5 / 48
第5話 A級冒険者?
しおりを挟む
「あのっ! 先程は、助けていただいて本当にありがとうございましたっ!」
ドラゴンから助けた女の子が、走り寄って来たかと思うと、物凄く丁寧に、深々と頭を下げて来た。
これは……やっぱり白虎の力に怯えていて、俺に礼を言わないと不幸な目に遭うとか、そんな風に思われてしまったのだろうか。
「あ、いや、その……本当に大した事をしていないから」
また怯えた目をされると悲しくなってしまうので、どうにかお引き取り願おうと思っていたら、女の子の後ろから見知らぬ男がやって来た。
「おいおい、クララちゃん。そいつが、あのドラゴンを倒した男だって言うのかい?」
「はい、そうなんです。この方が、私たちの命の恩人ですよ」
「ぷっ……はっはっは! クララちゃん、流石にそいつは人違いだよ」
「そ、そんな事はありませんっ! この辺りで黒髪の方は珍しいですし、何より整ったお顔で……」
「いやいや、そいつが首から掛けている冒険者証を見てみろよ。その灰色のカードはFランク……一番下の見習いを示す物なのさ。そんな奴が、俺たちA級冒険者パーティを壊滅させたドラゴンに、勝てる訳がないだろ」
「ですが……」
この男のおかげで、この女の子の名前がクララちゃんだという事は分かったが、話の流れからして、こいつは近くで倒れていた護衛の奴らだよな?
あんなに弱いドラゴンに負けておいて、どうしてこんなに偉そうな態度が取れるんだ?
いや、もしかしたら、わざとドラゴンに負けて、仕事をせずに報酬だけもらおうとしたとか?
だとしたら、悪い奴ら……かもしれないな。
「ん? おい、お前! 何だ、その目は!? 本当の事を言っただけなのに、何を睨んでいるんだ!? 言っておくが、俺たちは最上級のS級へ昇格間近と言われている、A級冒険者様だ。お前なんかが、口を聞ける相手じゃないんだ」
「……待て、ハーヴィー。よく見たら、こいつの服……メチャクチャ高級な生地だぜ! もしかして、どこかの商人のバカ息子とかじゃないのか?」
「かもしれないな。貴族が冒険者になる訳がないし、実力があれば普通はF級なんて飛ばしてD級冒険者からスタートだしな。背負っている袋も、金目の物が詰まっているかもしれん。……おい、お前! 着ている服と荷物を置いていけば、さっき俺様を睨んだ事は許してやろう。だがそうでなければ、痛い目に遭ってもらう!」
こいつらは何を言っているんだ?
この着ている服は、俺が人間の社会に出る為に……と、わざわざ姉さんが買いに行ってプレゼントしてくれた物だ。
どんな理由があったとしても、譲れる訳がないだろう。
「ちょ、ちょっとハーヴィーさん! それに、皆さんも何を言っているんですかっ!? この方に命を救ってもらったというのに、強盗みたいな事を……」
「うるせえっ! 聖女だか何だか知らねぇが、このパーティのリーダーは俺だ! そして、こいつは俺にケンカを売って来た! だから、そのケンカを買っただけだっ!」
いや、どう考えてもケンカを売っているのはそっちだろ。
ハーヴィと呼ばれた男が鞘から剣を抜き放ち、
「死にさらせぇっ!」
上段から剣を振り下ろしてきたが……いや、遅いんだけど。
今は白虎の力を使っていないのに、止まって見える。
もしかして、A級冒険者っていうのはウソで、クララちゃんを騙しているのか?
とりあえず、半歩横にずれて剣を避け、
「な、何だとっ!? 俺の剣を初見で避けただと!?」
ついでに足を引っかけてやる。
「うぉっ……ぶへっ!」
あ、顔から地面にダイブしたけど……大丈夫か?
かなり派手にこけたので、皆が思わず静まり返った程なのだが、
「お、俺とした事が、足を滑らせてしまったようだ。貴様、運が良かったな! だが、今度こそ終わりだっ!」
どうやらハーヴィはメンタルだけは強靭らしい。
先程同様に剣を避け、足を引っかけると、再び地面とキスをする。
「ぐっ……こ、今度は石に躓いてしまったようだ。つくづく運の良い奴め! しかし、次こそ本当に終わりだっ! ≪疾風剣≫」
お? 今度はさっきよりも少しだけ速い。
初めて見るけど、スキルっていうやつだろうか。
だが、それでも大した事はないので、同じ様に足を引っかけると、
「あっ! おっ、おっ、うわぁっ!」
これまでよりも勢いがあったからか、盛大に転び、近くを流れていた河へ落ちて行った。
「お、おい! ハーヴィっ! くっ……お、覚えてろよっ!」
いや、何を覚えておけと?
