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第9章 ドワーフ婚姻試練
第281話 元人間の魔物
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にんげんだよ……もともとは。
ユーリヤの言葉の意味が一瞬理解出来ずに固まっていると、背後――凍らせた通りの方から来たと思われる魔物が路地から飛び出し、反射的に斬り捨ててしまった。
どう見ても獣――狼みたいな魔物が地面に落ち、その姿がチリのように消える。
「これが、元人間……?」
索敵魔法で魔物の位置は分かるので、ラウラを抱えて路地に居る魔物たちの姿を見に行くと、俺の姿を見て隠れる魔物や、何やら魔物同士で相談している奴ら、俺の事をそっちのけで、ある家の窓からその中を覗き、涙を流す魔物……。
まさか……まさか、この魔物たちは……居なくなった人たちなのか!?
「……ラウラ。悪いが、少しだけ俺に捕まっていてくれ」
「……兄たん?」
「……本気を出す!」
(アオイ! あの空から見下ろしているクソ魔族の所へ俺を飛ばしてくれ!)
『そ、そんな魔法はありませんよっ。浮遊は出来ますが……』
(……いや、分かった。アオイ……少々魔法を連発するけど、頼むぞ)
『集中を要する魔法でなければ大丈夫ですが、何をする気なんですか!?』
「ブレッシング!」
アオイの言葉に応じるよりも、神聖魔法で身体強化を行い、
「テレポート!」
俺が行った事のある場所か、見えている範囲に飛ぶ事が出来るテレポートを使い、ロリコン魔族の背後に移動する。
そのまま全力で愛剣を真横に振るい、
「それは前にも見ましたよ」
「テレポート」
瞬時に俺へと振り返った魔族の更に背後へ移動する。
剣を振るう勢いはそのままにロリコン魔族を斬るが……浅い。
宙に浮いて落下しながらの一撃なので、身体全体の力が使えず、腕力で無理矢理斬っているだけなので本来の斬撃には程遠い程度の威力しかない。
なので、
「ふっ。いくら化物じみた貴方でも、空の上では戦えないようですね」
「テレポート」
再びロリコン魔族の背後、少し上に移動し、思いっきり剣を振り下ろす。
「クッ――」
「テレポート」
身を翻した魔族の更に横へ移動し、肩口に一撃。
「テレポート」
次は胴に一撃。
「テレポート」
次は脚に。
いずれも一撃は浅いが、とにかくこいつを地上に叩き落とす!
本当は背中から生えた羽に一撃を食らわせたいのだが、俺の狙いが分かっているようで、とにかく羽だけは死守されているが、それも時間の問題だろう。
そう考えながら、テレポート斬りを続けていると、
「仕方ありませんね。本来なら……」
「テレポート」
「ちょっ! 喋り始めたら攻撃を止めるのがマナー……」
「テレポート」
「話を聞けぇぇぇっ!」
「テレポート」
「……コール・サーヴァント」
ロリコン魔族が聞いた事のない魔法を使用する。
「私も出来れば使いたく無かったのですが、街が壊れますよ? 良いのですか?」
「レビテーション」
流石に無視できず、テレポート斬りを止めると、
『ヘンリーさん。街の中で無数の攻撃魔法の発動を感じます!』
焦るアオイの言葉が響く。
「何をしたんだ?」
「さっきの様子だと、貴方……いえ、前に私の隠蔽魔法を見破ったそちらのお嬢さんですかね。気付いたんでしょう? 街に居たのが、生きたまま魔物を憑依させられ、魔物に身体を奪われた人間だと」
「な、何をっ!? 何を言っているんだ!?」
「召喚魔法で過去の戦士の霊を呼び出し、ホムンクルスに憑依させる。ホムンクルスには元々意志が無いので、呼び出した戦士の霊が身体を支配するが、その戦士の力を超える事は無い。……だったら、生きた人間に過去の戦士や魔物の霊を憑依させればどうなるか」
「お前……何て事を!」
「意志の力が弱い大半の人間は、魔物に姿を奪われ失敗作となりました。ですが、元の人間の素質なのでしょう。一部は、人間の姿を保ったまま、逆に過去の戦士の力を奪う者も居ましてね。それが、今街に呼び出した数体の人間ですよ」
「貴様っ!」
「おっと。また先ほどの攻撃を繰り返しますか? 続けていれば、いつかは私を倒せるかもしれませんが、その間に街は壊滅しているでしょうね。私も幼女を愛でたいので、非常に残念ですよ」
「……クソッ! テレポートッ!」
空から眺め、最初に目に飛び込んできた魔法を使おうとしている奴の所へ飛ぶと、身体強化された状態で峰打ちを喰らわせる。
……が、普通の人間ならば、気絶どころか最悪死ぬんじゃないかって程の一撃なのに、普通に起き上がってきた。
(アオイ! この人から、魔物を除去する事って出来ないか!?)
『……おそらく、無理ではないかと。可能性があるとしたら、マーガレットさんでは!?』
(確かに! ありがとう、アオイ!)
