料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

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第6話 最初の友人

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「あの、出来ればお名前をお教えいただいても宜しいでしょうか」
「え? あ、あぁ、アルフレッドですけど」
「アルフレッド様と仰るのですね! 私は、このエスパナ公国で聖女をしておりますクララと申します」

 聖女? 聖女って何だろう。
 この世界では常識なのだろうか。
 もしも聖女が常識だったら、当たり前の事を聞いてくるなんて……と、変に思われそうだ。
 というか、この国の名前がエスパナっていうのも今知ったんだけどな。

「ところで、アルフレッド様。先程、ドラゴンから助けていただいたお礼をさせていただきたいのです」
「いや、その……本当に対した事をしていないというのと、俺はこれからロゾヤの街へ行かなければならないんです」
「まぁ奇遇ですね! 私もロゾヤの街へ行く所だったんです。……そうだ! アルフレッド様。ロゾヤの街まで私を護衛するという依頼を請けていただけないでしょうか。もちろん、報酬をお支払い致しますので」

 クララちゃんは、見た目は清楚で大人しそうな感じなのに、思いの外グイグイ来るな。
 姉さんが、白虎の力を人前で使うと恐れられるって言っていたけど、クララちゃんは気にしないタイプなのだろうか。
 でもドラゴンの話をした時は、確かに怯えた目をしていた。
 ところが今は、心底安心しているというか、とにかく笑顔で接してくれている。
 ……うーん。日本では「女心と秋の空」って、ことわざがあったけど、この世界でも女の子の心は読めないものなのだろうか。

「えーっと、一緒に行くのは構わないんですけど、俺は護衛の依頼はまだ請けられないんですよ。この通り、Fランクの見習い冒険者だから」
「えぇっ!? アルフレッド様がFランクなら、ほぼ全ての冒険者がGランク以下にならなければなりませんが……少しお待ちください」

 そう言って、クララちゃんが冒険者ギルドの中へ入り……暫くしてから、悲しそうな表情で戻って来た。

「アルフレッド様、申し訳ありません。聖女の権限を使っても、ギルドのルールだからと、誤って発行してしまった冒険者証のライセンスを訂正出来ないそうで」
「あの、別に誤っては居ないと思うんですけど……」
「一先ず、お礼と報酬の件については、ロゾヤの街へ着いてから考えましょう。……アルフレッド様、貸切馬車を用意いただきましたので、こちらへお願い致します」

 そう言って、クララちゃんが俺の手を取って、村の出入口に向かって行くのだが……さっきから、ころころ感情が変わり過ぎじゃないか?
 喜怒哀楽が激しいみいたいだけど、そのままついて行くと、物凄く立派な馬車が停まっていた。

「アルフレッド様。どうぞ、お乗りになってください」
「ありがとうございます。えっと、俺の事は様付じゃなくて構いませんよ? アルフレッドと呼んでいただければ」
「でしたら、私にも敬語は不要ですし、お気軽に、その……く、クララと名前でお呼びいただけると嬉しいです」

 いや、敬語なのは俺が女性に不慣れだからなんだけどね。
 まぁでも、さっきの偽A級冒険者のハーヴィーって奴も、クララちゃんって呼んでいたし……こ、この世界では名前で呼ぶのが普通なのかもな。

「わ、わかった。その……クララ。よろしく頼むよ」
「は、はい! アルフレッド様!」
「いや、だから俺には様付けなんて不要ですって」
「アルフレッド様。今、また敬語になっていましたよ? あと、アルフレッド様は私の命の恩人ですので、呼称についてはお許しください」

 二人きりの馬車の中でクララと向き合って座り、ロゾヤの街へ向かう事になってしまった。
 最初はぎこちない会話だったが、時間が経つにつれ……特に、この世界での食事の話になった時に、料理が得意だという話になって、かなり打ち解ける事が出来たと思う。
 ただ、相変わらずクララは俺の事を様付けで呼んでくるが、

「あ、あの……勝手なお願いで申し訳ないのですが、アルフレッド様には是非ともフランクに話し掛けて欲しいんです。お、お友達になりたくて……」

 顔を真っ赤に染めて懇願してくる。
 耳まで赤く染めている事から、怒っているみたいだけど……あっ! もしかして俺と同じで、クララも友達が居ないから、一人目の友人になって欲しいって事か!
 ようやくクララが必死になっている理由を察し、

「分かった。じゃあ、改めてよろしくな。クララ」
「はいっ! よろしくお願い致しますね。アルフレッド様!」

 俺にも、この世界で一人目の友人が出来た。
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