララ。モレノの事なんだが……」
「は、はい! アルフレッド様がお望みでしたら、私を……え!? モレノ様の話ですか?」
クララが慌てていて、触れて欲しくない話題だという事はわかるが、ここはハッキリさせておかなくては。
「あぁ。奴は王族なんだろ? それなのに、どうしてこの国に居てくれている姉さんを……聖獣を弱らせるような事をするんだ?」
「すみません。流石にそこまではわからないです」
「……あ! そういえば、国がどうとかって言っていたけど、その辺りで何か無いか?」
「モレノ様は第二王子の奥様の弟君に当たります。奥様もモレノ様も、元は隣の国ポーツグスの出身で……あれ? まさか……」
「可能性はあるよな。モレノの姉の指示なのか、本人の独断なのかまでは分からないが」
おそらくモレノは……もしくはモレノの姉は、祖国であるポーツグスとこの国で戦争を引き起こすつもりなのだろう。
その為に、この国を守る聖獣……姉さんの力を封じる為、俺たちに同行したのか。
攻めてくるとしたら王宮だろうけど、そのポーツグスっていう国との国境に注意だな。
応援ありがとうございます!
15
お気に入りに追加
2,082
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる