料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

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第33話 魔物除けの結界魔法?

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「今日はこの辺りで野営にしようか」

 山を一つ越えた所で提案すると、

「アルフレッド。この辺りは少々魔物が強いようだ。もう少し魔物が弱い所で野営出来ないだろうか」
「え? 強いか? ……だが、今からだと山の中で野営するか、暗くなってからも移動する事になる。ここで野営の方が良いと思うんだが」

 フレイアが変な事を言ってくる。
 俺は平気だけど、皆は山の中より平地の方が良さそうな気がするんだが。

「その者の言う通りだ。ここまで戦いを見ていたが、大した魔物ではない。あの程度なら、俺が結界を張っておけば侵入して来られないだろう」

 おっ、初めてではないだろうか。モレノが俺の言葉に反応したのは。
 とりあえず、結界っていうのがどれ程のものかは知らないが、魔物を防げるのはありがたいな。
 一先ず、時折現れる魔物のを倒しつつ、野営の準備を進めていくと、

「……聖域結界」

 暫くして、モレノがかなり時間を掛けた、凄そうな魔法を使ってくれた。

「これで、この中に魔物が入ってくるどころか、近付いて来る事すらないだろう」
「それは助かる。フレイアが使うスキルのように、触れたら俺たちも怪我を負うタイプの結界なのだろうか?」
「本人の魔法防御力によるな。私の魔力より魔法防御力の低い者は聖なる火に焼かれて大火傷を負うだろうし、魔法防御力の高い者は何も受けないだろう」

 ……えーっと、要は触ると怪我するぞって事だよな?
 最初からそう言ってくれれば良いのに。
 とりあえず、必要な食材や水は村で買ってあり、馬に積んできているし、調味料の類はここへ来るまでの間になっていた物を採っておいたから……うん、大丈夫だな。
 モレノは強力な魔法を使ったからか、切り株に腰掛けて目を閉じ……少しすると、周囲に魔物の気配を感じた。
 ……って、思いっきり結界の中へ入って来ているんだが。

「――っ!? そんな、モレノ卿の結界を……」
「……よっ!」

 とりあえず入って来た魔物を殴り飛ばすと……あ、かなり遠くまで吹き飛んで動かなくなったな。
 しかし、あまり強力な魔物でもなかったのに易々と突破されたんだが、この結界は大丈夫なのか?

「……アルフレッドよ。モレノ卿は王族だからではなく、実力で宮廷魔道士になられた方なのだが、さっきの魔物は固有種――ユニークモンスターという魔物だろうか」
「え? いや、普通の狼だったけど?」
「……この辺りは魔物が強すぎるのではないだろうか」

 フレイアが頭を抱えているが、この辺りはまだ大した事がないんだけどな。
 とりあえず、モレにに結界をもう少し強度のある物に変えてもらおうかと思ったのだが、フレイアが小声で黙っていて欲しいと訴えてくる。
 んー……、これはモレノのプライドを傷付ける訳にはいかないという事だろうか。
 そのままクララに目を向けると、

「……」

 無言で頷かれる。
 つまり察してくれと言う事だろうか。

「アルフレッドさん。本当に面倒臭いですよね……」

 ソフィアは心底うんざりしているようだが、一番大変なのはフレイアとクララだろうから、黙っておく事にしよう。
 という訳で、食事を作りながら魔物の気配を感じたら、結界の中へ入って来る前に投石で倒し、近くにあった小川で手を洗って……って、結界から出たり入ったりしているけど、特に何も感じないな。

「……モレノ卿の結界は、大勢の兵士たちが入り乱れる戦場のど真ん中に安全地帯を作れる程の魔法なのだが、アルフレッドには関係なさそうだな」
「フレイアさん。アルフレッドさんは別枠だから、気にしちゃダメだと思います」
「アルフレッド様。やはり、貴方は救世主様だったのですね」

 モレノに聞こえないように、三人が小声で喋っているが、何だか無茶苦茶な事を言われていないか?
 別枠って、何の別枠なんだ、ソフィア?
 それにクララも、救世主って大袈裟すぎるだろ。
 一先ず、三人の話をスルーして、無事に料理が完成したので、皆に振舞うと、

「おぉ、やはりアルフレッドの作る料理は最高だな」
「これ、さっきの村で買っていた普通の野菜ですよね? どうしてこんなに美味しくなるんですか!?」
「――っ!? こ、これは!? ……フレイアもソフィアさんも、こんなに美味しい料理を食べて居たんですか!? ず、ズルいですっ!」

 女性陣が凄く喜び、特にクララは初めて食べたからか、物凄く驚いていた。
 ……ただ、塩コショウしか使っていないんだけどな。
 そして、

「な……何だと!? これは……そうか。お前は料理人として来ていたのか」

 モレノから盛大な勘違いをされてしまった。
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