悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

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第49話 男子寮へ

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 プレゼントを購入した翌日。
 今日もテレーズさんとお喋りしたり、片付けしたり、軽くお説教されたりしていると、突然テレーズさんが立ち上がった。

「さて、ルーシー様。参りましょうか」
「え? どこへ?」
「どこって、ローランド様とお約束しているのでしょう?」
「約束はしているけど、早くない? まだお昼前だよ?」
「いえ、遅いくらいだと思いますが。ルーシー様が言い出さないので、見かねて私が声を掛けさせていただいた程ですし」

 遅い……って、学生は全員寮暮らしだから、すぐそこなんだけど。
 まぁ女子寮と男子寮はちょっと距離があるのも事実だけど、幾らなんでも早過ぎじゃないかな?

「ルーシー様。ローランド様とランチを共にされるのですよね? 寮で昼食を共にする訳にもいきませんし、街へ行って何処かのお店に入ると思われます。ですので、早く行かなければご迷惑が掛かってしまいます」
「ま、待って。お礼の品を渡すだけだよ? 数分あれば終わる話だし、そもそも食事を一緒に食べるなんて話はしてないよ!?」
「ですが、お昼にお約束をされているのですよね? それは、男性に昼食のお誘いをしているのと同義です」

 えぇぇぇっ!? そ、そうなの!? に、日本ではそんな事無いはず。と、ときメイの世界では、そういうルールなのっ!?

「ま、待って。ローランドさんとお昼ご飯だなんて、今まで一度も無いんだけど……本当に?」
「えぇ、そういうものです。さぁ参りましょう」

 そう言って、テレーズさんが部屋を出て行く。
 昨日買ったプレゼントを持って、慌てて後をついて行くんだけど、迷う事無く真っすぐ男子寮へ。

「えぇぇぇ……テレーズさん!? どうして男子寮の場所を知っているのっ!」
「ルーシー様が暮らす場所ですよ? 学園内の地図情報は当然把握しております」

 うぅ……テレーズさんが優秀過ぎて逃げ場が無い。
 いえ、ここで明後日の方向へ走って逃げるとか、転移魔法で森へ行けば逃げられるけど、テレーズさんは気にせずローランドさんの所へ行って、ある事ない事言いそうなので、それは悪手過ぎる。
 結局そのまま男子寮へ行き、

「三年のローランドですね? 少々お待ち下さいませ」

 そこの寮長さんへ取次を依頼してしまった。
 あぁぁぁ……男性と食事なんて、どうすれば良いのっ!?
 一緒にご飯を食べた事のある異性なんて、お父さんくらいしか居ないのにっ!
 ……でも、待って。よく考えたら、相手はあのローランドさんだ。
 毎日放課後に菜園クラブで一緒に野菜を作る仲だし、そもそも変に意識する方がおかしいのよ。
 テレーズさんが、お礼の品とかプレゼントだとかって話をするから変に意識してしまっただけであって、普段は何も考えてないもんね。
 その事実に気付き、いつも通りの平常心で待っていると、寮長さんに連れられ、私服姿のローランドさんが現れた。

「お、思っていたより早かったな、ルーシー」
「ローランドさんって、普段そんな感じなんですね」

 なんて言うか、私に語彙が無いから言い表せないけど、一言で示すと……オシャレ。
 黒いシャツとか、銀のネックレスとか、制服姿からは想像出来ないような格好なんだけど。

「あー、お嬢ちゃん。騙されないようにな。コイツは結構だらしなくて、今日はメイドさんが良い感じに仕上げてくれているだけで、普段とは全然……」
「いやその話……わざわざ口にしなくても良くないですか?」
「ふふっ……」

 ローランドさんが口を尖らせて寮長さんに文句を言っているのを見て、思わず笑ってしまった。

「ごめんなさい。私も同じなので……つい」
「はっはっは。ルーシーとは毎日会っているんだから知っているさ。いつもは髪の毛を結ったりしていないしな」
「う……ま、まぁ確かに、髪の毛はしてもらいましたけど、別にそれくらい良いじゃないですかー!」
「後は……馬子にも衣装って言うのかな? 普段は制服ちゃんと着てないよね?」
「え? 毎日制服着てるじゃないですか?」
「……あの制服、コルセット外してないか? あれを付けたままで、こんな動き出来ないだろ……っていう事が何度かあったんだが」
「ば、バレてた……」

 いやだって、コルセットなんて付けてられないし。
 身体がおかしくなっちゃうもん。
 そんな事を考えていたら、

「あのー、お嬢ちゃん。イチャイチャするなら他所でお願い出来ないか? ここは、男子生徒が多く通るからさ」
「い、イチャイチャなんてしてませんっ!」

 寮長さんに呆れられ、顔を隠すようにして後ろを向いたら、テレーズさんが凄くニヤニヤしていた。
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