料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

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第35話 久々の再会

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「はっ!」

――GUOOOOO

 手強い熊の魔物を久しぶりに見つけ、白虎の力を全開にして突撃する。
 だが、後ろにクララたちが居るので、防御重視で熊の攻撃を避けるのではなく、防ぐようにして戦っていると、

「な、何だあの熊の大きさはっ!? というか、熊なのか!?」
「アルフレッドさんは、どうしてあの熊の腕を止められるんですかっ!?」
「アルフレッド様……どうか御無事で」

 背後から女性三人の言葉が聞こえてくるのだが……出来れば逃げて欲しいんだけど。
 そうすればもう少し楽に戦えて、結果的に三人が安全になる。
 そう思っていると、

「ふっ……お前はそいつを引き付けていろ。私が倒してやろう。クララ殿は私の後ろへ」

 モレノが何かしようとしているらしい。
 俺も巻き込まれないようにしないといけないが、何をするのかが少しも分からないんだが。
 とりあえず、気にはしつつも熊との戦いに集中し、着実にダメージを与えていると、

「……雷神」

 モレノの言葉の直後、熊の頭上に光が落ちてきた。
 轟音と共に、熊の動きが一瞬止まったものの……効いてないな。
 だが、この一瞬の隙で十分!

「はぁっ!」

 全力の右ストレートで吹き飛ばし……動かなくなった。

「はっはっは。あの程度の魔物如き、私の魔法で一撃だ。足止め、ご苦労。さぁ進もうではないか」

 いやあの、モレノの魔法は全然効いてなかったんだけど……まぁ倒すきっかけになったのは事実だからまぁいいか。

「……モレノ卿の魔法は頭上から落ちて来た雷だったが、あの魔物は横に吹き飛んだのだが」
「……倒したのはアルフレッドさんじゃないでしょうか?」
「……アルフレッド様が御無事で良かったです」

 後ろでまた女性陣が何か言っているけど……っと、姉さんの棲家が見えてきたな。
 あと少しで姉さんが住んで居た場所だと思っていると、

「おぉ、アルではないか。会いたかったぞ! ……ではなくて、久しぶりだが、どうしたのだ?」
「姉さん! ただいま! ちょっと用事があって帰って来たんだ」

 巨大な白い虎――モフモフ姿の姉さんが居た。

「聖獣様! 聖女の力を使わず本当に辿り着いた……し、失礼致します。私はエスパナで聖獣様のお力をお借りする役目を継いだ、クララと申します」
「アル。可愛い少女ではないか。もしや、恋人なのか? 姉さんは嬉しいぞ。……いやまぁ若干悔しいというか、寂しいというか、覚悟はしていたのだが……」
「姉さん。久しぶりって言う程でもないし、俺の事は良いから、クララの話を聞いてくれないか?」

 姉さんは、いつも俺の前では人間の女性の姿だったのだが、クララたちが居るからか、今日は大きな白虎の姿のままのようだ。
 しかし……このモフモフで肉球付きの前足でポンポンされるのは悪く無いかもしれない。
 見た目は白い虎だけど、性格は猫みたいな感じだからな。

「……こほん。えーっと、そうそう。エスパナの聖女よ。わざわざ、我の元まで来たのはどういう用件だ? いつもはもう少し離れた……二つ向こうの山辺りから、授けた力を使って話し掛けて来ていたではないか
「はい。これまでは代々聖女に授けていただいております、聖獣様と会話する力を用いていたのですが、直接お願いしたい事がありまして、参らせていただきました」

 へぇー、姉さんは聖女に――クララやその前任者にも力を与えていたんだ。
 とはいえ、与えていたのは離れた場所から会話するっていう力だけらしいけど。

「ほう。それで、我が弟アルと共に、ここまで来た用件とは……まさか、アルを婿に欲しいという事か!? むぅ……姉としてはアルが選んだ相手であれば、承認せざるを得ないが……」
「せ、聖獣様。それはクララ様ではなく、私の……」
「違います。そのお話は私が……」

 って、フレイアもソフィアも、二人して姉さんのボケに付き合わなくて良いんだぞ?

「クララ。姉さんの話は置いといて、本題に行こう」
「え、えーっと、そうですね。実はエスパナの国に……」
「……封印っ!」

 クララが話し始めたところで、突然モレノが何かを言い放ち……姉さんの身体が白い霧に包み込まれてしまった。
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