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第7章 マックート村の新領主
第213話 マックート村に足りないもの
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「という訳で、俺がこの村の新たな領主だって事は分かっただろ?」
「……一応は」
「じゃあ、この村の情報を教えてくれないか?」
俺、ユーリヤ、ジェーン、そしてナタリーの四人で屋敷から冒険者ギルドへ戻り、改めて情報開示を依頼する。
しかし、ナタリーは未だに懐疑的な表情を浮かべているが。
もしも帰り際にワンダと遭遇していなければ、もっと厳しい目を向けられていたのかもしれない。
「ふぅ。一応、冒険者ギルドとして保有している資料がこちらです。ですが、冒険者ギルドは村人の情報を得るのは参考程度のため、五年に一度しか情報を更新しません。ですので、こちらは……三年前の資料となりますね」
ナタリーが出して来てくれた、分厚い本をペラペラと捲ってみると、三年前の状態でも十分に人口比率がいびつな事が良く分かる。
あからさまなのが、十三歳から二十五歳という年齢層で、男女問わず、ごっそりと人口が減る。というか、むしろ限りなくゼロに近い。
「ナタリー。この年齢層がごっそり減っている理由は何か知っている?」
「まぁ、大よその見当はつきますけど……」
「え? そうなの? どうして?」
「学校ですよ。この村には学校が無いので、大きな街にある学校へ進学し、そのままそこに住んでしまうのでしょう」
「なるほど」
言われてみれば、最初に村を回って挨拶した時、娘を春から王都の魔法学校へ通わせる……なんて事を言っていた人が居たな。
家族が離れ離れになってしまうし、王都は物価が高いから生活費で困るという事を言っていた気がする。
魔法学校か。俺も本当は後数ヶ月通わないといけないんだけど……って、ちょっと待った。
待て、待て、待て。今、何か引っ掛かったぞ!?
何か凄い事を忘れている様な……何だっけ? 何だろう?
頭を抱えながら、一瞬頭に浮かんだ疑問の欠片を探していると、
「にーに、どうしたのー?」
ユーリヤが心配そうな表情で尋ねてきた。
「って、そうだっ! ユーリヤ! 学校へ行かなきゃ!」
「……ん? ユーリヤが? がっこー?」
キョトンとした表情で、コテンと小首を傾げつつも、ユーリヤがじっと俺の目を見続ける。
中身はさておき、見た目は七歳くらいだし、常に俺と一緒というのも良くないだろう。
子供は学校の中で集団生活に慣れ、学んで行く訳だし。
まぁとはいっても、実際はドラゴンだし、見た目が一歳成長するのに二千年くらいかかってしまうので、王都の基礎学校とかではなく、この村の学校に……って、魔法学校だけじゃなくて、基礎学校も無いんだっけ。
誰か先生みたいな人に授業を……先生!?
あれ? パメラって確か……
「あぁぁっ! すっかり忘れてたっ! 今、魔法学校の先生が居るじゃないかっ!」
普段の言動ですっかり忘れていたけど、パメラは教師じゃないかっ!
パメラに村の子供たちやユーリヤの教育を……何かヤダな。
俺のユーリヤが穢されそうな気がして、凄く嫌だ。
いっその事、俺がユーリヤや村の子供たちを毎日王都の学校へ送り迎え……いやいや、俺がやっちゃダメだろ。
それをやるなら、誰かに――マーガレットやクレアあたりにワープ・ドアの魔法を修得してもらうか、父さんにマジックアイテムを開発してもらうべきか。
ただ、どちらも確実に出来るという保証がない。
となると、この村に学校を作るというのが無難な気がするけど……やっぱり教師がパメラ一人というのは嫌だな。子供たちが毒される。
せめて何人か教師が居れば、一人くらい濃くてキツイのが居ても、まだ中和されそうな気がするんだけど。
「あの、ヘンリーさん? どうされましたか?」
「え? あぁ、何でもないんだ。えっと、この資料は三年前のものだって話だったけど、領主として冒険者ギルドに依頼するから、最新化出来ないかな?」
「この資料をですか!? これは流石に、一般の冒険者に開示出来ませんし、そもそもこの村に冒険者が来ませんし、私一人でやるというのも難しいですね」
「ダメか?」
「ちょっとお受け出来ない……というか、そもそもこれは統治を行う領主としての仕事の一環では?」
「それもそうか。分かった、ありがとう。一先ず、こっちで何とかするよ。また何かあれば、よろしく頼むよ」
「……我々冒険者ギルドが統治について口を出すつもりはありませんが、先程少し呟いていた学校をどうにかするつもりであれば、応援いたしますよ。この辺りに学校がある村なんてありませんから、もしも出来れば、人の行き来が生まれそうですし」
終始距離は取られていたけれど、最後はナタリーが少し笑みを浮かべてくれた。
父さんが言っていた子育て支援にも合致する。
さっき父さんやパメラが言っていた、到底実施出来ないような施策に比べれば、断然実現性があると思う。
……後は、それを行う人と金をどうするかだけど。
となると、やっぱりこの村の特産品をどうするかって話に戻るんだよな。
