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第13話 得意の料理を振舞うアルフレッド

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 石でカマドを作り、集めて来た木の枝にフレイアが火を点けてくれたので、その上に鉄板代わりの薄い石の板を乗せる。
 次は採取した食材を、腰に刺した小さな石刀で捌く。

「凄いな。石のナイフで、肉や魚を捌けるのか」
「長年使っている愛用品だからね。以前はもう少し使いやすい包丁があったんだけど、これでも十分料理が出来るくらいに慣れちゃったからさ」

 包丁やガスコンロに電子レンジ……日本に居た時の方が調理器具は優れているけど、こちらの世界は食材が殆どタダで獲れるんだよね。
 しかも素晴らしいのが、調味料代わりになる物が沢山ある事だ。

「ん? 今削っている粉は一体何なのだ?」
「これ? ある魔物の骨なんだけど、何故か削ると塩の代わりになるんだよ」
「そうなのか……知らなかったな。今、新たに入れた紫の木の実を搾った物は?」
「これは醤油と同じ味なんだけど……醤油って知らない?」
「あぁ、初めて聞く名前だな」

 あれ? 山で暮らして居た頃、代替品だけど、豊富な調味料――醤油やお酢に、コショウを姉さんが知らなかったのは白虎だからだと思っていたんだけど、フレイアも知らないのか?
 もしかして、この国には調味料が全然存在しないのか?
 それとも、名前が全然違うとか?
 まぁとりあえず、実際に食べてもらって、聞いてみるか。

「よし、出来た! フレイア。食べてくれ」
「凄いな。これは何という料理なんだ?」
「生姜焼きと野菜炒めだ。馴染みはないかもしれないが、この竹で作った箸を使ってくれ」

 予想通りフレイアは箸を使った事がなかったので、まずは持ち方を教え、冷めないうちに食べてもらいたいのだが……やはり箸文化ではない異世界では難しいのか、中々慣れてくれない。

「この指とこの指で上の箸を動かして……」
「あ、あぁ……私の指を動かして、ゆっくり教えてくれると助かる」
「すまない。この指をだな……」
「……と、殿方に手を握られ……こほん。何でもない。続けて欲しい」

 思っていたよりも時間が掛かってしまったが、ある程度フレイアが箸に慣れた所で、先ずは生姜焼きから。

「おぉ、これは……何だっ!? 物凄く旨いっ!」
「うん、いけるな。だが、米が欲しくなる」
「この甘辛いタレが旨さの秘密なのか!? 騎士団の食堂や王宮で何度も食事をしているが、こんな料理は初めて食べるっ! それに、この野菜……火を通しているのに、シャキッとしているのは不思議だ」

 なるほど。生姜焼きを食べた事がなく、箸も使い方を知らないという事から、この国に和食が無いというは分かった。

「じゃあ、これはどうだ? 川魚をムニエル風にしたんだ」
「ムニエル? 聞いた事の無い料理だが……な、何だこの料理はっ!? 皮はパリパリしているのに、身はしっとりしていて……美味しいっ!」
「フレイアの口に合って良かったよ。この魚料理は、フレイアに喜んでもらおうと思って作ったからね」
「わ、私の為に……」

 うーん。川魚を洋風に調理してみたんだけど、これも食べた事が無いのか。
 バターの実……と俺が勝手に呼んでいる果物がバター代わりになるので、パンを削って小麦粉の代わりにしてムニエルにしたんだけど……調理法自体が全然違う文化なのかもしれないな。
 とりあえず、この世界の料理を食べてみたい。
 昼食も、馬車の中でクララと食べたパンだけだったからな。

「アルフレッド! とても……とても美味しいかった! ありがとう!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。じゃあ、そろそろ暗くなり始めてきたし、宿舎へ戻ろうか」
「ま、待って欲しい。その、これから一緒に寝る訳だし、水浴びをしたくて……」
「あ、そうか。さっきの魚を捕まえた川は水も綺麗だったし、水量も十分だったから、そこで水浴びをすると良いんじゃないかな」

 フレイアを川に案内すると、いきなりフレイアが鎧を脱ぎ始めたので、

「ちょ、ちょっと待って」

 大慌てで近くの木を蹴り倒し、手刀で板状にすると、簡易な塀を作る。

「アルフレッド。これは?」
「いや、流石にフレイアの肌を見てしまう訳にはいかないし、誰かの目にも触れさせたくないからさ」
「……わ、私の事を剣聖ではなく、女性として見てくれている。もう、け、結婚するしか……」

 フレイアから離れた時に何か言っていた気もするけど、俺も身体を綺麗にして焚火で身体と服を乾かすと、二人で宿舎へと戻る事にした。
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