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第9章 ドワーフ婚姻試練
第276話 罠
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アタランテ、ヴィクトリーヌ、ラウラ、そしてユーリヤと共にモニカの半壊した家へと戻ってきた。
一夜開け、そろそろ帝都に着いて、奪われた火酒を帝国軍から取り返したい……そんな想いと共に戻ってきたのだが、
「あら? 貴方……ちょっと周辺の雰囲気が違わない?」
アタランテが半壊した家を出た途端に、困惑した声を上げる。
「何か変わった所でもあるのか?」
「えぇ。何だか瓦礫が減っているような気がするんだけど」
アタランテに言われて周囲を見渡してみると、確かに昨日はもっと瓦礫が多かった気がする。
モニカの家が半壊しているのは変わらないが、瓦礫の半分以上は片付けられ、残りが未だに放置されたままだ。
『ヘンリーさん。ヘンリーさんが生み出した槍で壊された壁の破片だけが片付いていますね。昨日感じた魔力がここになくて、上に感じます』
(上!? あ……壊れた壁が直ってる。俺の身長の軽く倍以上はある、随分と高くて分厚い壁だったのに、一晩で直すなんて、なかなか凄いじゃないか)
『んー、これは魔法で直してるんじゃないですかね? ヘンリーさんとは違う魔力を感じます』
魔法で壁を直す? それは、何度か使った部分的に時間を戻す魔法の事だろうか。
あんな凄い魔法が使える者が帝国軍に居るのか。
だけど、その割に戦車だなんて古代遺産みたいな物を使っているし、よく分からないな。
そんな事を考えていると、隣の家から昨日のお婆さんが出てきたので、話を聞いてみる。
「すまん。あの壁をどうやって直していたか知っているか?」
「あぁ、あれは帝都から、軍の偉い人が朝早くにやってきて、魔法で直していたね」
「やはり魔法なのか」
「そうだね。次は戦車だ……と言っていたので、もしかしたら、まだ何処かに居るのかもしれないから、気を付けた方が良いよ。軍に関わるとロクな事がないからね」
そりゃそうだ。あの時代錯誤のモヒカン軍に関わるつもりは無い。だけど、帝国軍の本拠地に行って、こっそり火酒を貰うつもりなので、その敏腕魔術師? が、どれくらいの腕を持っているのかは気になる所だ。
「よし。ちょっとだけ覗きに行こう」
「……ヘンリー殿。覗かなくても、我はいくらでも見せるのだが」
「いや、魔法の話だから。俺をどういう目で……いや、やっぱり言わなくていいや」
アタランテがジト目、ヴィクトリーヌが何を今更……みたいな目を向けて来たので、一旦忘れ、昨日壊した戦車が遠目に見える場所へと移動する。
物陰からこっそり見ていると、帝国軍たちと一緒に居る、モヒカンじゃない男が居た。
『ヘンリーさん。これ、マズいかもしれません』
(ん? 何か分かったのか?)
『えぇ。あの男性……魔法は発動させているのですが、行使する魔力と、自身が持つ魔力の波長が合っていませんね』
(どういう事だ?)
『今更使われているのは錬金魔法の一つ、リペアという修理魔法なのですが、当然ながら錬金魔法は人間が行使する為の魔法です』
(んん? それってつまり、アオイが言いたいのは……)
『お察しの通り、あの男性は人間では無いです。おそらく……魔族』
――ッ!
アオイの言葉を聞き、皆へ無言のまま下がるように合図を送ったのだが、
『ヘンリーさん! 気付かれてます! おそらく、あの壁や戦車を壊した者――ヘンリーさんをおびき寄せる為の罠ですっ!』
帝国軍がこっちに向かって走ってくる。
くっ! 帝国軍だけなら軽く蹴散らせるだろうが、魔族が居るのは想定外だっ!
「皆、一旦下がろう。ヴィクトリーヌ! 先頭を任せた! 最後尾は俺が……」
「ヘンリー殿! 既に囲まれているぞ!」
「あの魔法はフェイクだったんだ! あの男は俺が相手をする。ヴィクトリーヌとアタランテは、モヒカンたちを頼む!」
狭い路地で挟み撃ちにされ、最悪テレポートが使える事がバレる事も覚悟しつつ、具現化魔法で愛剣を生み出す。
先ずは正面に迫るモヒカンに気を失ってもらおうと、峰打ちで殴りつけ……避けられた!?
「にーに。このひとたち、にんげんじゃないよー」
えっ!? あの男だけじゃなく、このモヒカンたちも!?
ユーリヤの言葉で慌てて神聖魔法を使い、俺とアタランテ、ヴィクトリーヌの身体能力を強化する。
「らぁっ!」
本気で攻撃をすると、流石に避けられないようで、目の前のモヒカンが派手に吹き飛んだ。
人間相手に本気――神聖魔法による強化込みの――を出すのは気が引けるが、人間じゃないなら問題無い。
そして、ユーリヤの言葉を裏付けるように、吹き飛んだモヒカンの一人が溶けるようにして跡形も無く消える。
うむ。間違いなく人間じゃないな。
先ずはモヒカンを殲滅だっ!