河に落ちたハーヴィを追って、他の護衛の男たちも走って何処かへ行くと、
「やはり、貴方が私たちを助けてくれた御方に間違いありません! 護衛に雇っていた者たちが、失礼な事をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
一人残ったクララちゃんに、またもや深々と頭を下げられてしまった。
ドラゴンから助けた女の子が、走り寄って来たかと思うと、物凄く丁寧に、深々と頭を下げて来た。
これは……やっぱり白虎の力に怯えていて、俺に礼を言わないと不幸な目に遭うとか、そんな風に思われてしまったのだろうか。
「あ、いや、その……本当に大した事をしていないから」
また怯えた目をされると悲しくなってしまうので、どうにかお引き取り願おうと思っていたら、女の子の後ろから見知らぬ男がやって来た。
「おいおい、クララちゃん。そいつが、あのドラゴンを倒した男だって言うのかい?」
「はい、そうなんです。この方が、私たちの命の恩人ですよ」
「ぷっ……はっはっは! クララちゃん、流石にそいつは人違いだよ」
「そ、そんな事はありませんっ! この辺りで黒髪の方は珍しいですし、何より整ったお顔で……」
「いやいや、そいつが首から掛けている冒険者証を見てみろよ。その灰色のカードはFランク……一番下の見習いを示す物なのさ。そんな奴が、俺たちA級冒険者パーティを壊滅させたドラゴンに、勝てる訳がないだろ」
「ですが……」
この男のおかげで、この女の子の名前がクララちゃんだという事は分かったが、話の流れからして、こいつは近くで倒れていた護衛の奴らだよな?
あんなに弱いドラゴンに負けておいて、どうしてこんなに偉そうな態度が取れるんだ?
いや、もしかしたら、わざとドラゴンに負けて、仕事をせずに報酬だけもらおうとしたとか?
だとしたら、悪い奴ら……かもしれないな。
「ん? おい、お前! 何だ、その目は!? 本当の事を言っただけなのに、何を睨んでいるんだ!? 言っておくが、俺たちは最上級のS級へ昇格間近と言われている、A級冒険者様だ。お前なんかが、口を聞ける相手じゃないんだ」
「……待て、ハーヴィー。よく見たら、こいつの服……メチャクチャ高級な生地だぜ! もしかして、どこかの商人のバカ息子とかじゃないのか?」
「かもしれないな。貴族が冒険者になる訳がないし、実力があれば普通はF級なんて飛ばしてD級冒険者からスタートだしな。背負っている袋も、金目の物が詰まっているかもしれん。……おい、お前! 着ている服と荷物を置いていけば、さっき俺様を睨んだ事は許してやろう。だがそうでなければ、痛い目に遭ってもらう!」
こいつらは何を言っているんだ?
この着ている服は、俺が人間の社会に出る為に……と、わざわざ姉さんが買いに行ってプレゼントしてくれた物だ。
どんな理由があったとしても、譲れる訳がないだろう。
「ちょ、ちょっとハーヴィーさん! それに、皆さんも何を言っているんですかっ!? この方に命を救ってもらったというのに、強盗みたいな事を……」
「うるせえっ! 聖女だか何だか知らねぇが、このパーティのリーダーは俺だ! そして、こいつは俺にケンカを売って来た! だから、そのケンカを買っただけだっ!」
いや、どう考えてもケンカを売っているのはそっちだろ。
ハーヴィと呼ばれた男が鞘から剣を抜き放ち、
「死にさらせぇっ!」
上段から剣を振り下ろしてきたが……いや、遅いんだけど。
今は白虎の力を使っていないのに、止まって見える。
もしかして、A級冒険者っていうのはウソで、クララちゃんを騙しているのか?
とりあえず、半歩横にずれて剣を避け、
「な、何だとっ!? 俺の剣を初見で避けただと!?」
ついでに足を引っかけてやる。
「うぉっ……ぶへっ!」
あ、顔から地面にダイブしたけど……大丈夫か?
かなり派手にこけたので、皆が思わず静まり返った程なのだが、
「お、俺とした事が、足を滑らせてしまったようだ。貴様、運が良かったな! だが、今度こそ終わりだっ!」
どうやらハーヴィはメンタルだけは強靭らしい。
先程同様に剣を避け、足を引っかけると、再び地面とキスをする。
「ぐっ……こ、今度は石に躓いてしまったようだ。つくづく運の良い奴め! しかし、次こそ本当に終わりだっ! ≪疾風剣≫」
お? 今度はさっきよりも少しだけ速い。
初めて見るけど、スキルっていうやつだろうか。
だが、それでも大した事はないので、同じ様に足を引っかけると、
「あっ! おっ、おっ、うわぁっ!」
これまでよりも勢いがあったからか、盛大に転び、近くを流れていた河へ落ちて行った。
「お、おい! ハーヴィっ! くっ……お、覚えてろよっ!」
いや、何を覚えておけと?
河に落ちたハーヴィを追って、他の護衛の男たちも走って何処かへ行くと、
「やはり、貴方が私たちを助けてくれた御方に間違いありません! 護衛に雇っていた者たちが、失礼な事をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
一人残ったクララちゃんに、またもや深々と頭を下げられてしまった。
38
お気に入りに追加
2,078
あなたにおすすめの小説
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる