上 下
295 / 343
第9章 ドワーフ婚姻試練

第292話 大家族

しおりを挟む
「あ、あの……立候補しておいてなんだけど、ほ、本当に私なんかで良いの?」
「もちろん。子供が好きならそれで十分。ただ、親御さんの許可は必要だけどね」

 放課後はアルバイトがあるから、あまり時間が無いという三人目の立候補者、ポピーの家に向かう。
 ポピーとは同じ基礎コースだから顔は知っているけれど、実は殆ど喋った事が無い。
 いつも髪の毛がボサボサで、今も長い前髪で目が隠れている為、ぶっちゃけ表情も読めなかったりする。
 そんな、ほぼ初対面とも言えなくも無いポピーの案内で、物凄く立派な屋敷に着いた。

「凄っ! うちの屋敷と大差ない……というか、こっちの方が大きいかも。王都なのに凄いね」
「あ、いえ。そこは、お隣さんです」
「あ、そうなんだ。ごめんね」

 大豪邸を通り過ぎようとした所で、また大きな屋敷が見えて来る。
 凄いな。これが噂の高級住宅街という奴だろうか。

「ポピーの家はこっちか。それでも十分凄いね」
「いえ、そっちでも無いです。その間です」

 間? 一体何を言っているのだろう? と思いながらも、よく見てみると……あった。両隣が凄過ぎて見落としてしまっていたけれど、普通の……よりも、少し小さな家だ。

「ただいまー。お母さん、お友達がお話ししたいって来てくれているから、急いで来てー」
「え? お姉ちゃんのお友達がママに挨拶? ……ママーっ! 大変、大変っ! お姉ちゃんが彼氏連れて来たーっ!」
「えぇっ!? お姉ちゃんが結婚するの!? 嘘で……うわぁっ! ママーっ! 本当に居たーっ!」

 ポピーのお母さんが現れるまでに、小さな男の子や女の子が代わる代わる現れては、奥へ引っ込んで行く。
 なんて言うか……コントみたいな家だな。

「ごめんね。騒がしくて」
「いや、俺は別に構わないんだが……あ、あの人か?」
「ううん。さっきのはお姉ちゃん。で、柱の陰からチラチラこっちを見ているのが、お母さん。……お母さん、時間が無いから早くしてー」

 ポピーに言われた場所を見てみると、陰からピョコつと小さな顔だけ出して、俺を見てくる女の子が……って、あれがお母さんだと!? 容姿がポピーと大差無いんだが。

『おそらくハーフエルフではないでしょうか。彼女たち少しエルフの魔力を感じます』
(あー、なるほど。そういう事か。あまり変に騒ぎ立てない方が良いかもな)

 俺はエルフもダークエルフも獣人も、女の子であれば全て平等にエロ可愛いと思うが、世の中にはそう思わない人も居るらしい。
 少しして、ポピーのお母さんが、恐る恐る俺の前に出て来た。

「あ、あの……娘とはどういう関係なのでしょうか?」
「お母さん。今日から、私の御主人様になるヘンリー様よ。失礼な事言っちゃダメ」
「待て待て待て。今のはポピーの方がおかしい。なんだ、御主人様って!?」

 ポピーのせいで、お母さんはもちろん、姉妹たちも驚いているじゃないか。

「え? でも、ヘンリー様は私の事を買って下さったんですよね?」
「表現がおかしいってば! 住み込みで働いて欲しいっていうお願いだっ!」
「で、夜のお仕事も混みだから、あんなに高給なんですよね?」
「違うっての。仕事は日中帯だけだし、夜はポピーの部屋で寝れば良いよ」
「それなのに三食ご飯が出て、メイドさんが居る屋敷に住めて、魔法学校の単位も取れて、宮廷魔術士並の給料なんですか!?」
「あぁ。ただ、ここからかなり遠いから、週末しか帰ってこれないけどな」

 既に話していた仕事内容を改めて話して居ると、

「あの……私もその仕事します!」
「お姉ちゃん!? ダメよっ! 私の御主人様なんだからっ!」
「じゃあ、私が……」
「お母さんまでっ!? ヘンリー様。お母さんも了承しているし、もう良いですよね!?」

 ポピーのお姉さんとお母さんまで手を挙げる。
 ただ、今のを了承というのだろうか?

「あの、ポピーのお母さん。構わないですか?」
「えっと、後で変な請求とかされませんよね? 実は結婚詐欺とかじゃないですよね?」
「少なくとも結婚詐欺では無いな。あと、請求なんて無いよ。こっちが給与を支払う側だし」

 一先ず念押し確認もして、ポピーが屋敷に来てくれる事になった。
 次はロレッタの家に行くため、今から最後のアルバイトに行くと言うポピーと一緒に歩き、気になっていた事を聞いてみる。

「あのさ、ポピーって何人家族なんだ?」
「うちの家はお父さんとお母さんが居て、お姉ちゃんや妹、弟が居て……十人家族かな?」
「凄いな。八人姉妹なのか」
「うん。でも、お父さんがお母さんの事を好き過ぎるから、また妹か弟が出来ると思う。下手したら、もうお腹の中に居るかも」
「そ、そうなのか」
「そんなお父さんを見てるから、男の人の行動は良く分かっているつもりだし、夜もオッケーだからねー」

 いやだから違う……って、ポピーが盛大に誤解したまま走り去ってしまった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...