料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

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挿話1 アルフレッドに命を救われた聖女クララ

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「クララちゃん。ペナァラ山は強力な魔物が現れる場所だけど、俺たちはA級冒険者だから、大船に乗ったつもりでいてくれよな」
「はい、よろしくお願いします」

 国からの依頼で、聖獣様へお力を貸していただく為に聖地ペナァラ山へ向かう為、冒険者さんたちが護衛についてくれる事になった。
 普段、私が何処かへ出掛ける時はフレイアが一緒に来てくれるんだけど……タイミング悪く別の任務があるらしい。
 ロゾヤの街の冒険者ギルドでは、一、二を争うパーティだから大丈夫だとギルド職員さんからは言われたけど、

「へっへっへ……この娘が噂の聖女様か。聞いていた通り、めちゃくちゃ可愛いな」
「おい、ハーヴィー。お前の腕は信頼しているが、その女癖の悪さは治せっていつも言っているだろ。というかクララ様は、聖女様なんだぞ!?」
「わかってるよ。当然、護衛は全力でやるよ」

 冒険者さんたちのリーダーをされている方が、随分軽い感じだけど、本当に大丈夫なのかしら。
 そんな事を思っていたけど、確かに評判通り強く、現れる魔物をすぐさま倒していく。
 これなら大丈夫かなと安心した所で、

――GUAAAAA!

 突然、緑色の巨大な何かが現れた。
 どうして、こんな大きな物がいきなり現れるの!?
 そう思った時には、強烈な衝撃と共に、馬車が吹き飛ばされる。

「きゃあぁぁぁっ!」

 思わず叫んでしまったけど、何とか外へ出ると、そこで目に映ったのは……ドラゴン。
 どうして、こんな場所にドラゴンが!?
 聖獣様が住むペナァラ山の近くには、獣系の魔物しか現れず、ドラゴンすら近くを飛ばないと言われているのに!

「ど、何処から現れたんだっ!? おい、攻撃魔法を……チッ! あの尻尾をもろに受けたら無理か! クソがっ!」

 リーダーであるハーヴィーさんがドラゴンに向かっていったけど、長い尻尾で払われ、動かなくなる。
 ど、どうしよう! 私の治癒魔法で冒険者さんたちを回復させるにしても、ドラゴンが相手では勝ち目がないっ!
 そう思った直後、凄い速さで何かがやって来て……ドラゴンが遠くへ吹き飛んで行った!?
 な、何かは分からないけど、今の内に冒険者さんたちへ治癒魔法を!
 少しすると、この辺りでは珍しい黒髪の男性がやって来たんだけど……ドラゴンが居なくなっている!?
 まさか、倒したの!? ドラゴンを……一人でっ!?
 凄い! この御方は、もしかしたらフレイアよりも強いかも!

「あ、そうだ。その……さっきのドラゴンが消えて、代わりにこんなのが落ちていたんだけど」
「こ、これは……こんなに大きな魔石が使われていたなんて」

 黒髪の男性が、見たことも無い巨大な魔石を渡してくださったけど……やはり、召喚魔法ね。
 あんなに巨大なドラゴンが突然現れたし、消えたと仰っているから、間違いない。
 だけど、一体誰がこんな事を仕掛けてきたのだろうか。
 ……待って。召喚魔法で呼ばれる程の強力なドラゴンを一人で倒せるなんて、この御方は一体どれ程強いんだろう。

「あ、あの。貴方様は、どうやってあのドラゴンを倒されたのですか?」
「あ、えっと、用事を思い出した! 倒れている人たちは大丈夫っていう事だし、じゃあ俺はこれで」
「えっ!? 待ってください! お礼を……」

 ど、どうして逃げるようにして去ってしまわれるのですかっ!?
 貴方様には感謝しても、しきれないくらいの恩があると言うのに!
 せめてお名前だけでもっ! ……あ、足が速いっ!
 ドラゴンを倒す程の御方なので、やはり身体能力が凄いのね。

「……って、名前も聞けていないから、今見失ってしまったら、もう会えなくなっちゃう! お、追いかけなきゃっ!」

 凄く綺麗な目で私を見てくださって、紳士的で、格好良くて……あ! ち、違うのっ! 命の恩人……命の恩人で、お礼をする為に追いかけるんだからっ!
 冒険者さんや、馬車の御者さんを治癒魔法を使って回復し、あの御方が向かった村の方向へ、急いで行く事にした。
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