一夜開け、そろそろ帝都に着いて、奪われた火酒を帝国軍から取り返したい……そんな想いと共に戻ってきたのだが、
「あら? 貴方……ちょっと周辺の雰囲気が違わない?」
アタランテが半壊した家を出た途端に、困惑した声を上げる。
「何か変わった所でもあるのか?」
「えぇ。何だか瓦礫が減っているような気がするんだけど」
アタランテに言われて周囲を見渡してみると、確かに昨日はもっと瓦礫が多かった気がする。
モニカの家が半壊しているのは変わらないが、瓦礫の半分以上は片付けられ、残りが未だに放置されたままだ。
『ヘンリーさん。ヘンリーさんが生み出した槍で壊された壁の破片だけが片付いていますね。昨日感じた魔力がここになくて、上に感じます』
(上!? あ……壊れた壁が直ってる。俺の身長の軽く倍以上はある、随分と高くて分厚い壁だったのに、一晩で直すなんて、なかなか凄いじゃないか)
『んー、これは魔法で直してるんじゃないですかね? ヘンリーさんとは違う魔力を感じます』
魔法で壁を直す? それは、何度か使った部分的に時間を戻す魔法の事だろうか。
あんな凄い魔法が使える者が帝国軍に居るのか。
だけど、その割に戦車だなんて古代遺産みたいな物を使っているし、よく分からないな。
そんな事を考えていると、隣の家から昨日のお婆さんが出てきたので、話を聞いてみる。
「すまん。あの壁をどうやって直していたか知っているか?」
「あぁ、あれは帝都から、軍の偉い人が朝早くにやってきて、魔法で直していたね」
「やはり魔法なのか」
「そうだね。次は戦車だ……と言っていたので、もしかしたら、まだ何処かに居るのかもしれないから、気を付けた方が良いよ。軍に関わるとロクな事がないからね」
そりゃそうだ。あの時代錯誤のモヒカン軍に関わるつもりは無い。だけど、帝国軍の本拠地に行って、こっそり火酒を貰うつもりなので、その敏腕魔術師? が、どれくらいの腕を持っているのかは気になる所だ。
「よし。ちょっとだけ覗きに行こう」
「……ヘンリー殿。覗かなくても、我はいくらでも見せるのだが」
「いや、魔法の話だから。俺をどういう目で……いや、やっぱり言わなくていいや」
アタランテがジト目、ヴィクトリーヌが何を今更……みたいな目を向けて来たので、一旦忘れ、昨日壊した戦車が遠目に見える場所へと移動する。
物陰からこっそり見ていると、帝国軍たちと一緒に居る、モヒカンじゃない男が居た。
『ヘンリーさん。これ、マズいかもしれません』
(ん? 何か分かったのか?)
『えぇ。あの男性……魔法は発動させているのですが、行使する魔力と、自身が持つ魔力の波長が合っていませんね』
(どういう事だ?)
『今更使われているのは錬金魔法の一つ、リペアという修理魔法なのですが、当然ながら錬金魔法は人間が行使する為の魔法です』
(んん? それってつまり、アオイが言いたいのは……)
『お察しの通り、あの男性は人間では無いです。おそらく……魔族』
――ッ!
アオイの言葉を聞き、皆へ無言のまま下がるように合図を送ったのだが、
『ヘンリーさん! 気付かれてます! おそらく、あの壁や戦車を壊した者――ヘンリーさんをおびき寄せる為の罠ですっ!』
帝国軍がこっちに向かって走ってくる。
くっ! 帝国軍だけなら軽く蹴散らせるだろうが、魔族が居るのは想定外だっ!
「皆、一旦下がろう。ヴィクトリーヌ! 先頭を任せた! 最後尾は俺が……」
「ヘンリー殿! 既に囲まれているぞ!」
「あの魔法はフェイクだったんだ! あの男は俺が相手をする。ヴィクトリーヌとアタランテは、モヒカンたちを頼む!」
狭い路地で挟み撃ちにされ、最悪テレポートが使える事がバレる事も覚悟しつつ、具現化魔法で愛剣を生み出す。
先ずは正面に迫るモヒカンに気を失ってもらおうと、峰打ちで殴りつけ……避けられた!?
「にーに。このひとたち、にんげんじゃないよー」
えっ!? あの男だけじゃなく、このモヒカンたちも!?
ユーリヤの言葉で慌てて神聖魔法を使い、俺とアタランテ、ヴィクトリーヌの身体能力を強化する。
「らぁっ!」
本気で攻撃をすると、流石に避けられないようで、目の前のモヒカンが派手に吹き飛んだ。
人間相手に本気――神聖魔法による強化込みの――を出すのは気が引けるが、人間じゃないなら問題無い。
そして、ユーリヤの言葉を裏付けるように、吹き飛んだモヒカンの一人が溶けるようにして跡形も無く消える。
うむ。間違いなく人間じゃないな。
先ずはモヒカンを殲滅だっ!
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