仕方が無い。エリーには悪いけど、明日の朝、家にお邪魔させてもらおう。
過去の英霊頼みになってしまうが、一先ず今日はここまでにして、屋敷へ帰って休む事にした。
「……一応は」
「じゃあ、この村の情報を教えてくれないか?」
俺、ユーリヤ、ジェーン、そしてナタリーの四人で屋敷から冒険者ギルドへ戻り、改めて情報開示を依頼する。
しかし、ナタリーは未だに懐疑的な表情を浮かべているが。
もしも帰り際にワンダと遭遇していなければ、もっと厳しい目を向けられていたのかもしれない。
「ふぅ。一応、冒険者ギルドとして保有している資料がこちらです。ですが、冒険者ギルドは村人の情報を得るのは参考程度のため、五年に一度しか情報を更新しません。ですので、こちらは……三年前の資料となりますね」
ナタリーが出して来てくれた、分厚い本をペラペラと捲ってみると、三年前の状態でも十分に人口比率がいびつな事が良く分かる。
あからさまなのが、十三歳から二十五歳という年齢層で、男女問わず、ごっそりと人口が減る。というか、むしろ限りなくゼロに近い。
「ナタリー。この年齢層がごっそり減っている理由は何か知っている?」
「まぁ、大よその見当はつきますけど……」
「え? そうなの? どうして?」
「学校ですよ。この村には学校が無いので、大きな街にある学校へ進学し、そのままそこに住んでしまうのでしょう」
「なるほど」
言われてみれば、最初に村を回って挨拶した時、娘を春から王都の魔法学校へ通わせる……なんて事を言っていた人が居たな。
家族が離れ離れになってしまうし、王都は物価が高いから生活費で困るという事を言っていた気がする。
魔法学校か。俺も本当は後数ヶ月通わないといけないんだけど……って、ちょっと待った。
待て、待て、待て。今、何か引っ掛かったぞ!?
何か凄い事を忘れている様な……何だっけ? 何だろう?
頭を抱えながら、一瞬頭に浮かんだ疑問の欠片を探していると、
「にーに、どうしたのー?」
ユーリヤが心配そうな表情で尋ねてきた。
「って、そうだっ! ユーリヤ! 学校へ行かなきゃ!」
「……ん? ユーリヤが? がっこー?」
キョトンとした表情で、コテンと小首を傾げつつも、ユーリヤがじっと俺の目を見続ける。
中身はさておき、見た目は七歳くらいだし、常に俺と一緒というのも良くないだろう。
子供は学校の中で集団生活に慣れ、学んで行く訳だし。
まぁとはいっても、実際はドラゴンだし、見た目が一歳成長するのに二千年くらいかかってしまうので、王都の基礎学校とかではなく、この村の学校に……って、魔法学校だけじゃなくて、基礎学校も無いんだっけ。
誰か先生みたいな人に授業を……先生!?
あれ? パメラって確か……
「あぁぁっ! すっかり忘れてたっ! 今、魔法学校の先生が居るじゃないかっ!」
普段の言動ですっかり忘れていたけど、パメラは教師じゃないかっ!
パメラに村の子供たちやユーリヤの教育を……何かヤダな。
俺のユーリヤが穢されそうな気がして、凄く嫌だ。
いっその事、俺がユーリヤや村の子供たちを毎日王都の学校へ送り迎え……いやいや、俺がやっちゃダメだろ。
それをやるなら、誰かに――マーガレットやクレアあたりにワープ・ドアの魔法を修得してもらうか、父さんにマジックアイテムを開発してもらうべきか。
ただ、どちらも確実に出来るという保証がない。
となると、この村に学校を作るというのが無難な気がするけど……やっぱり教師がパメラ一人というのは嫌だな。子供たちが毒される。
せめて何人か教師が居れば、一人くらい濃くてキツイのが居ても、まだ中和されそうな気がするんだけど。
「あの、ヘンリーさん? どうされましたか?」
「え? あぁ、何でもないんだ。えっと、この資料は三年前のものだって話だったけど、領主として冒険者ギルドに依頼するから、最新化出来ないかな?」
「この資料をですか!? これは流石に、一般の冒険者に開示出来ませんし、そもそもこの村に冒険者が来ませんし、私一人でやるというのも難しいですね」
「ダメか?」
「ちょっとお受け出来ない……というか、そもそもこれは統治を行う領主としての仕事の一環では?」
「それもそうか。分かった、ありがとう。一先ず、こっちで何とかするよ。また何かあれば、よろしく頼むよ」
「……我々冒険者ギルドが統治について口を出すつもりはありませんが、先程少し呟いていた学校をどうにかするつもりであれば、応援いたしますよ。この辺りに学校がある村なんてありませんから、もしも出来れば、人の行き来が生まれそうですし」
終始距離は取られていたけれど、最後はナタリーが少し笑みを浮かべてくれた。
父さんが言っていた子育て支援にも合致する。
さっき父さんやパメラが言っていた、到底実施出来ないような施策に比べれば、断然実現性があると思う。
……後は、それを行う人と金をどうするかだけど。
となると、やっぱりこの村の特産品をどうするかって話に戻るんだよな。
仕方が無い。エリーには悪いけど、明日の朝、家にお邪魔させてもらおう。
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