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第7章 マックート村の新領主
第217話 聖女エリザベスの加護
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「あの、こちらの女性は……?」
「御婦人。私は修道女として、神に仕える者です。少しだけ、お身体を拝見させてくださいな」
「え……は、はい」
エリザベスがエリーのお母さんの傍へ寄ると、静かにそっと手をかざす。
「……分かりました。では、すみませんが調理場をお借り出来ますでしょうか?」
「え、えぇ。それは構わないのですが、最近はあまり食欲が……」
「大丈夫ですよ。では、そちらのお嬢さんに、お手伝いしていただきましょう」
そう言って、エリザベスがエリーを指名し、共にキッチンへと足を運ぶ。
せっかくなので、俺も見せてもらおうと思い、エリーのお母さんを除いて、ぞろぞろと後について行く。
「本来は、一からパンを作るのがベストなのですが、お嬢さんのお母様を労わる気持ちでカバー出来るかと思います」
「えっと、とりあえずエリーはお母さんの事、大好きだよっ! あとハー君や、イロナちゃんもー!」
「はい。とっても素敵な心だと思います。では、何かお母様の為に朝ご飯を作っていただけますか? パンと身体に良さそうなスープが良さそうですね」
「任せてっ! エリー、毎日ご飯作ってるから、料理は上手だもん。ね、ハー君」
おぉっと。どうしてそこで俺に話を振るんだ? と思ったけど、よく考えたら、一時期の俺は、毎日の様にエリーの手料理を食べてたな。
「あぁ、エリーの料理は美味しいよな」
「良いですね。お二人が互いの事を想う気持ちにより、しっかり愛が育まれていますね」
「え? えへへー。そうだねー。エリーはハー君の事が一番大好きだからねー!」
えーっと、これは何の話だ?
エリザベスの言葉でエリーは俺にはにかんだ笑顔を向け、マーガレットはニヤニヤしながら俺を見てくる。
一方で、イロナは何やらメモを取っていて、ユーリヤはキョトンとしながら、「にーに。あいってなにー?」と難しい事を聞いてくる。
愛って何なんだ? むしろ俺が知りたいんだが。
『ふっ……お子ちゃまには難しかったようですね』
(じゃあ、アオイが教えてくれよ。愛って何だ?)
『……あ、見てください。何だか、美味しそうな料理が出来てきていますよ!』
(誤魔化すなっ!)
しかし、エリザベスが力を貸すとか言いながら、ただエリーの傍で眺めているだけなのだが、一体何をしているのだろうか。
時折、何かエリーに伝えているが……っと、そうこうしている内に、エリーのスープが完成した。
「エリザベスさんに教えてもらいながら、少し薄味のコンソメスープを作って、柔らかい白パンを用意したよー」
「お見事です。では、早速お母様に召し上がっていただきましょう。ただ、一点だけ……そのパンは、お嬢さんが作ったスープに浸して食べてもらってください」
「はーい!」
えっ、それだけ? そんなので本当に良いのか? エリザベスは魔法とか何も使ってないよね?
美味しそうではあるけれど、ただのパンとスープだけだし、結構量が多くないか? お母さんは食欲が無いって言っていたんだが。
だが俺の心配を余所に、エリーがそのままお母さんの所へ食事を運んで行く。
「お母さーん。ご飯作ったから食べてー!」
一先ず、大勢に囲まれて一人で食事するのは嫌だろうし、エリー一人で寝室へ……って、エリザベスも部屋の外に居るけど、良いのか?
「エリザベス。中に居なくても良いのか?」
「はい。微力ながら、私の持つ加護の効果が現れるかと」
加護……そうか。そういえば、マーガレットも魔法とは違う、聖女の加護を持って居たな。
マーガレットは毒や幻覚が効かないのと、悪魔に対して強いというか、暴走するというか……でも、エリザベスの加護は何だ?
