悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人

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第9話 お米が無ければ、自分で植えれば良いじゃない

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「この辺りなんて、どうかな?」
『良いのではないでしょうか。陽が落ちているのでわかりにくいですが、陽当たりも良いと思いますよ』

 裏の森を少し歩き、世界樹からもダンジョンからも離れた、森の奥へとやってきた。
 此処なら学校からも離れているし、何もないので、誰かがやって来る事もないだろう。

「じゃあ、先ずは稲を植える田んぼ作り……田起こしね」
『田起こし?』
「んー、こっちの世界的に言うと、畑作りなのかな? 要は、稲を植える地面から硬い石を取り除いたり、土を柔らかくしたりするんだよ」

 ……まぁ私も実際にやった事がある訳じゃなくて、ゲームの知識しか無いんだけどさ。
 という訳で、大きな田んぼを作る訳ではないので、一畳分くらいの場所を田んぼにしようと決め、落ちていた石で線を引く。
 よし! この線の中の石を全部取り除こう!
 一畳分だし大した事がないよね……と、早速取り掛かり、あっという間に終わる。
 次は地面を耕すんだけど……

「って、クワとか農具が何も無ーい!」
『ど、どうしたのですか?』
「ここの土を柔らかくしたいんだけど、道具が何も無いから、どうしようかと思って」
『道具……ですか。魔法ではダメなのでしょうか?』
「えっ!? そんな魔法もあるの!?」
『はい。土魔法は幾つか使えますから』

 農具が無くて困っていたら、ユリアナが土魔法で出来ると教えてくれた。
 流石、異世界ね。ゲームの中でさえ大変だった米作りが、魔法で出来ちゃうなんて。

「≪カルティベイト≫」

 教えてもらった魔法を使うと、カッチカチだった地面がフワフワに。
 しかも、地面の中にあった石も粉々になっているみたいで……これ、さっき私が石をどける必要なかったのね。

「じゃあ次は……」
『待ってください。そろそろ、休まれた方が良いのではないですか? 今朝のようにまた起きられなくなりますよ?』
「う……入学式に続いて、授業初日に遅刻は避けたいかも。……今日は帰ろうか」

 無駄に石をどける作業をしてしまい、手も汚れているので、ユリアナの言う通り寮へ戻り、真っ先にお風呂へ。
 やっぱり日本人ならお風呂よねー。
 出来る事なら、自分の部屋にお風呂が欲しいけど、流石にそれは贅沢かな?
 それにしても……暫く湯船の中でのんびりしているけど、誰も入って来ないのね。
 お風呂へ入る習慣がない世界なの?
 でも、それならそもそもお風呂がある訳ないし、どういう事だろうかと考えていたら、突然お風呂の照明が消え、真っ暗になる。

「えぇっ!? な、何が起こっているのっ!? 停電……は、この世界には無さそうだし、オバケ!? 超常現象!? な、何なのーっ!?」

 ひとまず、大急ぎで湯船から出ると、おそるおそる脱衣所へ。
 暫くすると目が慣れて来たので、とりあえず服を来て外へ。
 自室へ戻る為に周囲を警戒しながら廊下を歩いていると、前から灯りを持った人が向かって来る。
 良かった。寮母さんとかかな? きっと私みたいに困っている生徒を助けに来てくれたんだ……と思った所で、突然目の前の人が歩く速度を上げた。
 な、何!? 実は寮母さんじゃなくて、オバケなの!?
 ど、どうしよう! お風呂へ行くからって、世界樹の杖を部屋に置いてきちゃっている。これじゃあ、魔法が使えない!
 逃げなきゃ! と思って、回れ右したところで、背中から声が掛けられる。

「こらっ! 貴女は……一年生のルーシーさんね!? 消灯時間はとっくに過ぎているのに、何をしているのっ!」
「え? 消灯時間?」
「そうよ。早く部屋に戻りなさい! ちなみに、消灯時間後に三回歩いているのを見かけたら、ペナルティとして夕食抜きになりますからね!」

 昨日は窓から入って、すぐに寝ちゃったから知らなかったけど、消灯時間なんてあったんだ。
 寮母さんに平謝りして、急いで自分の部屋へ。
 とりあえず、オバケじゃなくて良かったよ。
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