悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

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第22話 ダニエルのお手伝い

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「ちょっと、ダニエル! それは、私の和食の為に植えたんだけど」
「……まぁ、また生やせばえぇやん。けど、変やな。リンゴや稲は魔力が増えたのに、この大豆は魔力が増えへんねんな」
「そ、そうなんだ。へ、へぇー、不思議だねー」

 やっぱり魔力が増えるのは、木魔法で作り出した種……日本で私が食べていた品種だけなんだ。
 ダニエルやセシルには、私が異世界転生している事は言っていないから、そこはちゃんと隠し通さないとね。

「……って、待って。昨日植えた、私の分の稲も食べたの!?」

 ダニエルの言葉を思い出し、慌てて田んぼを見てみると、水を抜いて乾かす工程に移っていたお米が、半分無くなっていた。

「いや、食べた言うても、ちょっとだけやで?」
「ちょっと……って、めちゃくちゃ食べてるじゃない!」
「お姉ちゃん、ごめんね。ボク、何度も止めたんだけど……」

 いや、セシルは悪くないからね。
 どう考えても悪いのはダニエルなんだけど、ステータスアップアイテムの代償が、ちょーっと大きい気がする。
 ……確か、奈良の鹿ってお煎餅を食べるよね?
 お煎餅があれば良いの? そうしたら、作物を植えたそばから食べなくなるのかな?
 でも、お煎餅もお米から作るよね? ……そのお米が食べられちゃうんだから、どうすれば良いんだろう。

「うぅ……私のお米……」
「わ、悪かったって! 何も泣かんでもえぇやないか」
「な、泣いてなんてないもん」
「いや、そない言うたかて……うん。泣いてへん。泣いてへんな。せや、この稲の畑……田んぼって言うんか。それに、昨日作りかけになってもーた、大根の畑。ワイがどっちも手伝うから、許してーな」

 おかしいな。
 泣くつもりなんて無かったのに、涙が流れてくる。
 いやまぁ、大豆はともかく、田んぼは多少の手間がかかっているから、それがダメになってしまって悲しかったのかもしれやいけど。

「というか畑仕事を手伝うって、何をするつもりなの?」
「いや、お嬢ちゃんが畑を作っている所は見てたからな。要は土魔法で土を柔らかくして、形を整えたらえーんやろ? ワイは植える作業は出来へんけど、土魔法で出来る事やったら、任しとき」

 そう言って、ダニエルがサクサク畑を作っていく。
 いやもう、あっという間っていう言葉がピッタリで、森の木々を間が一面畑になってしまった。

「流石に木を抜いたりする訳にはいかんから、形は綺麗な四角やないけど、お嬢ちゃんの魔法なら問題ないやろ? すぐに育つし」
「そうだけど……それより、ダニエルは魔法が使えるんだ」
「そらせやろ。むしろ、魔法を使われへん奴なんて、居らんやろ」
「そ、そうだね」

 その使えないのが私なんだけどね。
 くっ……セシルもダニエルも魔法が使えるのに。

「あ、もしかして、ダニエルは火魔法が使えたりする?」
「火魔法は流石に無理やな。ワイが使えるのは土魔法だけやし。せやけど、土魔法は便利やで。倉庫魔法っていうのがあってな。容量は制限があるものの、自由に出し入れ出来るしな」
「あー、昨日私の手に木の実を置いたのも、その魔法?」
「せやせや。セシルはんと違って、ワイは何か持ったり出来へんけど、この魔法があれば、その代わりになるからな」

 なるほど。
 しかし、倉庫魔法って、要はアイテムボックスよね?
 ゲームでは定番の、どうやってそんなに沢山アイテム持っているの? ……っていう、あれ。
 後で、ユリアナに使えるかどうか聞いてみよーっと。
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