エリーがエリザベスの傍で料理をしていただけなんだが。
「ハー君、ハー君っ! 来てっ!」
エリザベスの話を聞こうとした所で、寝室の中から俺を呼ぶ声が響き、慌てて部屋に飛び込むと、
「エリー! ヘンリー君! 凄いわっ! 身体から元気が溢れ出て来るみたいよっ! こうしちゃいられないわっ! 研究……研究よっ!」
「え? 何これ、どういう事? 何があったんだ?」
「えっと、お母さんがエリーの作った料理を一口食べて……そこから美味しい美味しいって、凄い勢いで完食して、こうなったの」
全身から淡い光を放つお母さんが、ベッドから降り、白衣を着ようとしていた。
「エリザベス。さっき言ってた加護って、どういう効果なんだ?」
「私は、パン屋の加護を持っております。私の近くでパンやパンを使った料理を作ると、味や栄養に優れたパンが出来あがり、滋養強壮にも効くのです」
「え、何その加護。というか、パン屋って……パンしかダメなのか?」
「基本的にはそうですね。ですから、パンを焼くと最も得られる効果が高いのですが、パンや穀物を使った料理でも加護は得られるようです」
「そ、そうか。けど何にせよ、ありがとう。エリーのお母さんは、これで大丈夫……かな?」
エリザベスは、王女らしからぬ、何とも使い所が限定的過ぎる加護を持つ聖女だった。
「御婦人。私は修道女として、神に仕える者です。少しだけ、お身体を拝見させてくださいな」
「え……は、はい」
エリザベスがエリーのお母さんの傍へ寄ると、静かにそっと手をかざす。
「……分かりました。では、すみませんが調理場をお借り出来ますでしょうか?」
「え、えぇ。それは構わないのですが、最近はあまり食欲が……」
「大丈夫ですよ。では、そちらのお嬢さんに、お手伝いしていただきましょう」
そう言って、エリザベスがエリーを指名し、共にキッチンへと足を運ぶ。
せっかくなので、俺も見せてもらおうと思い、エリーのお母さんを除いて、ぞろぞろと後について行く。
「本来は、一からパンを作るのがベストなのですが、お嬢さんのお母様を労わる気持ちでカバー出来るかと思います」
「えっと、とりあえずエリーはお母さんの事、大好きだよっ! あとハー君や、イロナちゃんもー!」
「はい。とっても素敵な心だと思います。では、何かお母様の為に朝ご飯を作っていただけますか? パンと身体に良さそうなスープが良さそうですね」
「任せてっ! エリー、毎日ご飯作ってるから、料理は上手だもん。ね、ハー君」
おぉっと。どうしてそこで俺に話を振るんだ? と思ったけど、よく考えたら、一時期の俺は、毎日の様にエリーの手料理を食べてたな。
「あぁ、エリーの料理は美味しいよな」
「良いですね。お二人が互いの事を想う気持ちにより、しっかり愛が育まれていますね」
「え? えへへー。そうだねー。エリーはハー君の事が一番大好きだからねー!」
えーっと、これは何の話だ?
エリザベスの言葉でエリーは俺にはにかんだ笑顔を向け、マーガレットはニヤニヤしながら俺を見てくる。
一方で、イロナは何やらメモを取っていて、ユーリヤはキョトンとしながら、「にーに。あいってなにー?」と難しい事を聞いてくる。
愛って何なんだ? むしろ俺が知りたいんだが。
『ふっ……お子ちゃまには難しかったようですね』
(じゃあ、アオイが教えてくれよ。愛って何だ?)
『……あ、見てください。何だか、美味しそうな料理が出来てきていますよ!』
(誤魔化すなっ!)
しかし、エリザベスが力を貸すとか言いながら、ただエリーの傍で眺めているだけなのだが、一体何をしているのだろうか。
時折、何かエリーに伝えているが……っと、そうこうしている内に、エリーのスープが完成した。
「エリザベスさんに教えてもらいながら、少し薄味のコンソメスープを作って、柔らかい白パンを用意したよー」
「お見事です。では、早速お母様に召し上がっていただきましょう。ただ、一点だけ……そのパンは、お嬢さんが作ったスープに浸して食べてもらってください」
「はーい!」
えっ、それだけ? そんなので本当に良いのか? エリザベスは魔法とか何も使ってないよね?
美味しそうではあるけれど、ただのパンとスープだけだし、結構量が多くないか? お母さんは食欲が無いって言っていたんだが。
だが俺の心配を余所に、エリーがそのままお母さんの所へ食事を運んで行く。
「お母さーん。ご飯作ったから食べてー!」
一先ず、大勢に囲まれて一人で食事するのは嫌だろうし、エリー一人で寝室へ……って、エリザベスも部屋の外に居るけど、良いのか?
「エリザベス。中に居なくても良いのか?」
「はい。微力ながら、私の持つ加護の効果が現れるかと」
加護……そうか。そういえば、マーガレットも魔法とは違う、聖女の加護を持って居たな。
マーガレットは毒や幻覚が効かないのと、悪魔に対して強いというか、暴走するというか……でも、エリザベスの加護は何だ?
エリーがエリザベスの傍で料理をしていただけなんだが。
「ハー君、ハー君っ! 来てっ!」
エリザベスの話を聞こうとした所で、寝室の中から俺を呼ぶ声が響き、慌てて部屋に飛び込むと、
「エリー! ヘンリー君! 凄いわっ! 身体から元気が溢れ出て来るみたいよっ! こうしちゃいられないわっ! 研究……研究よっ!」
「え? 何これ、どういう事? 何があったんだ?」
「えっと、お母さんがエリーの作った料理を一口食べて……そこから美味しい美味しいって、凄い勢いで完食して、こうなったの」
全身から淡い光を放つお母さんが、ベッドから降り、白衣を着ようとしていた。
「エリザベス。さっき言ってた加護って、どういう効果なんだ?」
「私は、パン屋の加護を持っております。私の近くでパンやパンを使った料理を作ると、味や栄養に優れたパンが出来あがり、滋養強壮にも効くのです」
「え、何その加護。というか、パン屋って……パンしかダメなのか?」
「基本的にはそうですね。ですから、パンを焼くと最も得られる効果が高いのですが、パンや穀物を使った料理でも加護は得られるようです」
「そ、そうか。けど何にせよ、ありがとう。エリーのお母さんは、これで大丈夫……かな?」
エリザベスは、王女らしからぬ、何とも使い所が限定的過ぎる加護を持つ聖女だった。
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