料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

文字の大きさ
上 下
15 / 48

第13話 得意の料理を振舞うアルフレッド

しおりを挟む
 石でカマドを作り、集めて来た木の枝にフレイアが火を点けてくれたので、その上に鉄板代わりの薄い石の板を乗せる。
 次は採取した食材を、腰に刺した小さな石刀で捌く。

「凄いな。石のナイフで、肉や魚を捌けるのか」
「長年使っている愛用品だからね。以前はもう少し使いやすい包丁があったんだけど、これでも十分料理が出来るくらいに慣れちゃったからさ」

 包丁やガスコンロに電子レンジ……日本に居た時の方が調理器具は優れているけど、こちらの世界は食材が殆どタダで獲れるんだよね。
 しかも素晴らしいのが、調味料代わりになる物が沢山ある事だ。

「ん? 今削っている粉は一体何なのだ?」
「これ? ある魔物の骨なんだけど、何故か削ると塩の代わりになるんだよ」
「そうなのか……知らなかったな。今、新たに入れた紫の木の実を搾った物は?」
「これは醤油と同じ味なんだけど……醤油って知らない?」
「あぁ、初めて聞く名前だな」

 あれ? 山で暮らして居た頃、代替品だけど、豊富な調味料――醤油やお酢に、コショウを姉さんが知らなかったのは白虎だからだと思っていたんだけど、フレイアも知らないのか?
 もしかして、この国には調味料が全然存在しないのか?
 それとも、名前が全然違うとか?
 まぁとりあえず、実際に食べてもらって、聞いてみるか。

「よし、出来た! フレイア。食べてくれ」
「凄いな。これは何という料理なんだ?」
「生姜焼きと野菜炒めだ。馴染みはないかもしれないが、この竹で作った箸を使ってくれ」

 予想通りフレイアは箸を使った事がなかったので、まずは持ち方を教え、冷めないうちに食べてもらいたいのだが……やはり箸文化ではない異世界では難しいのか、中々慣れてくれない。

「この指とこの指で上の箸を動かして……」
「あ、あぁ……私の指を動かして、ゆっくり教えてくれると助かる」
「すまない。この指をだな……」
「……と、殿方に手を握られ……こほん。何でもない。続けて欲しい」

 思っていたよりも時間が掛かってしまったが、ある程度フレイアが箸に慣れた所で、先ずは生姜焼きから。

「おぉ、これは……何だっ!? 物凄く旨いっ!」
「うん、いけるな。だが、米が欲しくなる」
「この甘辛いタレが旨さの秘密なのか!? 騎士団の食堂や王宮で何度も食事をしているが、こんな料理は初めて食べるっ! それに、この野菜……火を通しているのに、シャキッとしているのは不思議だ」

 なるほど。生姜焼きを食べた事がなく、箸も使い方を知らないという事から、この国に和食が無いというは分かった。

「じゃあ、これはどうだ? 川魚をムニエル風にしたんだ」
「ムニエル? 聞いた事の無い料理だが……な、何だこの料理はっ!? 皮はパリパリしているのに、身はしっとりしていて……美味しいっ!」
「フレイアの口に合って良かったよ。この魚料理は、フレイアに喜んでもらおうと思って作ったからね」
「わ、私の為に……」

 うーん。川魚を洋風に調理してみたんだけど、これも食べた事が無いのか。
 バターの実……と俺が勝手に呼んでいる果物がバター代わりになるので、パンを削って小麦粉の代わりにしてムニエルにしたんだけど……調理法自体が全然違う文化なのかもしれないな。
 とりあえず、この世界の料理を食べてみたい。
 昼食も、馬車の中でクララと食べたパンだけだったからな。

「アルフレッド! とても……とても美味しいかった! ありがとう!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。じゃあ、そろそろ暗くなり始めてきたし、宿舎へ戻ろうか」
「ま、待って欲しい。その、これから一緒に寝る訳だし、水浴びをしたくて……」
「あ、そうか。さっきの魚を捕まえた川は水も綺麗だったし、水量も十分だったから、そこで水浴びをすると良いんじゃないかな」

 フレイアを川に案内すると、いきなりフレイアが鎧を脱ぎ始めたので、

「ちょ、ちょっと待って」

 大慌てで近くの木を蹴り倒し、手刀で板状にすると、簡易な塀を作る。

「アルフレッド。これは?」
「いや、流石にフレイアの肌を見てしまう訳にはいかないし、誰かの目にも触れさせたくないからさ」
「……わ、私の事を剣聖ではなく、女性として見てくれている。もう、け、結婚するしか……」

 フレイアから離れた時に何か言っていた気もするけど、俺も身体を綺麗にして焚火で身体と服を乾かすと、二人で宿舎へと戻る事にした。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...