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第32話 初めての乗馬

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「この村から先には人里は無いから、ここで水や食料を調達しておこう」

 と言ったものの、モレノは馬車から降りて来る様子が無く、クララも巻き込まれていそうなので、俺とフレイアとソフィアの三人で買い出しに。
 
「ここは私が出しておこう。あ、勿論経費として王宮に請求出来るから、気にせず必要な物を調達して欲しい」
「そういう事なら……って、調味料の類は扱っていないんだな」

 あれかな? 大昔のヨーロッパでも、コショウが金や銀みたいに高価だったみたいだし、そんな感じなのかな?
 まぁ代替品があるから無いなら無いで構わないけどさ。

「アルフレッド。ここからどれくらいで着くのだろうか」
「んー、俺一人なら半日あれば余裕なんだけど……モレノやクララが居ると、もっとかかるよな?」
「そうだな。往復分と念の為に五日分を調達しておこう」

 流石にそこまで遅くはないんじゃないか? とも思ったが、モレノは王族だというし、歩き慣れて居ない可能性もあるもんな。
 ちなみに調味料は無かったが、調理器具や食器類はあったので、一緒に買って貰った。
 鉄板代わりの石板だけだと、作れる料理が限られているからね。

「じゃあ、山に向かって行くけど……馬はともかく馬車は無理じゃないかな?」
「ふむ。私もクララ様も馬に乗れるが、ソフィアはどうだ?」
「えっ!? の、乗った事なんてないですよ!?」

 ソフィアが慌てているけど、まぁ自分で言っておいてなんだが、俺も乗った事は無いんだよな。
 狼なら捕まえて乗った事はあるんだけど、自分で走った方が速かったんだよね。

「あ! 良い考えがあります! フレイアさん。モレノさんは馬にのれますよね?」
「王族は全員乗れるはずだが……どうするのだ?」
「各馬車に二頭の馬が居て、二台の馬車があるので、四頭の馬が居ますよね? そして、私たちは五人です。更に私は馬に乗った事が無いので……私はアルフレッドさんと一緒に乗りまーす!」

 え? いや、俺は構わないが、俺も馬には乗った事がないんだが。

「なっ!? 何を言っているんだ!? そ、それなら私と一緒に乗れば良いではないか」
「フレイアさんは私と同じくらいの身長じゃないですか。前に座る事で、前方が見えなくなったら困りますよね?」
「ソフィアが後ろに座れば良いだろう」
「落ちたら危ないじゃないですかー! だったら、前に乗せてもらって、落ちないようにガードして欲しいですよっ!」
「だったらモレノ卿と一緒に……」
「あり得ませんっ!」

 何だろう。やけにフレイアとソフィアが白熱しているが……確かに落ちたら危ないし、後ろより前の方が安全な気もする。
 最悪、落下しそうになったら、俺がソフィアを抱きかかえて飛び降りるという事も出来るしな。

「では、ソフィアは俺と一緒に乗るか」
「待ってくれ。実は私も馬に乗れないんだ」
「フレイアさんは自分で乗れるって言いましたよね!?」

 何故か二人のバトルがつづいているが、先程言った通りに馬へ乗る事となり、フレイアが馬具を装着させると、モレノとクララに声を掛けに行く。
 さて、俺は上手く乗れるだろうか。
 初めての乗馬体験にワクワクしながら、先ずは馬と仲良くなろうと思い、顔を撫でながら目を合わせると……逸らされた!? というか、怯えられていないか!?

「おぉ、流石はアルフレッドだな。その黒い馬は力はあるのだが気性が荒いのに、完全に服従……もとい心を通わせているではないか」

 今、フレイアは服従って言った!?
 それに気性が荒いなんて事もなくて、物凄く穏やかな馬なのに。
 見れば、モレノもクララも既に馬へ乗って居たので、俺も黒い馬に乗り……うん。物凄く素直な馬で、俺が思った方へ見事に進んでくれるな。
 ただ、風邪でもひいているのか、ずっと震えているのが気になるが。

「ソフィア、手を」
「はいっ!」

 ソフィアが伸ばした手を取り、引っ張り上げて俺の前へ乗せてやり……って、向きが逆で、俺の方に身体が向いてしまった。

「ソフィア、向きが逆だーっ!」
「ソフィアさん。どうしてアルフレッド様と向き合って……こほん。危ないですから、ちゃんと前を向きましょうね?」
「あれー? 間違えちゃったー。でも、時間もないし、このままでも大丈夫ですよー」

 ソフィアの言葉で、何故かフレイアとクララが巧みに馬を操って詰めて来たが……二人ともめちゃくちゃ上手いな。
 俺も二人に負けないように、上手く操れるように頑張ろう。
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