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第2章 ゴミスキルと魔導少女たち

第78話 偽名のカーディ

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「シャルロット、今の見た? ベルナルド伯爵の周りは重力で遅くなるけど、僕は遅くならなかったんだ」

 クリスを抱きかかえて、レナさんから離れると、先ずはシャルロットに耳打ちする。
 見れば、マリーがベルナルドに攻撃魔法を放っていてくれて、レナさんが防御魔法を使っていたので、追撃されなかったようだ。

「はい、確認しました。本人はともかく、レナも普通通りに動いているので、その辺りに何か秘密がありそうです」

 確かに。言われてみれば、その通りだ。
 ベルナルドから一定の範囲に近付くと、重力魔法の影響を受けるのは、氷の魔銃やクリスで確認済みだけど、それなのにレナさんが普通に動いているのは変だ。
 レナさんだけ除外して、一定範囲に魔法かける……なんて出来るの?
 その逆で、レナさんにだけに魔法を掛けるって事なら出来そうだけど。

「……やはり、消費魔力量がおかしい気がします。重力系の魔法は魔力消費が激しいのですが、あの人の周囲全体に有効となるように魔法を掛けているにしては、少な過ぎます」
「つまり、何か仕掛けがあるって事だよね?」
「えぇ。あの魔力量では、せいぜい数人に魔法かけるのがせいぜいかと」

 ん? という事は、ベルナルド伯爵の範囲全てに重力魔法を有効にしている訳ではなく、現れる前に、予め僕たちに重力魔法を掛けていたって事?
 言われてみれば、ベルナルド伯爵から離れたクリスの動きが未だに遅いし、マリーも少し鈍いような気もする。
 シャルロットは攻撃する意思がないっていっていたから対象外だとして、僕に掛けられていないのは何故?
 でも、氷の魔銃の弾は重力の影響を受けているし。

「さて。シャルロットが協力してくれるという相談は終わったかね? 今のも、追撃しようと思えば出来たんだがね」

 おそらく、これは事実なのだろう。
 動きが鈍くなっている状態で、こちら側にレナさんのスピードに対応出来る訳がない。
 だけど、だからと言ってシャルロットを変な事に協力させる訳にはいかないんだっ!
 再び氷の魔銃に魔力を込めて、撃つ。

「砲撃系は効かぬと言ってやったのに、まだ分からぬのか?」

 これまでと同様に、ベルナルド伯爵へ届く前に氷の弾が地面に落ち……氷の壁を作る。
 先程の氷と合わさり、ベルナルド伯爵の視界を塞いだ瞬間、こっそり出して魔力を込めておいた火の魔銃を撃つ!

「こんなもの……レナ」

 レナさんがベルナルドの指示で氷の壁を蹴り壊したけど、もう遅い。
 火の魔銃は、弾の速度が遅く、射程も短いけど、放物線を描くように飛ぶ。
 既にベルナルドの頭上に火の弾が飛んでいて、そこから落下してくるんだけど、重力によって落下速度が速くなる。

「……何の、音だ!? 何かが飛んで来るような……」

 音のする方向……頭上にレナさんが気付き、チラッと見上げたけど、何も言わない?
 ベルナルドは耳が遠いのか、何かが飛来している事には気付いているみたいだけど、方向が分かって居ない。

「レナ。何か分からんが、防御魔法を……」
「手遅れですよ」

 レナさんがそう言った直後、加速された火炎弾がベルナルドに直撃する!
 魔力はそれほど込めて居ないけど、相手は老人だから……仕方が無いとは言え、やり過ぎたかも!?

「マリー! 治癒魔法の準備を!」
「貴方……まぁいいわ」
「シャルロット! 何か危険な罠とかの検知を!」

 バラバラに吹き飛んだベルナルドとレナさんを見て……レナさんは火炎弾が来る事が分かっていたからか、服が燃えただけで、命の別状は無さそうだ。
 一方のベルナルドは……良かった。生きている。
 一先ずベルナルドに近寄り、先ずは氷の銃を構え、

「まだ戦うつもりはありますか? 無ければ治療しますが、戦いを選ぶのであれば、容赦なく撃ちます」

 先ずは戦意の確認を。
 出来れば、撃ちたくはないけど、回答に依る。

「くっ……ま、待て。待ってくれ。一つ聞かせて欲しい。その水色の魔銃と赤色の魔銃……どうして、そんなに素早く持ち替えられるのだ!? 何故ワシの重力魔法が効かぬのだ……カーディよ」
「……おそらくですが、その魔法って、相手の名前を必要としませんか? だとしたら、カーディは偽名なので」
「くっ……まさかギルドに偽名で登録しているとはな」

 そう言って、ベルナルドがガックリと項垂れた所で……突然その首が鮮血と共に宙を舞った。
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