上 下
81 / 90
第2章 ゴミスキルと魔導少女たち

第75話 闇魔法

しおりを挟む
「シャルロット! 危な……」
「大丈夫です。多数の人が無作為に攻撃していますが、操られている人は全て把握し、その行動予測は全て済んでいます」

 通りを悠然と歩くシャルロットに、剣を持った男が近付いてきたので、慌てて声を掛けたけど、そのまま男がどこかへ通り過ぎて行く。
 よく見れば、直前でシャルロットが足を止め、攻撃を避けると共に男を転ばせていた。
 その後も、短剣を持った少年や、斧を持ったオジサンが来るけれど、その全てを最小限の動きで避けていく。
 その一方で、

「右手の屋根の上に居る男性……クリスさんに向かって矢を放ってきますので、避けるか止めるかしてください」

 シャルロットがそう言った直後、その男が突然弓矢を取り出したので、魔銃を使って凍り付かせる。
 その後も同じようにシャルロットが事前に全てを防ぎ、人の多い通りから、薄暗い裏路地へ。
 そこには身なりの良い格好の男性が居て、シャルロットが詰め寄る。

「貴方ですね。闇魔法を使って、この混乱を引き起こしているのは」
「流石は魔導少女といったところか。こうも簡単に見破られるとはな」

 相手がシャルロットの事を知っているからか、あっさりと認めたので、マリーが間髪入れずに攻撃魔法を放つ。
 だが、

「レナっ!」
「……ウインド・シールド」

 男がレナさんの名を呼び、それに応じたレナさんが風の魔法で男を守る。

「レナさん!?」
「ふん、やっぱりね。その女はずっと怪しいと思っていたのよ。ご主人様に、ずっとちょっかいをかけようとしていたし」
「ち、違うんですっ! 私は……」

 レナさんが何かを言いかけた所で、

「レナ! こっちへ」
「……はい」

 男の指示通り側へ。
 レナさんの表情を見る限り、仕方なく従っているように見えるけど、所有者はベルンハルト伯爵だよね?
 それなのにレナさんが従っているという事は……この人も所有者って事?

「あっ! もしかして、ベルンハルト伯爵の息子!?」
「そういう事だ。だが、のこのことこんな所へやって来たのは愚かだったな! くらえっ! 闇魔法マリオネット! カーディを支配しろっ!」
「カーディさんっ! 精神を集中させて、魔法に抵抗してくださいっ! カーディさんが操られてしまったら、シャルロットさんやマリーさんまで……」

 男が何かの魔法を使い、レナさんが叫び、マリーとクリスが不安そうに僕の顔を見てくる。
 だけど……あれ? 何とも無いんだけど。
 何か魔法を受けた感じが少しもしない。
 なので、心配ないと皆を安心させようとしたんだけど、

「ご主人様っ! ……んっ」
「あぁぁぁっ! マリーっ! どさくさに紛れて、お兄ちゃんに……お兄ちゃんにキスしたぁぁぁっ!」
「ま、マリー? この状況で、一体何をしているのかしら?」

 突然マリーに口を塞がれ、何も言えなくなってしまう。
 少ししてマリーが僕から離れ、

「お、お姉様。違うんです。古来より精神支配系の魔法は、ショック療法で治すのが一般的です。私が治癒系の魔法は得意ではない為、ご主人様にキスをする事で、闇魔法を解除しようと思ったんです!」

 どうして突然キスをしてきたのか説明してくれた。
 なるほど。理由は分かったけど……僕、何も変化が無いように思えるんだけど。

「な……何だと!? ならば、もう一度するまで! 闇魔法マリオネット! カーディを支配っ!」
「じゃ、じゃあ今度はクリスがっ! ……え、えへへ。き、キスしちゃった。起きてるお兄ちゃんにキスしちゃったー!」
「く、クリスさんまでっ! で、でしたら次は私が……ほら、早く闇魔法を使いなさいっ!」

 いや、シャルロットは何を言っているんだよっ!
 あと、クリスの発言も怖いんだけど。
 起きている……って、僕が寝ている時に何かしていたのっ!?
 というか、そもそも闇魔法自体効いてないからね!?
 これ以上、誤解でキスさせてしまう訳にはいかないので、

「待った! さっきから僕に闇魔法は効いていないから!」

 短く宣言し、氷の魔銃を男に向かって撃つ。
 しかし、

「……ウインド・シールド」

 やはりレナさんの防御魔法によって、防がれてしまった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈 
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...