悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

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第54話 寮に帰れないルーシー

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 昼休みに大変な思いをした後、やはり目立っていたからか、午後の授業中に視線を感じつつ……何とか乗り切った。
 うぅ……私はあんな事を頼んでないのにー。
 周囲の視線で、ちょっと疲れたと感じながらも菜園クラブへ。
 今日はクラブを休もうかなと思いつつも、ローランドさんに昨日の事が見られていたと伝えた方が良いかなと思って。
 で、早速ローランドさんに、お昼の事を伝えたんだけど、

「ふーん」

 反応薄っ!
 あれ? 思っていた反応と違うっ!

「えっと、ローランドさん。もう一度言いますが、私との昼食が色んな人に見られていたみたいなんですけど」
「いや、別に気にしてないよ? それに、こちらを見ている者が居たのは気付いていたからね」
「えっ!? そうなんですか!? だったら教えて下さいよー!」
「でも、それを教えたとして、どうもしないだろ?」
「……まぁ確かに」
「だったら、別に言わなくても良い事だから、言う必要もないだろ? それに、ルーシーのメイドさん……テレーズさんも気付いていたよ?」

 て、テレーズさーんっ!
 いやまぁ、ローランドさんの言う通りで、私が見られている事を知っても、何もしないし、出来ないだろうけどさ。

「とりあえず、気にしても仕方ない事だし、貴族は人の前に出るものだからな。慣れるしか無いかな」
「そういうものなんだ……」
「あぁ。まぁとはいえ、授業がある日の昼休みに、食堂を占拠するのはどうかと思うけどな」
「だよね! ケヴィン王子には、他の生徒に迷惑だし、こっちの予定もあるから、あぁいうのはやめてって言っておいたけどね」

 そう言うと……あれ? ローランドさんが一瞬頬を綻ばせた。
 あぁ、ローランドさんも今日の一件で、並ぶ事になったんだよね。
 普段は、ご飯を食べる為に並んだりする必要なんて殆ど無いのに、凄く時間を取られちゃったハズだしさ。
 ひとまず伝える事は伝え……あれ? 話を聞いてもらったからかな?
 精神的に疲れていた気がしたんだけど、元気になったかも。
 なので、いつもの様にローランドさんと作物の事を教えてもらいながら、魔法の練習をして寮へ帰ろうとしたところで、

『ルーシーさん。止まってください』

 突然ユリシアが現れた。

「ユリシア? こんな所で出て来るなんて珍しいわね。どうかしたの?」
『ルーシーの家……寮? の前に、敵意を持った者が複数人居ます』
「えっ!? て、敵意!?」
『はい。流石に寮の中には入っていませんが、このまま歩いて戻るのは得策ではないかと』

 敵意って、ユリシアが注意してくれるくらいだから、私に向けられているのよね?
 ど、どうしよう。相手が誰だか分からないけど、ユリシアの言う通り、転移魔法で帰るべきだよね?
 ……いやいや、転移魔法は見られた時に物凄く面倒な事になっちゃう!
 んー……だったら、寮に帰らず森へ行こう!
 早速歩く方向を変え、体育館裏へ……うん。誰も居ないわね。

「≪ゲート≫」

 周囲に誰も居ない事を確認して森へ。

「お嬢ちゃん。今日はいつもより少し早いな」
「わーい! お姉ちゃんだー!」
「お姉様。どうかされたのですか? 少し、顔色が宜しくないように思えるのですが」

 早速、ダニエルたちに迎えられ……何故か家の前で見張られていたので、こっちへ来た事を話すと、

「お姉様を狙うなんて、許せませんね!」

 ナーシャちゃんがプンプン怒りだす。
 ナーシャちゃんには申し訳ないんだけど、ほっぺを膨らませる姿が可愛いんだけど。

「いやまぁそうなんだけど、とりあえず今は何も起こってないし、相手が何をしようとしていたかも分からない訳で……」
「お姉様をお守りする為、私……ちょっと行って蹴散らしてきます!」
「ダメーっ! 相手が誰かも目的も分からないのに、ナーシャちゃんは危ない事をしちゃダメだから!」

 何処かに向かって走り出しそうなナーシャちゃんを止めると、

「よっしゃ、ほなワイの出番やな!」
「ボクも行くよー!」
「全員落ち着いて! とりあえず、大丈夫だから!」

 ナーシャちゃんは、もしかしたらエルフだってバレない可能性もあるけど、ダニエルとセシルは完全にアウトだからっ!
 下手をすれば、魔物が攻めて来たって大問題になるからーっ!
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