一縷の望みに賭け、再び目の前の人を吹き飛ばすと、瞬間移動で屋敷へ――マーガレットの部屋へ直接移動した。
ユーリヤの言葉の意味が一瞬理解出来ずに固まっていると、背後――凍らせた通りの方から来たと思われる魔物が路地から飛び出し、反射的に斬り捨ててしまった。
どう見ても獣――狼みたいな魔物が地面に落ち、その姿がチリのように消える。
「これが、元人間……?」
索敵魔法で魔物の位置は分かるので、ラウラを抱えて路地に居る魔物たちの姿を見に行くと、俺の姿を見て隠れる魔物や、何やら魔物同士で相談している奴ら、俺の事をそっちのけで、ある家の窓からその中を覗き、涙を流す魔物……。
まさか……まさか、この魔物たちは……居なくなった人たちなのか!?
「……ラウラ。悪いが、少しだけ俺に捕まっていてくれ」
「……兄たん?」
「……本気を出す!」
(アオイ! あの空から見下ろしているクソ魔族の所へ俺を飛ばしてくれ!)
『そ、そんな魔法はありませんよっ。浮遊は出来ますが……』
(……いや、分かった。アオイ……少々魔法を連発するけど、頼むぞ)
『集中を要する魔法でなければ大丈夫ですが、何をする気なんですか!?』
「ブレッシング!」
アオイの言葉に応じるよりも、神聖魔法で身体強化を行い、
「テレポート!」
俺が行った事のある場所か、見えている範囲に飛ぶ事が出来るテレポートを使い、ロリコン魔族の背後に移動する。
そのまま全力で愛剣を真横に振るい、
「それは前にも見ましたよ」
「テレポート」
瞬時に俺へと振り返った魔族の更に背後へ移動する。
剣を振るう勢いはそのままにロリコン魔族を斬るが……浅い。
宙に浮いて落下しながらの一撃なので、身体全体の力が使えず、腕力で無理矢理斬っているだけなので本来の斬撃には程遠い程度の威力しかない。
なので、
「ふっ。いくら化物じみた貴方でも、空の上では戦えないようですね」
「テレポート」
再びロリコン魔族の背後、少し上に移動し、思いっきり剣を振り下ろす。
「クッ――」
「テレポート」
身を翻した魔族の更に横へ移動し、肩口に一撃。
「テレポート」
次は胴に一撃。
「テレポート」
次は脚に。
いずれも一撃は浅いが、とにかくこいつを地上に叩き落とす!
本当は背中から生えた羽に一撃を食らわせたいのだが、俺の狙いが分かっているようで、とにかく羽だけは死守されているが、それも時間の問題だろう。
そう考えながら、テレポート斬りを続けていると、
「仕方ありませんね。本来なら……」
「テレポート」
「ちょっ! 喋り始めたら攻撃を止めるのがマナー……」
「テレポート」
「話を聞けぇぇぇっ!」
「テレポート」
「……コール・サーヴァント」
ロリコン魔族が聞いた事のない魔法を使用する。
「私も出来れば使いたく無かったのですが、街が壊れますよ? 良いのですか?」
「レビテーション」
流石に無視できず、テレポート斬りを止めると、
『ヘンリーさん。街の中で無数の攻撃魔法の発動を感じます!』
焦るアオイの言葉が響く。
「何をしたんだ?」
「さっきの様子だと、貴方……いえ、前に私の隠蔽魔法を見破ったそちらのお嬢さんですかね。気付いたんでしょう? 街に居たのが、生きたまま魔物を憑依させられ、魔物に身体を奪われた人間だと」
「な、何をっ!? 何を言っているんだ!?」
「召喚魔法で過去の戦士の霊を呼び出し、ホムンクルスに憑依させる。ホムンクルスには元々意志が無いので、呼び出した戦士の霊が身体を支配するが、その戦士の力を超える事は無い。……だったら、生きた人間に過去の戦士や魔物の霊を憑依させればどうなるか」
「お前……何て事を!」
「意志の力が弱い大半の人間は、魔物に姿を奪われ失敗作となりました。ですが、元の人間の素質なのでしょう。一部は、人間の姿を保ったまま、逆に過去の戦士の力を奪う者も居ましてね。それが、今街に呼び出した数体の人間ですよ」
「貴様っ!」
「おっと。また先ほどの攻撃を繰り返しますか? 続けていれば、いつかは私を倒せるかもしれませんが、その間に街は壊滅しているでしょうね。私も幼女を愛でたいので、非常に残念ですよ」
「……クソッ! テレポートッ!」
空から眺め、最初に目に飛び込んできた魔法を使おうとしている奴の所へ飛ぶと、身体強化された状態で峰打ちを喰らわせる。
……が、普通の人間ならば、気絶どころか最悪死ぬんじゃないかって程の一撃なのに、普通に起き上がってきた。
(アオイ! この人から、魔物を除去する事って出来ないか!?)
『……おそらく、無理ではないかと。可能性があるとしたら、マーガレットさんでは!?』
(確かに! ありがとう、アオイ!)
一縷の望みに賭け、再び目の前の人を吹き飛ばすと、瞬間移動で屋敷へ――マーガレットの部屋へ直接移動した。
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