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第29話 王族の人たち

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「わかりました。この者たちの身柄は、我々で預かりましょう」
「よろしく頼む」

 フレイアの案内で、コルドバ公爵と二人の用心棒をを騎士団に引き渡した。
 それから、他にも余罪が沢山出てくるだろう……と、この機会を逃さず徹底的に調べて来ると言って、騎士たちが公爵の屋敷へ。
 一先ず公爵側は騎士団に任せておけば良さそうなので、俺たちは先ずクララを王宮へ連れて行き、無事に連れ戻した事を報告する。……報告するのだが、

「おぉ、聖女が無事で良かった。聖獣様の力を失ってしまったら、この国は終わりだからな」
「聖獣様の力が他国へ奪われないように、聖女の護衛を強化すべきだ」
「そもそも剣聖は何をしていたんだ! 聖女は聖獣様の所へ行く事以外、外出禁止にすべきではないか!?」

 こいつらは一体何なんだ?
 どいつもこいつも、誰一人としてクララの心配をしていない。
 その上、クララの自由を奪おうとするなんて……二、三発殴ってやれば目が覚めるだろうか。

「アルフレッド……言いたい事は分かるが、ここはこらえて欲しい。相手は王族……大変な事になってしまうんだ」
「……わかった」

 フレイアの言葉で、俺がここで暴れると、クララやフレイアに迷惑が掛かると察し、ただただ我慢していると、

「ん? あー、そっちの男は聖女を助けてくれた冒険者だっけ。冒険者ギルド経由で褒美を取らせよう。だからもう、下がって良いよ」

 今度は俺に話し掛けて来た。

「しかし、コルドバ公爵も愚かだな。聖獣の力を得て何をするつもりだったのやら」
「実は聖獣ではなく、聖女の方が目的だったのかもしれませんぞ? 公爵からすれば、娘程の年齢の聖女を妾にしたかったのかもしれませんな。奴は幼女趣味だという噂でしたからな」
「ふっ、こんな女など、聖女でなければ何の価値も無いというのに」

 よし、わかった。殴ろう。
 そう思った時には身体が動いていて……クルリと回れ右していた。

「では、我々はこれにて失礼致します」

 そう言って、フレイアに押されながら、ソフィアと共に王族たちの前から立ち去る。

「さっきのは……ソフィアか?」
「はい。申し訳ないのですが、物凄く嫌な予感がしたので土魔法でアルフレッドさんの向きを回転させてもらいました」
「……そうか。すまない。あのまま俺が殴っていたら、きっと大変な事になっていたんだよな」
「おそらく。ですが……あれは怒って良いです。確実に怒っていると分かるアルフレッドさんを背後から見ていたので、私は逆に冷静になれましたが、そうでなければ私が攻撃魔法を放っていたかもしれませんし」

 ソフィアも怒ってくれているが、とにかくあれは酷かった。
 王族だか何だか知らないが、クララを何だと思っているんだ。

「あ……でも、今のクララは聖女としての力が封じられているんだよな? だったら、アイツらの相手をする必要なんて無いんじゃないのか?」
「それはそれで、クララ様が困るのだよ。クララ様は、聖女という立場でいろんな街へ移動する事が出来て、そこの街の怪我人や病人を治癒魔法で治していらっしゃるんだ。聖女でなくなってしまったら好き勝手に街を移動出来なくなって、助かるはずの人々を助けられなくなり、結果的にクララ様が悲しむ事になってしまうのだ」

 残念ながら、世の中は色々と複雑らしい。
 クララは聖女という立場だが、王族からは無下に扱われ、でも聖女という立場で困っている人々を救いたいのか。

「という事は、逆に聖女の力が封じられているという事がバレて、聖女の立場を剥奪とかされる方が困るのか」
「まぁそうなるな。それに、元々私は違う任務でご一緒出来なかったが、そもそも聖獣様にお会いする用事があったようだしな」
「そうか。じゃあ、とりあえずクララを姉さんに――白虎に会わせようか」
「では、私から話しを通しておこう。私が一緒に居れば、クララ様も外出が許可されるはずだからな」

 とはいえ、フレイア曰く少し間を置いた方が良いらしく、一先ず三人で街へ……待望の異世界での食事をする事になった。
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