料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

文字の大きさ
上 下
26 / 48

挿話5 魔物を集める悪漢コンビのアニキ分

しおりを挟む
「では、職業学校の最後の課題だ。昨日入ってもらった人工ダンジョンだが、あの先がある場所に繋がっている。その先を出て、地上から宿舎へ戻って来る事が出来たら晴れてEランクの冒険者となり、卒業だ」

 チッ……昨日は罠を仕掛けようがなかったが、今日こそあの男に吠え面をかかせてやる!

「アニキ、どうするんだ?」
「もちろん仕掛けるぞ。だが、このダンジョンは知っての通り、物凄く簡単な造りだ。だから先に俺たちが出て、出口で魔物召集スキルを使うんだ」
「えっ!? で、でも、この前はそれで俺たちが酷い目に……」
「だから、召集スキルを使うだろ。そして、その場からすぐに逃げるんだよ」
「なるほど。けど……前回は俺たちですら苦労した、ワイルドウルフが来たぜ? アイツら……死んじまうんじゃないか?」

 コイツの言う通りで、思い出すのも嫌だが、前回はD級冒険者が討伐する事が推奨されている魔物が現れてしまった。
 ただでメシと寝床が与えられるからと、わざとこの試験に不合格となっていて、実際はE級冒険者の実力を持つ俺たちだから何とかする事が出来たが、見習のアイツらは確かに痛い目に会うだろう。

「だが、この職業学校を含め、冒険者は自己責任だ。魔物との戦いは特にな」
「そうだけど殺しは……」
「まぁ待て。だったら、こうしよう。アイツらの手に負えない魔物が現れたとして、苦戦している所を俺たちが颯爽と助けてやる。そうすると恩を売れて、お礼に金目の物をくれるかもしれねぇし、あの女共が俺たちの方が良いってなびくかもしれねぇ」

 とはいえ、アイツらは金持ちだからな。
 おそらく前回の丸太を止めたり、落とし穴を発見した時のように、何かしらのマジックアイテムを使うのだろう。
 マジックアイテムを使わずに、あれらの罠を回避するなんて不可能に決まっているしな。
 戦いの中で、何かのマジックアイテムを落としたりすれば、それを拾って売るだけで大金になるし、最悪どさくさに紛れて魔法使いの少女とお近づきになれれば良しとしよう。
 そうと決まれば、先行しないとな。

「じゃあ、俺たちは先に出発させてもらうぜ。過去に何度も受けているから説明は不要だ。ちなみに、左の通路を進ませもらう」
「そうか、わかった。では、残りの三名には説明を続けよう」

 ふっ……せいぜい無意味な説明を聞いて時間を費やしてくれ。
 その間に俺たちは先へ進み、身を隠させてもらうぜっ!
 現れる弱い魔物たちを倒していき、この人工ダンジョンの訓練用のボス……イエロースライムを二人掛かりで倒して外へ。
 まぁぶっちゃけ、この人工ダンジョンは距離が長いだけの、時間稼ぎ用のダンジョンだからな。
 最後の訓練の本題は、冒険者として野営を経験しろっていうだけの内容だ。
 俺たちは慣れて居るが、あの金持ち連中はどうかな? 宿舎でも虫が居たら嫌だとか、そんな事を言っていたやつらだし、案外あっさりギブアップしたりしてな。
 実際、過去にもそういう奴らは居たし。

「アニキ……話し声が聞こえるッス。奴ら、来たんじゃないッスかね」
「思っていたよりも早いな。まぁいい。じゃあ手筈通りに行くぞ。先ずは魔物召集スキルだ」

 ダンジョンの出口で、俺の魔物を集める草笛スキルを使い、一目散にその場を離れる。
 大急ぎで離れた場所まで逃げ、念の為に木の上へと登る。
 これなら、ワイルドウルフが現れても襲われないし、かつ奴らにも見つからないだろう。
 今回はどんな魔物が現れるのかと、ワクワクしながら出口を見つめていると、

「あ、アニキ! や、ヤバいッスよ!」
「あん? 何がだよ」
「あ、あれを見て欲しいッス! 上ッスよ! 上っ!」

 同じ木に登った弟分が騒ぎだす。
 一体、どうしたんだよと言われた方向に目を向けると、

「……は? う、嘘だろ!?」
「い、いえ、マジッス! ど、どうします!? あんなのアイツらどころか、俺たちもヤバいッスよ!」

 どういう訳か、上空に大きなドラゴンが飛んでいて……降りて来たぁぁぁっ!
 俺の草笛スキルは一体どうなっているんだっ!?
 どうして、こんな場所にS級冒険者じゃないと手も足も出ないような魔物が現れるんだよっ!
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...