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第7章 マックート村の新領主
第199話 専任教師のリクエスト
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「ヘンリー君。とりあえず、先生疲れちゃったぁー。どこかゆっくり休める所に案内してぇー」
「ノーマ。悪いけど、先生を二階のゲストルームへ案内してくれないか」
「……かしこまりました」
ノーマに案内を頼むと、パメラが案外素直に従い、階段を上がって行く。
ただ、俺の前を通る時に、
「……チッ。そう簡単に二人切りにはさせてくれないか」
と呟いていた気がするのだが……うん、きっと気のせいだろう。気のせいに決まっている。
「ジェーン。悪いんだけど、屋敷と領地の警護に加えて、俺の護衛もしてくれないか?」
「主様、大丈夫です。いつ如何なる時でも、私がお守りいたしますし、主様、屋敷、領地のローテーションで警護を組んでおります」
「助かる。宜しく頼むよ」
一応何も無いとは思うけど、念のためジェーンに護衛をお願いしてみたら、既に警護対象に入っているとか。
ジェーン、ニーナ、アタランテが警護の役割だけど、フローレンス様に言って、あと二人くらい増員してもらっても良いかもしれない。
いや、違うな。
第三王女直属特別隊として俺の護衛にあたるのはギリギリ有りな気がするけれど、屋敷と領地の警護は領主として雇用しなければならないのか。
この辺りも、後でソフィアに聞いてみよう。何か知っているだろうし。
ソフィアに聞いて有益な情報が無ければ、申し訳ないけどエリーの家に直接出向いて、ホムンクルスを作ってもらおうか。
今日のプランを考えていると、パメラを案内したノーマが戻って来たのだが、彼女にしては珍しく困った顔をしている。
「ノーマ。もしかして、何かあったのか?」
「御主人様……あの、先程二階へ御案内した先生が、お酒が飲みたいと」
「よし、無視して良いよ」
「ですが、お酒が無ければ代わりに御主人様の、その……」
「メリッサ! メリッサー! 酒だ! 酒を持って来てくれーっ!」
パメラが何を要求したのかは分からないが、いつも無表情なノーマが困惑する程の物を言ってきたんだ。
とりあえず嫌な予感しかしないので、厨房へ行くと、ノーマと同じように困った顔のメリッサが姿を見せる。
「メリッサ。何でも良いから酒の類は無いか?」
「あの、御主人様。前にお話しましたが、私はまだ未成年で、料理人としても未熟なので、お酒の事はよく分からないんです」
「大丈夫だ。俺も酒なんて飲んだ事ないし、知らん! とりあえず、酒と名の付く物なら何でも良いぞ」
「えっと……そういう事でしたら、屋敷の地下の食糧庫にご案内いたします」
「え、地下の食糧庫とかあるの?」
「はい。お酒や穀物、万が一の時の非常食など、主に保存の効く物が保管されています。とは言っても、お酒については私が来る前から置いてある物で、サッパリ分からないのですが」
ノーマとメリッサに案内され、地下の食糧庫へ。
ちなみに狭い階段を下りないといけない事と、中が薄暗いので、ユーリヤには入口の前でジェーンと共に待っていてもらっている。
メリッサの案内で食糧庫の一角、お酒の瓶が沢山並べられた棚の前へ来たのだが、
「……何が何だかサッパリだな」
「すみません。私もよく分かりません」
「いや、メリッサを責めている訳じゃないんだ。ただ、あまりにも種類が多過ぎて、どうしたものかと思ってさ」
百本くらいはありそうな酒瓶を前にして、途方にくれてしまった。
「あの、領主代行のお方に伺ってみるのは、どうでしょうか」
「父さんに? いや、父さんもお酒は飲まないんだよ。というか、俺の家族は誰も飲まないんだ」
「意外ですね。年配の男性の方は、皆お酒を飲まれる印象だったのですが」
「いや、酒を飲むと酔って開発が出来なくなるのが嫌なんだってさ」
「流石、御主人様のお父様ですね。お仕事に熱心です」
メリッサが父さんを尊敬しているようだが……実は違う。
あのバカはエロい事に熱心なだけなんだ。
寝る間も惜しんで自分が愉しむためのマジックアイテムを開発する……残念ながら、そういう人なんだよ。
「とりあえず、よく分からないし古いお酒で良いんじゃないのか? あの人には古くて味の落ちた物でも十分だろ」
「御主人様。お酒の良し悪しは分かりませんが、古いお酒程、高価だというのは聞いた事があるのですが」
「え? そうなの? でも、ここの棚にある瓶を見てみても、だいたい百年近く前の物みたいだけど?」
ノーマが掃除をしてくれているのか、ホコリなどは積っていないけれど、それでも瓶に貼られたラベルが年代を感じさせる物ばかりだ。
『ヘンリーさん。私もお酒には詳しくないですが、何でも良いのであれば、王都の商店街で適当に買って来た方が早いし、確実じゃないですか?』
(あ、確かに。だったら、ついでにメリッサの勉強も兼ねてみようか)
「メリッサ。とりあえず、ここにあるお酒はパメラには勿体無い気がするから、今から王都へ買付に行こう」
