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第7章 マックート村の新領主

第212話 ケモミミコスプレセット

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「まぁとりあえず、当初の目的であるワンダを探そう。普段は中庭で花の手入れをしているんだけど……トイレかな?」

 実はドライアドであるワンダがトイレに行くかどうかは知らないが、思いついた見当たらない理由を口にすると、さらにナタリーの視線が厳しくなる。
 何故だ? 女の子でもトイレは行くだろ!? 獣人族だってトイレは行くよね!?
 釈然としないまま屋敷へ入ろうとすると、今の話を聞いたユーリヤが、

「にーに。トイレー!」

 思い出したかのように口を開く。
 やめて。抱っこしている状態で洩らされたら、俺が大変な事になる。
 本来ならば瞬間移動でトイレへ緊急移動したい所だが、ナタリーの前でテレポートは使えない。

「ジェーン。悪いけど、ナタリーの案内は任せたっ!」

 一先ずナタリーをジェーンに丸投げし、大慌てで屋敷の扉を開くと、いつものようにノーマが出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ、御主人様」
「ノーマ! 悪いけど、後ろに居るお客、ナタリーの事を任せた!」

 頭を深々と下げたままで、未だ顔を上げる前のノーマにもナタリーの事を告げ、ユーリヤを抱っこしたまま一階のトイレへダッシュする。
 だが、空気を読まない二人が領主代行の部屋改め子育て支援施策検討本部から出て来て、

「おぉ、帰ったかヘンリー。聞いてくれ。素晴らしい案を考えたんだ」
「そうよー。お父様と先生が互いの考えをぶつけ合ったから、是非聞いてちょうだい」

 俺の行く手を阻む。

「二人とも、悪いが後にしてくれ」
「何故だ、ヘンリー。お前が施策の案を考えろと言ったのだろう。例えば、この『子作り報奨金制度』はどうだ? 領民が一回子作りをする度に、報奨金を支給するんだ。ただ、本当に子作りをしたかどうかを確認するため、プレイ内容を細かくレポートとして提出してもらう事になるが」
「そんなプライバシーを侵害するような施策はダメよっ! それより先生の『子種指名制度』はどう? 子供を妊娠し、出産する女性が望めば、指定した男性と子作りが出来るの。もちろん子供を増やす為、男性の未婚既婚は問わず、拒否権も無しよっ!」

 どっちも聞くに堪えないクソ施策じゃないかっ!
 だが、ここで余計な事を言って時間を取られる訳にはいかないっ!
 今は一秒を争う事態なんだっ!

「だから、二人とも後で聞くからどいてっ! ユーリヤがトイレに行きたがっているんだっ!」
「な、なんとユーリヤちゃんがっ!? ユーリヤちゃん。一人のトイレは怖いよね? オジサンが一緒について行って……ぶへらっ!」
「アホな事言ってないで、道を開けろっ!」

 トイレの話をした途端、何故か頑として道を塞ごうとした父さんを蹴り倒し、そのまま走り抜ける。
 何とかトイレに駆け込み、ユーリヤのパンツを脱がせて……ふぅ、間に合った。
 一先ず安堵と共にトイレを出ると、ユーリヤが出てくるのを待ち、エントランスへ戻る。
 すると、

「くぅぅぅ……ウサミミだとっ!? そのコスプレは満点だというのに、どうして……どうして胸はEランクなんだっ!」

 物凄く冷たい目をしたナタリーの前で、父さんが力いっぱい悔しがっていた。
 しかし、ナタリーが引いているものの、胸が大きいからか、父さんが変な事をした様子は無さそうだ。
 ところが、ナタリーの兎耳でテンションが上がる父さんを見たパメラが、

「なるほど。男性はウサミミやネコミミに興奮するのねっ! だからアタランテちゃんも……分かったわっ! 子供が欲しい女性には、本物そっくりのケモミミコスプレセットを配布すれば良いのよっ!」

 またクソみたいな事を思いついたらしい。

「おぉっ! それだっ! 流石はパメラさんっ! 目の付けどころが違うっ!」
「そうと決まれば、早速何のコスプレが有効かの調査よっ! ウフフ……これで若い男の子をゲットするんだからっ!」
「ウサミミ、ネコミミ、イヌミミにクマミミ。効果検証のためにノーマちゃんやメリッサちゃんに着けて貰って……よし! 先ずは腕の良い毛皮職人を探さなくてはっ!」

 パメラの案に賛同した父さんが、変な笑い声と共に二人で去って行った。
 うん。確実に却下するけど、とりあえず今はナタリーの前から消えて貰う為に放置しておこう。

「えーっと、見苦しい所をすまない。あの二人は無視して、ワンダを探そうか」
「何ですかっ!? あの二人は何なんですかっ!? 発言がおかしいんですけどっ!」
「……ちょっと、いろいろとこじらせ過ぎていて。悪い人ではないから」
「いえ、もう良いですよっ! とりあえず、貴方がこの屋敷の主だって事で良いです。だから、早く帰らせてくださいっ!」
「えぇー。せっかく来たんだから、一緒に食事でも……」
「無理ですっ! 先程の男性と女性が私を見る目……飢えた狼のようであり、発情期の犬みたいでもあり、ここに居たら襲われますっ! 絶対にここは危険……って、あれ? そういえば、どことなく男性の顔が貴方に似ているような……」
「さぁ、用件も済んだ事だし、ギルドへ行こう。送って行くよ!」

 あれと――父さんと血の繋がりがある事は隠しておいた方が良い気がして、ナタリーの希望通り一刻も早くギルドへ戻る事にした。
 ちなみに、帰る時には中庭にワンダが居て、俺の事を話して貰ったんだけど、さっきは裏庭の花壇へ行っていたらしい。
 ……タイミングが悪いよっ!
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