上 下
202 / 343
第7章 マックート村の新領主

第202話 可愛い義妹

しおりを挟む
 ローテーブルを挟むようにして、向かい合わせにソファーが置かれている。
 一方には俺とユーリヤが。そして、対面のソファーにシャーロットちゃんが座って居て、何故か目をキラキラと輝かせながら俺を見つめてくる。
 無関係な貴族なら適当にあしらっても良いんだけど、これからソフィアには統治について話を聞かせて貰う訳だし、ちゃんとしておいた方が良いだろう。
 とはいえ、やっぱり貴族の相手は面倒臭い。
 なので、一旦落ち着こうと思って、メイドさんが置いていってくれた紅茶を一口飲み、

「ヘンリーさんは、もうソフィアお姉様とキスしたの?」

――ぶっ!

 思いっきり噴き出した。

「あ、やっぱりしたんだー! ねぇねぇ、どこでしたの? どういう状況? どうやって落としたの?」
「待って。シャーロットちゃん。誤解だから」
「誤解……って事は、ソフィアお姉様からキスしたって事!? きゃーっ! あの男嫌いのソフィアお姉様が……ヘンリーさん。流石ですっ!」

 ソフィアが居ないからシャーロットちゃんが猫被りをやめ、素の感じで話してくれているのは嬉しいのだが、勘違いと思い込みが凄い。
 何となくだけど、ソフィアの妹というのがよく分かる。

「あのね、シャーロットちゃん。今の話はいろいろ違ってて……」
「あー、わかりましたー! もうキスだけじゃないって事ですねっ!」
「どうしてそうなるんだよっ!」
「だって、あのソフィアお姉様が急にランジェリーショップへ行きだしたんだもん。私、ソフィアお姉様付きのメイドさんと仲が良いから、いろいろ聞いているんだー」
「ランジェリーショップ?」
「うん。ソフィアお姉様の相手が下着に……特にパンツへのこだわりが凄くて、その人の為に毎週ランジェリーショップへ行って新作をチェックしてるって聞いたよー」

 何故かシャーロットちゃんが俺をニヤニヤ見つめながら話してくるのだが、それよりもソフィアがランジェリーショップで、男の為にパンツをチェックだって!?
 知らなかった。ソフィアには様々なパンツを見せるような相手が居るのか。
 それなのに、毎朝着替えを覗いてしまって悪かったな。
 まぁでも、俺はソフィアとパンツ見放題の契約があるから、恋人が居ようと関係無しに見せてもらうけどなっ!
 そんな事を考えているうちに、ソフィアが入ってきた。……きた、のだが、

「お待たせしました。ヘンリーさん、着替えが済みました」
「ちょっと待て。ソフィアはその格好でどこへ行く気なんだよっ!」
「どこって、ヘンリーさんの御自宅ですが?」
「いや、俺の家はパーティ会場とかじゃないから。というか、頼むからもっと露出を控えてくれよ。俺は他の人にソフィアの肌を見られたくないんだって」
「……そ、そんな事……ちょ、ちょっと待ってて」

 胸元と背中が大きく空いた、貴族のパーティ? で着ていそうなドレス姿のソフィアを一旦退室させた。
 俺がソフィアの肌を見る分にはパンツ契約の延長上で有りなんだけど、あんな姿を父さんに見せたら……学生服級にヤバい。
 確実に父さんが犯罪者になる。しかも、性犯罪者に。

「ソフィアお姉さまが顔を真っ赤に染めるなんて。ヘンリー様……いえ、これからはお義兄様と呼ばせていただきますね」
「何でだよっ!」
「ねぇ、お義兄様ー。可愛い義妹に、ソフィアお姉様とのドキドキのエピソードをお話ししてぇー」
「ちょっと、どうしてこっち側のソファへ来たの?」
「いいじゃないですかー。ユーリヤちゃんも居ますしー、もう一人妹が増えただけですよー」

 あー、ユーリヤの事をちゃんと話してなかったな。
 妹ではないんだけど……まぁいいか。

「というか、どうしてソフィアの話を聞きたいんだ? 直接聞けば良いじゃないか」
「だって、ソフィアお姉様が恋愛話なんて絶対してくれないしー。ソフィアお姉様の恋の話なんて絶対に面白――げふんげふん。ロティーは初恋が未だなので、参考にしたいんですー」
「初恋が未だ……って、貴族で十一歳なら、他の貴族の男の子とかが居るんじゃないの? それに、格好良い男の子が基礎学校に居るだろ?」
「ロティーが通っているのは女子校だもん。パーティで会う貴族の男の子もイマイチっていうか……それに、そもそもロティーは年上の男性が好きなんだもん」

 気のせいだろうか。
 さっきから俺の隣に座るシャーロットちゃんが、やたらと俺の身体を触ってくるのだが……いや、気のせいだよな。気のせい。
 シャーロットちゃんは、あのルミより幼い少女だ。ただ無邪気なだけだろう。

「そうだ! ちょっと待ってて」

 そう言ってシャーロットちゃんが部屋から出たと思ったら、すぐに戻ってきた。
 何やら分厚い本を手にしたシャーロットちゃんが、先程と同じように俺の隣へ腰掛ける。

「これこれ。ちょっと見てー」
「えーっと、下着姿の女性の絵が描かれたイラスト集?」
「うん。これはねー、ソフィアお姉様が愛読している下着のカタログなんだー」
「へぇー。こんな本があるんだ。……この栞は?」
「ソフィアお姉様が買おうかどうか迷っている下着だと思うよー。見て、これ。パンツっていうか、もうただの紐だよね」
「そ、そうだな。というか、これパンツじゃないよね」
「でしょー。ソフィアお姉様ったら、意外と大胆……」

 何かに気付いたシャーロットちゃんが突然押し黙る。
 嫌な予感がしながら、ゆっくりと扉に目を向けると、俺のオーダー通り、露出を控えたパンツスタイル――ズボンを履いたソフィアが立って居た。

「ロティー。何が大胆なのかしら?」
「ソ、ソフィアお姉様……あは、あはは。じゃ、じゃあ、お二人とも。どうぞ、ごゆっくりー」

 シャーロットちゃんが慌てて部屋から逃げ出すと、ソフィアが先程までシャーロットちゃんが座って居た、俺の隣へ腰掛ける。
 目の前のソファー、空いているんだけどな。

「まったく。どうしてロティーがアンタと一緒に居るのよ」
「それは俺が聞きたいんだが」
「一体何の話をしてい……きゃぁぁぁっ! どうして、こんな所にこの本があるのよっ!」

 ソフィアが目の前のカタログに気付いた瞬間、大慌てでそれを自分の服の中へ隠す。
 無理矢理大きな本を突っ込んだせいで、思いっきりおヘソが見えているんだが……突っ込むと面倒臭そうなので、一先ずそのままにしておいた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

処理中です...