料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

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第8話 フレイアのプライド

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「フレイアさん。俺にはフレイアさんと戦う理由が全く無いんだけど。どちらがクララを守るのに相応しいかって話なら、同性のフレイアさんだと思うよ?」
「そういう話ではない! 自分で言うのはおこがましいが、私は自分の事を強いと自負している。そして、長年クララ様をお守りしてきたが、F級冒険者のアルフレッドの方が私より強いと言われて、引き下がれる訳がないだろう!」

 あー、これはフレイアさんのプライドを傷つけてしまったのか。
 ただ、俺が何かした訳ではないんだけどな。

「アルフレッド様。申し訳ありません。こうなったフレイアは、もう何を言っても聞く耳を持ってくれなくて……すみませんが、少しだけアルフレッド様のお力を見せて、納得させていただけないでしょうか」

 えっ!? クララは止めてくれないの!?
 というか、俺が勝って当然みたいな言い方をしているけど、このフレイアさん……かなり強いよ?
 歩き方とか、身のこなし。身体能力が優れている事が見て取れるんだけど。
 ラスカフリャ村で俺にケンカを売って来た、ニセ冒険者のハーヴィーとは違って、白虎の力を使わないと勝てないかもしれない。
 ……いや、もちろん使えば勝てるんだけど、姉さんの教えがあるからな。
 奇跡的に、クララは白虎の力を見ても友達になってくれたけど、このフレイアさんは既に敵視されてしまっているし、同じ奇跡は起こらない気がする。

「しかし、そうは言ってもやはり俺には……」
「……わかった。ならば、勝負は止めよう。この場で……今すぐ決闘だ!」
「えぇっ!? フレイアっ!? ……もうっ!」

 街の通りの真ん中で、いきなりフレイアさんが腰の剣を抜く!
 周囲に人は……良かった。危険な雰囲気を察したのか、誰も居ないようだ。

「アルフレッド様! 私の――聖女の力で結界を張っております。無関係の者は近付いて参りませんし、外からこの中の様子を見る事も出来ませんので、ご安心ください!」

 クララ。無関係の人を巻き込まないようにしてくれたのは助かるんだけど、それなら俺も巻き込まないようにしてくれないだろうか。
 そう思った時には、フレイアさんが真横に払った剣の切っ先が、俺の胸に届こうとしていて……うん、無理だ。
 ハーヴィーとは斬撃の鋭さが比べ物にならない。
 このままだと確実に斬られるので……使うか。

「ふぅん、今のを避けられるのか。なるほど……クララ様が仰る通りの実力なのかもしれないな」
「だったら、この戦いを止めないか?」
「それは出来ない相談だな。それに……私も未だ本気を出していないからな」

 そう言った直後、フレイアさんの動きが更に速くなる。
 ……凄いな。自分で強いと言うだけの事はあると思う。
 一本の剣が、右へ左へと動き、時折フェイントを交えながら、俺に迫って来る。
 一応、全て紙一重で避けているが、

「くっ……ならば、これならっ! ≪風狼剣≫」

 斬撃が飛んで来たっ!?
 とりあえず避けたけど、どうして剣が飛び道具になるんだよっ!
 あれかな? クララが治癒魔法を使ったり、結界を張ったりしている魔法みたいな感じなのか?
 ……羨ましい。俺もそんな風に格好良く魔法を使いたいのだが、全く使えないんだよな。
 悲しい事に、俺は近距離戦闘しか出来ないんだよな。
 あと、武器の使い方も知らない……というか、そもそも持った事すらないしさ。

「避けられたっ!? だったら、≪真空斬≫っ!」
「いや、もう止めよう。フレイアさんは俺より強いよ」
「い、一度も攻撃せず、私の剣を全て避けておいて何を言う! 本気でそう思うなら、攻撃を仕掛けて来いっ! 女だからと言って、手加減は無用だっ!」

 やっぱり避けているだけじゃダメか。
 ハーヴィーの時みたいに、自滅してくれそうにもないしな。

「……わかった。後悔するなよ?」
「当然だっ! 私も本気でいく……死ぬなよ」

 俺とフレイアさんの視線が絡み合い、一旦互いに距離を取ったあと……フレイアさんが動く。

「≪剣閃≫」

 フレイアさんが剣を薙ぎ払い……最初に見た剣筋だと思った直後に、そこから加速する!
 速いっ!
 回避は不可能だと判断し、白虎の力で強化した腕で剣先の起動を変えると、剣の根本を叩き折る。
 そのままフレイアさんの背後へ回り、羽交い締めにすると、

「は? 金剛石で作られた私の剣を……折った?」
「すまない。だが、先に断ったからな?」
「え……負けた? 私が? ……うぅぅ、うわーん」

 突然泣き始め……えぇっ!? これ、俺が悪いのか?
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