上 下
292 / 343
第9章 ドワーフ婚姻試練

第289話 青空学校始動?

しおりを挟む
 ワープ・ドアを使って屋敷に帰ってくると、三姉妹の残りの二人が駆け寄ってくる。

「あ、戻ってきたっ! おにいちゃん、リオナは!?」
「ん? あぁ、ぐっすり眠っているから、静かにしてやってくれ」
「リオナがこんなにぐっすり眠っているなんて……まさか、食べ物で釣ってエッチな事をしたの!?」

 いや、しないから。
 というか、レオナは素直にリオナの事を心配しているけれど、ルオナは何を心配しているんだよ。
 けど、この三姉妹もだけじゃなく、他にも幼女がいっぱいいて、ノーマが凄く困っていたり、ワンダが一緒になって遊んで居たり、何故かニーナがおっぱいを触られていたり……いいなぁ。俺も混ざりたい……じゃなくて、収拾のつかないカオスな状態となっていた。
 同世代の子供が多いからか、それとも食べ物なんかの心配がないからか、大変な目に遭ったのに塞ぎ込む子供も居らず、元気で何よりなのだが、俺の基礎学校時代でさえ、もう少し落ち着きがあったと思う。

「……って、そうだっ! これだっ!」
「ヘンリーさん、どうかされたのですか?」
「エリザベス……頼みがあるんだ。さっき、リオナがエルフの村へついて来てしまった時に思ったんだけど、この子供たちを一先ず基礎学校に通わせたいんだ」
「なるほど。そうですね、孤児たちもこの家に慣れたみたいですし、そろそろ良いのではないかと」
「ん? その言い方だと、既に準備していたって事なのか?」
「はい。トリスタンさんとパメラさんから頂いた要望を纏め、実現可能だと判断した範囲のみとなりますが」

 さ、流石はエリザベス。
 俺の思考を先読み出来る聖女……凄いな。

「具体的にはどういう状況なんだ?」
「一先ず、想定よりも子供の数が多くなってしまいましたが、基礎学校の校舎となる建物の建築を発注済みです」
「発注? どこかの大工さんにか?」
「はい。エルフさんたちにお願いしております。場所は、この村のすぐそばの森の中です。エルフの樹を使った建物の技術を用いて、必要最低限の伐採で建物が造れるそうです」
「エルフが作る建物か。凄そうだけど、費用がかなり高いんじゃないのか?」
「いえ。メリッサさんのパンケーキの新作のおかげで、かなり安くなっていますよ」

 で、出来る。
 甘い物でエルフたちの心を鷲掴みにして、こちらの要望を通し易くする……エリザベス、おそろしい子。

「一先ず、エルフさんたちに机や椅子を先に作ってもらいましたので、青空教室という形であれば授業は可能かと」
「なるほど。とはいえ、それだと雨が降ると辛いだろ。校舎が完成するまでの仮校舎は俺が何とかするよ」
「何とか出来るのですか? 流石ヘンリーさんですね。ですが、私も困っている事がありまして……」
「あー、それは何となく想像がつく。俺も気にしている事だから。……誰が子供たちの教師をするかだろ?」

 俺の言葉でエリザベスが小さく頷く。
 今この屋敷には、一番幼いユーリヤを始めとして、十歳にも満たない子供が結構居る。
 例えば、リオナみたいなタイプの子はジッとさせるのが難しそうだし、大人しいモニカが居たり、早く働きたいと言うシュゼットが居たり。
 特に、ハザーラー帝国でロリコン魔族を退け、各街をマーガレットと共に回った事で、かなりの孤児を保護したからな。
 正直言って、俺も全員が把握出来ていなかったりする。
 ちなみにあの時点では、俺よりもマーガレットの方が英雄扱いされていて、孤児たちも聖女マーガレットについて行きたいという感じだったので……うん。幼女たちはマーガレットに任せれば良いんじゃないかな。
 割と本気でそんな事を考えていると、

「はっはっは。ヘンリーよ、父を呼んだかな? 低学年担当教師、トリスタン……登壇っ!」
「ヘンリー君が呼んだのは、先生の事よね? マックート村基礎学校初代学長、パメラ……見参っ!」

 どこからともなく、オッサンとオバ……もとい、父さんとパメラが現れた。

「却下。いや、パメラはギリギリ良しとしよう。だけど、父さんはダメだ。絶対に!」
「何故だっ!? 言っておくが、父さんは十歳未満の女の子にあらゆる事を教えられるように、パメラ先生の指導の下、毎日夜遅くまで教育について勉強しているんだぞっ!?」
「子供たちが危険だから。以上」
「何を言う。危険な訳が無いだろう。日々の授業から着替えやトイレまで、幼女たちから目を離さず、常に見守る所存だぞ!?」
「そこは目を離せっ! いや、父さん。冗談で言っている訳じゃなくて、本気でダメな奴だから。マジで皆ドン引きする奴だから」

 見守りだなんてそれっぽい事を言っているが、要は覗き見……というか、もう発想が犯罪者だよ。

「ヘンリーさん。いかがいたしましょうか」

 エリザベスと顔を見合わせ、揃って溜め息を吐いてしまった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです

やのもと しん
ファンタジー
「カイリ、今日からもう来なくていいから」  ある日突然パーティーから追放された俺――カイリは途方に暮れていた。日本から異世界に転移させられて一年。追放された回数はもう五回になる。  あてもなく歩いていると、追放してきたパーティーのメンバーだった女の子、アリシアが付いて行きたいと申し出てきた。  元々パーティーに不満を持っていたアリシアと共に宿に泊まるも、積極的に誘惑してきて……  更に宿から出ると姿を隠した少女と出会い、その子も一緒に行動することに。元王女様で今は国に追われる身になった、ナナを助けようとカイリ達は追手から逃げる。  追いつめられたところでカイリの中にある「神の使徒」の力が覚醒――無能力から世界最強に! 「――わたし、あなたに運命を感じました!」  ナナが再び王女の座に返り咲くため、カイリは冒険者として名を上げる。「厄災」と呼ばれる魔物も、王国の兵士も、カイリを追放したパーティーも全員相手になりません ※他サイトでも投稿しています

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...