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第6章 漆黒の召喚士
第176話 王女様とダークエルフ
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「なるほど。つまり、ヘンリーさんとエルフの長老の孫娘が協力して、ダークエルフの村を襲った魔族を倒したという事ですか? そして、これからダークルフたちはエルフの村で同じエルフ族と共に暮らすと」
フローレンス様へ状況報告を行い、俺の報告が真実であると、ヨセフィーナさんに口添えしてもらう。
俺一人で報告しても、フローレンス様は信じてくれるだろうが、その先……国王や他の王族たちが信じてくれない可能性がある。
そう考えて、ヨセフィーナさんに来て貰ったのだが、やはりダークエルフを目の当たりにするのは、かなりインパクトがあったようだ。
「フローレンス様。魔族と戦った事は事実ですが、最後に倒したのは、このヨセフィーナさんです」
「いや、あれは既に魔族を弱らせてくれたから、その隙を突いて止めを刺す事が出来ただけの事。真に称えられるべきは、この人間であろう」
「しかし、あんな凄い風の魔法は見た事がないですよ」
「あぁ、あれはエルフ族と盟約を結んだ風の精霊による魔法だからな。人間には使用出来ない魔法ではある。だが、あの白い炎の方が余程凄まじい威力ではあったが」
ヨセフィーナさんと魔法の話になりかけてしまったので、話題の転換と続きの報告を兼ねて、エリーのお母さんの話を説明すると、
「流石ヘンリーさんですね。まさか、エァル公国への入国手続きが完了してから、僅か一日で救助するとは。一先ず、今回のヘンリーの功績を父にしっかりと伝えておきましょう」
再びフローレンス様が微笑みながら労ってくれた。
猫被りモードだったからか、フローレンス様との話も割と短い時間で終わったので、ヨセフィーナさんをエルフの村へと送る。
ちなみに、眠たいかからか静かにしているが、今日はユーリヤを抱っこしていて、久々にいつもの定番? スタイルだ。
というのも、エリーがお母さんの看病に付きっきりで、ユーリヤに構っている余裕が無い事と、エリーが無意識に発していた寂しさを、ユーリヤが感じなくなったからだと。
残念ながら俺には後者の話は分からないが、前者については十分に納得出来る話なので、暫くはエリーにユーリヤの面倒を見て貰う事は出来なさそうだ。
一先ず、これまで通りドワーフの国探しを続けようかと思った所で、
『ヘンリー=フォーサイス殿。大至急、フローレンス様の所へ御戻りくだされ』
見知らぬ誰かからメッセージ魔法が飛んで来た。
内容からして、おそらく宮廷魔術師の誰かなのだろう。
おそらく、ヨセフィーナさんは連れてくるなという事なんだろうなと、少し嫌な予感を覚えつつも、ユーリヤを抱きかかえたまま、急いでいつもの小部屋へ戻ると、
「ヘンリー! 凄いじゃないっ! 流石ねっ!」
猫被りモードでは無くなったフローレンス様が頭を撫でてきた。
「ありがとうございます。フローレ……フロウ」
「それはこっちの台詞よ。行方不明の民を無事に保護してくれた訳だし、感謝してもしたりないくらいよ。で、ところでヘンリー。ちょっと相談があるんだけど」
「……お姫様抱っこの事か?」
「そうね。それはそれで後でしてもらう必要があるのだけれど、今は別件よ。先程ヘンリーが連れて来たダークエルフの話なんだけど……大よそで良いから、エルフたちがどこに住んでいるのか、教えてくれないかしら」
「エルフの村の場所? フロウに教えるのは構わないが……先に理由を聞きたい。どうして、エルフの村の場所を知りたいんだ?」
「それは……すぐに分かるわ。けど、決してエルフたちに迷惑を掛ける話では無いの。むしろ、エルフたちを支援するための考えだと思ってくれれば良いわ」
ダークエルフは人間に対して商売をしていたが、エルフは元々人間から距離を取るように、村の入口に見張りを立てていた。
しかも、すぐ近くに魔王城もあるため、俺がユーリヤと共に出向くくらいならともかく、国として、大勢の騎士を引き連れて行くような事は避けて欲しい。
