料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

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第19話 風魔法?

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「では、二日目のカリキュラムを始める。今日は攻撃の訓練を行うので、先ずは攻撃手段を……大きくは武器か魔法かを決めてもらおう」

 遂に来たっ!
 しかも自分で好きに選べるのなら、誰が何と言おうと魔法しかないだろう。

「はい! 俺は魔法にします」
「えぇっ!? アルフレッドっ!? あれだけの体術が出来る上に、魔法まで使えるのかっ!?」
「いや、使えないぞ。だからこそ、魔法の練習がしたいんだ」
「あぁ、そういう事か。あれだけ動けて、実は魔法使いです……って言われたら、流石に挫ける所だったぞ」

 驚くフレイアだったが、彼女は武器……片手剣を選び、ソフィアは水魔法というのを選んだ。
 話を聞くと、ゲームによくある火水風土の四属性があり、他にも扱いが難しい光や闇などの属性があるらしい。

「じゃあ、俺は風魔法にしようかな」
「アルフレッドさん。どうして風魔法にされたのですか?」
「俺の勝手なイメージなんだけど、攻撃と言えば火か風かなーって思って。で、風の方がカッコ良い気がしたからな」

 これに加えて、またもや俺の勝手なイメージだけど、風の方が応用が効く気がするんだよね。
 攻撃以外にも空を飛んだりとか、バリア的なのを展開したりとか。
 一方で火は攻撃特化っていうか、攻撃以外には料理の火起こしくらいにしか使えなさそうだし、火起こしなら魔法じゃなくても出来るしさ。
 という訳で風魔法を選ぶと、オジサンが練習用の杖を貸してくれた。

「今後、魔法を使っていくのであれば、何かしらの魔法を発動させる媒体を用意するように。剣士が剣を選ぶように、杖にも個性があるからな」
「分かりました」
「では、武器を選んだ二人はそっちへ。魔法を選んだ三人はこっちへ来てくれ」

 オジサンに言われ、二人組の男の片割れと、俺とソフィアが指定された場所へ。

「水魔法を選んだお嬢ちゃんは、そうだな……この木にしようか。水魔法であれば何でも良いから、この木を倒すように」
「えぇっ!? 木を……ですか!?」
「あぁ。では、頑張ってくれ。風魔法の二人は……これとこれにしよう。風魔法で、それぞれ石を割るように」

 なるほど。練習すれば魔法で大きな石が割れるのか。
 オジサンは一旦武器側の二人に指示をして、俺の所へやって来た。

「さて、見たところ全くの初心者は君だけのようだ。実際に魔法を使うから、よく見ておくように……ウインド・カッター」

 オジサンが杖を突き出して、魔法の名前っぽい言葉を叫ぶと、目の前の草むらの草が、一気に短く刈られる。

「風魔法の攻撃魔法なら、これが一番簡単だろう。別に今の魔法でなくても構わないから、あの石へ触れずに割る事が出来たら、今日の課題はクリアだ」
「おぉー、とりあえずやってみます」

 オジサンが何処かへ行ってしまったので、俺の腰くらいまでの高さがある大きな石に杖を向け、

「ウインド・カッター!」

 全力で叫んでみた。
 だが、杖からは何も出ず、俺の声が周囲に響いただけだ。

「ぷっ……扱いの難しい風魔法を選んだから、どれ程の実力があるのかと思ったけど、お前全く才能が無ぇな」
「ん? 扱いが難しいのは光とか闇じゃないのか?」
「それは扱いが難しい上に、使う為には特別な才能が要るんだよ。基本となる四属性の中では、水と土が簡単で、火と風が難しい……って、そんな事も知らずに選んだのか? お前、魔法は向いて無いぜ。……まぁせいぜい頑張るんだな」

 そう言って、俺と同じ風魔法を選んだ男が、自分に割り当てられた石を削っていく。
 なるほど。風魔法は難しかったのか。
 だが、先程のウインド・カッターしか教えてもらっていないし、もっと頑張れば出来るかもしれない。
 たった一度ダメだったくらいで諦めてなんていられないからな。

「ウインド・カッター!」
「ウインド・カッター!」
「ウインド・カッター!」

 かなり気合を入れて声を出しているが、魔法が発動する気配は無い。

「うぷぶっ……声量で魔法が出る訳じゃねーんだよ! そんなんじゃ、一生掛かっても魔法は使えねーよ!」

 なるほど。魔法を使うのに声や気合は関係ないらしい。
 こいつ、わざわざ教えてくれるなんて、実は良い奴だったんだな。
 しかし杖を突き出して、魔法の名前っぽい言葉を言う以外に、何があっただろうか?
 ……もしかして、突き出し方か?
 杖を手にした手を、正拳突きのように真っ直ぐ突き出してみたり、上から振り下ろしてみたり、手首のスナップを利かせてみたり……あ、少し風が出た気がする!
 これかっ! 手首のスナップか!


「ウインド・カッター! ……やった! 石が割れたっ! 魔法が使えたぞっ!」

 何度も頑張った甲斐あって、風魔法が使えるようになった。

「……いや、少しも魔力が変化していなかったんだが。……まさか、杖を振って衝撃波か真空波だかを起こしたのかよ……」

 男が何か呟いていたが、おそらく負けていられないとヤル気を出したのだろう。
 うん、この男にも感謝だな。
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