「え? 今から……って、きゃあっ!」
「そのまま大人しくしてて……テレポート」
アオイの意見からの思い付きで、メリッサをお姫様抱っこして、王都の商店街へと瞬間移動した。
「ノーマ。悪いけど、先生を二階のゲストルームへ案内してくれないか」
「……かしこまりました」
ノーマに案内を頼むと、パメラが案外素直に従い、階段を上がって行く。
ただ、俺の前を通る時に、
「……チッ。そう簡単に二人切りにはさせてくれないか」
と呟いていた気がするのだが……うん、きっと気のせいだろう。気のせいに決まっている。
「ジェーン。悪いんだけど、屋敷と領地の警護に加えて、俺の護衛もしてくれないか?」
「主様、大丈夫です。いつ如何なる時でも、私がお守りいたしますし、主様、屋敷、領地のローテーションで警護を組んでおります」
「助かる。宜しく頼むよ」
一応何も無いとは思うけど、念のためジェーンに護衛をお願いしてみたら、既に警護対象に入っているとか。
ジェーン、ニーナ、アタランテが警護の役割だけど、フローレンス様に言って、あと二人くらい増員してもらっても良いかもしれない。
いや、違うな。
第三王女直属特別隊として俺の護衛にあたるのはギリギリ有りな気がするけれど、屋敷と領地の警護は領主として雇用しなければならないのか。
この辺りも、後でソフィアに聞いてみよう。何か知っているだろうし。
ソフィアに聞いて有益な情報が無ければ、申し訳ないけどエリーの家に直接出向いて、ホムンクルスを作ってもらおうか。
今日のプランを考えていると、パメラを案内したノーマが戻って来たのだが、彼女にしては珍しく困った顔をしている。
「ノーマ。もしかして、何かあったのか?」
「御主人様……あの、先程二階へ御案内した先生が、お酒が飲みたいと」
「よし、無視して良いよ」
「ですが、お酒が無ければ代わりに御主人様の、その……」
「メリッサ! メリッサー! 酒だ! 酒を持って来てくれーっ!」
パメラが何を要求したのかは分からないが、いつも無表情なノーマが困惑する程の物を言ってきたんだ。
とりあえず嫌な予感しかしないので、厨房へ行くと、ノーマと同じように困った顔のメリッサが姿を見せる。
「メリッサ。何でも良いから酒の類は無いか?」
「あの、御主人様。前にお話しましたが、私はまだ未成年で、料理人としても未熟なので、お酒の事はよく分からないんです」
「大丈夫だ。俺も酒なんて飲んだ事ないし、知らん! とりあえず、酒と名の付く物なら何でも良いぞ」
「えっと……そういう事でしたら、屋敷の地下の食糧庫にご案内いたします」
「え、地下の食糧庫とかあるの?」
「はい。お酒や穀物、万が一の時の非常食など、主に保存の効く物が保管されています。とは言っても、お酒については私が来る前から置いてある物で、サッパリ分からないのですが」
ノーマとメリッサに案内され、地下の食糧庫へ。
ちなみに狭い階段を下りないといけない事と、中が薄暗いので、ユーリヤには入口の前でジェーンと共に待っていてもらっている。
メリッサの案内で食糧庫の一角、お酒の瓶が沢山並べられた棚の前へ来たのだが、
「……何が何だかサッパリだな」
「すみません。私もよく分かりません」
「いや、メリッサを責めている訳じゃないんだ。ただ、あまりにも種類が多過ぎて、どうしたものかと思ってさ」
百本くらいはありそうな酒瓶を前にして、途方にくれてしまった。
「あの、領主代行のお方に伺ってみるのは、どうでしょうか」
「父さんに? いや、父さんもお酒は飲まないんだよ。というか、俺の家族は誰も飲まないんだ」
「意外ですね。年配の男性の方は、皆お酒を飲まれる印象だったのですが」
「いや、酒を飲むと酔って開発が出来なくなるのが嫌なんだってさ」
「流石、御主人様のお父様ですね。お仕事に熱心です」
メリッサが父さんを尊敬しているようだが……実は違う。
あのバカはエロい事に熱心なだけなんだ。
寝る間も惜しんで自分が愉しむためのマジックアイテムを開発する……残念ながら、そういう人なんだよ。
「とりあえず、よく分からないし古いお酒で良いんじゃないのか? あの人には古くて味の落ちた物でも十分だろ」
「御主人様。お酒の良し悪しは分かりませんが、古いお酒程、高価だというのは聞いた事があるのですが」
「え? そうなの? でも、ここの棚にある瓶を見てみても、だいたい百年近く前の物みたいだけど?」
ノーマが掃除をしてくれているのか、ホコリなどは積っていないけれど、それでも瓶に貼られたラベルが年代を感じさせる物ばかりだ。
『ヘンリーさん。私もお酒には詳しくないですが、何でも良いのであれば、王都の商店街で適当に買って来た方が早いし、確実じゃないですか?』
(あ、確かに。だったら、ついでにメリッサの勉強も兼ねてみようか)
「メリッサ。とりあえず、ここにあるお酒はパメラには勿体無い気がするから、今から王都へ買付に行こう」
「え? 今から……って、きゃあっ!」
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