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第9章 ドワーフ婚姻試練

第285話 ドワーフの第二の試練

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「ふむ。では大地の神の試練、第一の試練の品……確かに受け取った」

 火酒を手に入れた後、ラウラとユーリヤだけを連れてドワーフの国に居るライマーの所へやって来た。
 相変わらず、ライマーは父親モードでラウラに優しい目を向けているが、周囲にいるドワーフたちがずっと俺を睨んでいる。
 別に嫌われるのも構わないし、襲い掛かられても負ける気はしないが、後で依頼する聖銀の加工は、ちゃんとしてくれよ。

「では、大地の神の試練、第二の試練を……」
「ん? その大瓶の中身を確認しなくて良いのか?」
「もちろん確認は行う。だがそれは今では無い」
「そうなのか? こちらとしては、早めに確認してもらって、ダメならもう一度調達しに行きたいのだが」
「何を言っておる。お主がラウラと共に持って来たこれらの品は、皆で一斉に確認する事と決まっておる。ワシだけ先に味を見るなど、許されんよ」

 ふむ……よく分からんが、それがドワーフの文化だというのであれば仕方がないか。

「では、改めて第二の試練についてだが……二つ目の試練は、最高の肴を用意する事だ!」
「魚? それは生きている状態で持ってくるのか?」
「いや、生はダメだ。まだ日取りが確定していないからな。とにかく旨くて量がある物だ」

 うーん。量がある……っていう事は、大きい魚で、かつ最高に旨い物か。
 ドワーフが魚料理を求めるのは意外だな。
 ……いや、ドワーフだからこそか。土の中に住んでいると、海や川に行く事はない。
 ならば、確かに魚は珍しい物となるだろう。

「分かった。旨い魚なら、何でも良いんだな?」
「もちろんだ。旨い肴なら、何でも良い」

 次の試練の品を聞き、一先ず帰ろうとした所で、

「あー、ラウラや。婿殿には大事にしてもらっているのか?」

 周囲のドワーフから離れ、完全に父親の表情となったライマーが近付いてきた。

「……大丈夫。この前、大勢の前で一生養うって言ってくれた」
「そうか。婿殿……娘を、孫を宜しく頼みますぞ」

 まぁラウラの言った事は嘘ではない。
 アオイの暴走をラウラに止めてもらう時に、そう言ってしまったからな。
 だが孫は無理だろ。この身長差を考えてくれ。
 喉まで言いかけた言葉を何とか飲み込み、空気を読んで、無言で会釈だけして去る事にした。
 一先ずテレポートで屋敷に戻り、さっそく皆に聞いてみる。

「という訳で、聖銀を剣に加工して貰う為に、旨くて大きな魚が必要なんだが、誰か魚に関する情報を持っていないか?」
「……兄たん、少し違う。ラウラちゃんと結婚する為に肴が必要」

 ラウラの言葉を完全にスルーしつつ、皆の意見を待つが、当然誰からも出てこない。
 うーん。魚って事は海や河だけど、大きな魚っていう指定があるから、やっぱり海か?
 海と言えば……あ、そうだ!

「あ、イロナ。海の家では魚料理とかを出して居なかったのか?」
「んー、私はお店に全然関わらせて貰えなかったからねー。でも、お店も村も海のすぐ近くだったし、誰かしら何か知っているかも」
「そうか。じゃあ、エルフの村でダークエルフに聞き込みしてみるか」

 ラウラとユーリヤに、イロナを加えてエルフの村へ移動しようとした所で、

「ヘンリーさん。エルフの村へ行くなら、私も連れて行って貰って宜しいですか?」
「エリザベス? どうしたんだ?」
「いえ、エルフの村へ行く機会があれば、新たな取引商品を開拓したいと考えていましたので」

 エリザベスから申し入れがあった。
 流石はエリザベス。内政を全面的に任せている上に、こんな提案まで。
 早速了承し、エリザベスも連れて行く為、ワープ・ドアを使った所で、

「おにいちゃん、あそんでーっ!」
「あ! ダメだよ!」

 三姉妹の声が聞こえ、小さな何かが俺の胸に飛び込んできた。

「おにいちゃん! あそんで、あそんで、あそんでーっ!」
「えーっと、この感じだと、リオナか」
「そーだよー! ねー、あそぼーっ!」

 リオナがじゃれるようにして、俺の腕にしがみ付く。
 なんて言うか、変身してないけど、犬……だな。
 見た目的にはユーリヤより年上のはずなんだが……あれかな。体力が有り余っているんだよな。
 そうだ! 色々あって忘れていたけど、今こそあの……

「お兄ちゃん? どういう事なの!?」

 ちょっと思い出した事があったんだけど、それを整理する前に、何故か不機嫌そうなルミが現れた。

「ルミ。連絡無しに突然来てしまって悪かったな。ちょっと急ぎの用事があって……」
「お兄ちゃん! ルミという未来のお嫁さんが居るのに、どうして女の子と抱き合ってるの!?」

 ……えーっと、ルミは何を言っているんだろうか。
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