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第9章 ドワーフ婚姻試練
第264話 違和感
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「あれが国境か」
ユーリヤをおんぶしたまま、街道を高速移動する事暫し。
ヴァロン王国の北東部で高い塀が建てられている場所に到着した。
途中の街でユーリヤに甘い物をねだられ、休憩と情報収集を兼ねて店の人にも聞いたので、間違いないだろう。
なので、この辺りから街道を逸れ、真っ直ぐ東へ――道なき草むらへと入って行く。
「ここら辺で良いかな」
徐々に樹が増え、草むらから林に変わり始めた所で、再び進路を北東へ。
木々を避けながら林の中を進んで行くと、先程の高い塀が現れた。
「レビテーション」
風の精霊魔法で宙に浮かぶと、ふよふよと塀を超え、静かに向こう側へと着地する。
予想通り楽勝で入国完了だ。
……とはいえ、バレたら非常にマズい方法なのが難点だが、酒を買って帰るだけだし、すぐ戻れば大丈夫だろう。
先程塀を越えた際に、北の方角に街が見えたから、一先ずそこまで行ったら、今日は帰るか。
「ユーリヤ。さっき空を飛んだ時に街が見えただろ?」
「うん、みえたー!」
「あそこまで散歩したら、帰ろうか」
「はーい! ユーリヤ、おさんぽだいすきー!」
何と言うか、これを普通の散歩だと思ってしまうと大変な事になりそうだが、まぁユーリヤには、おいおい色々と教えて行こう。
じゃあ、先ずは林から街道へ戻ろうと思うのだが、ヴァロン王国と塀を隔てただけで同じ林だというのに、こちら側には随分と魔物が多いようだ。
常時使用している索敵魔法に魔物がひっかかりまくる。
というか、今も目の前にある樹の裏に魔物が潜んでいるので、具現化魔法で愛剣を作りだすと、
「とりゃっ!」
太めの樹を貫き、反対側に居た魔物を突き刺す。
すぐさま剣を引き戻し、回り込んで止めを……って、これだけで倒れるのか。
魔物らしからず、樹に隠れたりするから知能がある賢い魔物――即ち強い魔物だと判断したのだが、そうでもなかったみたいだ。
まぁ人間だって、魔法を使うタイプだと肉体的に弱かったりするので、今の魔物もそういうタイプだったのだろう。
気にせず再び歩みを進めていると、今度は二体同時に攻撃してくるらしい。
左右それぞれの樹の影に、魔物が一体ずつ隠れている。
面倒なので、剣を手にしたまま気付かぬ振りをして歩いて行くと、予想通り同時に飛びかかってきた。
その二体を同時に斬り捨て……あ、一撃で終わった。
んー……何か違和感があるんだよな。
『ヘンリーさん。違和感と言いますと?』
(いや、何て言うかさ。樹に隠れるとか、同時に飛びかかってくるとか、魔物にしては高度な攻撃をしかけてくるくせに、弱いんだよな)
『あの、それは、魔物が弱いんじゃなくて、ヘンリーさんが強すぎるだけでは?』
(んー、それも否定はしないけど、それでも弱い。たぶん、ニーナでも楽勝だと思う)
『えっと、ヘンリーさんの基準がどんどんおかしくなってますけど、ニーナさんも十分お強いですからね? まぁ流石に魔王と戦った勇者程ではありませんが』
アオイは俺が強すぎるからだと言うけれど、やっぱり違和感が消えない。
そんな事を考えていると、索敵魔法で検知している魔物たちが変な動きを始めた。
(アオイ。魔物たちが集まり始めたんだが)
『そうみたいですね。面倒でしたら、少し進路を変えますか?』
(んー、いや、あえてこのまま行こう。せっかく固まってくれているんだ。纏めて倒してしまおう)
雑魚はどれだけ集まっても雑魚。
索敵魔法で検知している限りでは、約三十体くらいの魔物が居るが、先程の感じだと大丈夫だろう。
そのまま進路を変えずに進んで行くと、今度は樹に隠れたりせず、「待って居たぞ」とでも言いたげに、三十体の魔物が堂々と待ち構えていた。
人間にも居るよな、こういう奴って。
自分たちの数が相手よりも遥かに多い時、自分たちが強くなったと勘違いしてしまうっていうさ。
そして、
――UWHOOOOO
魔物の大群が一斉に俺目がけて迫ってきた。
熊みたいな魔物に、虎みたいな魔物。それから大きな昆虫みたいな魔物など、見た目がバラバラな魔物たちを一刀両断で斬り捨てて行く。
すると、最初の勢いはどこへ行ったのか、七割くらいを倒した所で、残りの三割が足を止め、散り散りに逃げ始めた。
だが、残念ながら俺にケンカを売ったのだから、逃がすつもりは無い。
「ストーン・ショット」
土の精霊魔法で大きな岩を飛ばし、逃げる魔物たちを片っ端から倒して行ったのだが……うーん、やっぱり弱い。
こんなに弱い魔物だと、錬金魔法の素材に使うとしても、大した価値が……って、あれ? そういや、倒した魔物の死骸が無いぞ?
