上 下
17 / 48

第14話 フレイアの症状

しおりを挟む
 翌朝。目が覚めると……視界に綺麗な女性の顔が映る。
 目が合い、暫くぼーっとそのままで居ると、

「あ、アルフレッド!? ……そ、そうか。私は遂に男性との同衾までしてしまって……こ、こほん。お、おはようっ! よ、良い朝だなっ!」

 同じ様に茫然としていたフレイアが突然慌てだし、飛び起きた。
 その時、俺とフレイアの手が触れていた事に気付いたのだが、寝ている間に何かしてしまったのだろうか?
 ……山で十年暮らしていて、一人で寝ている時は気配や物音ですぐに起きるんだけど、姉さんにくっついて寝ている時は、安心しきって全く起きれなくなるんだよな。
 寝ている最中に、フレイアの手に触れてしまい、そのまま寝てしまったのかも。

「さ、さぁ、アルフレッド。朝食を済ませて、早く修行をしようではないか」
「あぁ、分かった」

 フレイアが必死に話を逸らそうとしているので、夜の事には触れずに外へ。
 手早く果物を集めて食事を済ませると、何故かチラチラと俺の顔を見てくるフレイアと稽古を始め……うん。全く身が入っていないね。
 流石に白虎の力を使わずに……とはいかないものの、動きにキレが無い。
 そう思ったところで、ふと姉さんの教えが頭をよぎる。

『姉さんの教えその二――女性の身体には気遣うべし。
 アルは自分以外の人間を……女性を知らない。
 人間族の女性は男性より魔力が多く、魔法の制御を得意としていない者は、体内で魔力の流れが悪くなり、突然体調を崩す事もあるらしい。
 我は人の姿をしているだけで人間ではないから、参考にしないように』

 クララは治癒魔法を使っていたし、魔法の制御に長けているんだろうけど、フレイアはスキルを使っていたものの、魔法は使っていなかった。
 というか、どう見ても剣を得意としていて、魔法を得意としているタイプには見えないからね。
 ……まぁスキルも魔法も、俺からすればどっちも凄いし、それぞれの違いも分からないんだけどさ。

「フレイア。もしかして体調が悪いんじゃないのか? 無理は良くないから、少し休もうか」
「アルフレッド? わ、私なら大丈夫だから、続きを……」
「はいはい。辛い時は寝るのが一番。そういう状態の時に効くっていう薬草を後で採ってくるから、今は宿舎で休もうか」
「えっ!? アルフレッド……お、お姫様抱っこ!? あぁぁぁ、死ぬまでに経験したい事の一つがまた……」

 フレイアを抱きかかえると、稽古を続けたがっていたのに突然大人しくなる。
 やはりフレイアは体調が良くないようだ。
 怪我に効く薬草は昨日の食材と一緒に生えている場所を見つけていたけど、人間の女性が魔力の流れを悪くしている時の薬草は、何処に生えているのだろうか。
 俺も姉さんも魔法が使えないから必要とする事がないから、一応生えそうな場所は教えてもらっていたんだけど、山でも殆ど採取した事がないんだよね。
 一先ず、フレイアを宿舎へ運んだのだが、

「あの二人は居ないのか。何かあったらフレイアを助けて欲しかったんだけど……」

 二人の男が居なかったので、聖壁のスキルを一旦解除してもらってそっと毛布の上に寝かせる。

「アルフレッド? 何処かへ行ってしまうのか?」
「フレイアの症状に効く薬草を採ってくるだけだよ。出来るだけ早く戻って来るから、少し横になって待っていて」
「わ、私の症状に効く……あ、アルフレッドは私の気持ちに気付いているのか!?」
「あぁ。だから少しだけ待っていてくれないか」
「……な、なんという事だ。こ、これはつまり既に恋仲……あ、あれ? アルフレッド!? アルフレッドーっ!?」

 フレイアが何か言っていたが、今の俺に出来る事は一刻も早く薬草を採って来る事なので、白虎の力を使って走り出す。
 森の中を走り回り、目的の薬草を見つけたので大急ぎで戻ると、

「あれ? フレイア? 随分元気そうだな。もしかして、寝て居たら治った……のか?」

 フレイアが宿舎の外で素振りをしていた。
 その動きは昨日と同じキレが戻っていて、とても鋭い。

「あぁ、もう大丈夫だ。一人で色々と悩んでいたのだが、アルフレッドのおかげですっかり解消した」
「そうか。それは良かった。これからは一人で悩まずに、何でも相談してくれよな」
「――っ! あ、あぁ。そうだな。これからは、アルフレッドに相談しよう」

 何故かフレイアが再び顔を赤らめたが、元気そうで何よりだと思っていると、

「あ、あのー。ここが冒険者ギルドの職業学校っていう場所であっていますか?」

 大きなリュックを背負った、小柄な女の子が現れた。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...