普段は魔物を倒した後は、空間収納に放り込んで、後ほど素材に分けるのに、そもそもの死骸が消えている。
「……一体、どうなっているんだ?」
死骸がどこに行ったのか気にはなる所だが、周囲の魔物を全滅させて林を抜けたので、街道に出て、先程見た街まで走る事にした。
ユーリヤをおんぶしたまま、街道を高速移動する事暫し。
ヴァロン王国の北東部で高い塀が建てられている場所に到着した。
途中の街でユーリヤに甘い物をねだられ、休憩と情報収集を兼ねて店の人にも聞いたので、間違いないだろう。
なので、この辺りから街道を逸れ、真っ直ぐ東へ――道なき草むらへと入って行く。
「ここら辺で良いかな」
徐々に樹が増え、草むらから林に変わり始めた所で、再び進路を北東へ。
木々を避けながら林の中を進んで行くと、先程の高い塀が現れた。
「レビテーション」
風の精霊魔法で宙に浮かぶと、ふよふよと塀を超え、静かに向こう側へと着地する。
予想通り楽勝で入国完了だ。
……とはいえ、バレたら非常にマズい方法なのが難点だが、酒を買って帰るだけだし、すぐ戻れば大丈夫だろう。
先程塀を越えた際に、北の方角に街が見えたから、一先ずそこまで行ったら、今日は帰るか。
「ユーリヤ。さっき空を飛んだ時に街が見えただろ?」
「うん、みえたー!」
「あそこまで散歩したら、帰ろうか」
「はーい! ユーリヤ、おさんぽだいすきー!」
何と言うか、これを普通の散歩だと思ってしまうと大変な事になりそうだが、まぁユーリヤには、おいおい色々と教えて行こう。
じゃあ、先ずは林から街道へ戻ろうと思うのだが、ヴァロン王国と塀を隔てただけで同じ林だというのに、こちら側には随分と魔物が多いようだ。
常時使用している索敵魔法に魔物がひっかかりまくる。
というか、今も目の前にある樹の裏に魔物が潜んでいるので、具現化魔法で愛剣を作りだすと、
「とりゃっ!」
太めの樹を貫き、反対側に居た魔物を突き刺す。
すぐさま剣を引き戻し、回り込んで止めを……って、これだけで倒れるのか。
魔物らしからず、樹に隠れたりするから知能がある賢い魔物――即ち強い魔物だと判断したのだが、そうでもなかったみたいだ。
まぁ人間だって、魔法を使うタイプだと肉体的に弱かったりするので、今の魔物もそういうタイプだったのだろう。
気にせず再び歩みを進めていると、今度は二体同時に攻撃してくるらしい。
左右それぞれの樹の影に、魔物が一体ずつ隠れている。
面倒なので、剣を手にしたまま気付かぬ振りをして歩いて行くと、予想通り同時に飛びかかってきた。
その二体を同時に斬り捨て……あ、一撃で終わった。
んー……何か違和感があるんだよな。
『ヘンリーさん。違和感と言いますと?』
(いや、何て言うかさ。樹に隠れるとか、同時に飛びかかってくるとか、魔物にしては高度な攻撃をしかけてくるくせに、弱いんだよな)
『あの、それは、魔物が弱いんじゃなくて、ヘンリーさんが強すぎるだけでは?』
(んー、それも否定はしないけど、それでも弱い。たぶん、ニーナでも楽勝だと思う)
『えっと、ヘンリーさんの基準がどんどんおかしくなってますけど、ニーナさんも十分お強いですからね? まぁ流石に魔王と戦った勇者程ではありませんが』
アオイは俺が強すぎるからだと言うけれど、やっぱり違和感が消えない。
そんな事を考えていると、索敵魔法で検知している魔物たちが変な動きを始めた。
(アオイ。魔物たちが集まり始めたんだが)
『そうみたいですね。面倒でしたら、少し進路を変えますか?』
(んー、いや、あえてこのまま行こう。せっかく固まってくれているんだ。纏めて倒してしまおう)
雑魚はどれだけ集まっても雑魚。
索敵魔法で検知している限りでは、約三十体くらいの魔物が居るが、先程の感じだと大丈夫だろう。
そのまま進路を変えずに進んで行くと、今度は樹に隠れたりせず、「待って居たぞ」とでも言いたげに、三十体の魔物が堂々と待ち構えていた。
人間にも居るよな、こういう奴って。
自分たちの数が相手よりも遥かに多い時、自分たちが強くなったと勘違いしてしまうっていうさ。
そして、
――UWHOOOOO
魔物の大群が一斉に俺目がけて迫ってきた。
熊みたいな魔物に、虎みたいな魔物。それから大きな昆虫みたいな魔物など、見た目がバラバラな魔物たちを一刀両断で斬り捨てて行く。
すると、最初の勢いはどこへ行ったのか、七割くらいを倒した所で、残りの三割が足を止め、散り散りに逃げ始めた。
だが、残念ながら俺にケンカを売ったのだから、逃がすつもりは無い。
「ストーン・ショット」
土の精霊魔法で大きな岩を飛ばし、逃げる魔物たちを片っ端から倒して行ったのだが……うーん、やっぱり弱い。
こんなに弱い魔物だと、錬金魔法の素材に使うとしても、大した価値が……って、あれ? そういや、倒した魔物の死骸が無いぞ?
普段は魔物を倒した後は、空間収納に放り込んで、後ほど素材に分けるのに、そもそもの死骸が消えている。
「……一体、どうなっているんだ?」
死骸がどこに行ったのか気にはなる所だが、周囲の魔物を全滅させて林を抜けたので、街道に出て、先程見た街まで走る事にした。
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