予め用意されていた、王国の地図を前に、フローレンス様が促してくる。
「ヘンリー。大よその位置で構わないから、どの辺りか教えて」
「フロウ。もう一度だけ確認するが、エルフの村の不利益になるような事……例えば、村を攻めたりする訳では無いんだよな?」
「当たり前じゃない。エルフと敵対しようなんて気は無いし、税を徴収しようとか、そんなつもりも無いわよ」
「だったら尚更理由を教えて欲しいのだが」
「それは……場所次第ね。私たちも、場所によっては考えている事が実現出来ない可能性もあるし……って、とにかくエルフに危害を与えたり、干渉を強制するつもりはない事を約束するわ」
暫くフロウの目を見つめ、俺はフロウが言っている事は本心だと思えたので、
「……あくまで大まかな場所ですが、この辺りとだけ」
アオイによる正確な場所ではなく、あくまで俺が認識している大体の場所を指し示す。
「分かったわ。ありがとう、ヘンリー。宮廷魔術師たちが過去の文献などから推測していた場所とも概ね合うし、予定通りに事が運べそうよ」
「予定通りとは?」
「ふふっ。もう少しだけ調整が必要だから、ちょっとだけ時間が欲しいわね。三日……いえ、二日で何とかしてみせるから、二日後に来て貰う事になると思うわ」
「わかりました」
「じゃあ、この話はお終い。そういう訳だから、ヘンリー。抱っこしてー」
話が終わって解放されると思っていたのだが、フロウとユーリヤを同時に抱っこするという、いつもの謎任務からは逃れられなかった。
フローレンス様へ状況報告を行い、俺の報告が真実であると、ヨセフィーナさんに口添えしてもらう。
俺一人で報告しても、フローレンス様は信じてくれるだろうが、その先……国王や他の王族たちが信じてくれない可能性がある。
そう考えて、ヨセフィーナさんに来て貰ったのだが、やはりダークエルフを目の当たりにするのは、かなりインパクトがあったようだ。
「フローレンス様。魔族と戦った事は事実ですが、最後に倒したのは、このヨセフィーナさんです」
「いや、あれは既に魔族を弱らせてくれたから、その隙を突いて止めを刺す事が出来ただけの事。真に称えられるべきは、この人間であろう」
「しかし、あんな凄い風の魔法は見た事がないですよ」
「あぁ、あれはエルフ族と盟約を結んだ風の精霊による魔法だからな。人間には使用出来ない魔法ではある。だが、あの白い炎の方が余程凄まじい威力ではあったが」
ヨセフィーナさんと魔法の話になりかけてしまったので、話題の転換と続きの報告を兼ねて、エリーのお母さんの話を説明すると、
「流石ヘンリーさんですね。まさか、エァル公国への入国手続きが完了してから、僅か一日で救助するとは。一先ず、今回のヘンリーの功績を父にしっかりと伝えておきましょう」
再びフローレンス様が微笑みながら労ってくれた。
猫被りモードだったからか、フローレンス様との話も割と短い時間で終わったので、ヨセフィーナさんをエルフの村へと送る。
ちなみに、眠たいかからか静かにしているが、今日はユーリヤを抱っこしていて、久々にいつもの定番? スタイルだ。
というのも、エリーがお母さんの看病に付きっきりで、ユーリヤに構っている余裕が無い事と、エリーが無意識に発していた寂しさを、ユーリヤが感じなくなったからだと。
残念ながら俺には後者の話は分からないが、前者については十分に納得出来る話なので、暫くはエリーにユーリヤの面倒を見て貰う事は出来なさそうだ。
一先ず、これまで通りドワーフの国探しを続けようかと思った所で、
『ヘンリー=フォーサイス殿。大至急、フローレンス様の所へ御戻りくだされ』
見知らぬ誰かからメッセージ魔法が飛んで来た。
内容からして、おそらく宮廷魔術師の誰かなのだろう。
おそらく、ヨセフィーナさんは連れてくるなという事なんだろうなと、少し嫌な予感を覚えつつも、ユーリヤを抱きかかえたまま、急いでいつもの小部屋へ戻ると、
「ヘンリー! 凄いじゃないっ! 流石ねっ!」
猫被りモードでは無くなったフローレンス様が頭を撫でてきた。
「ありがとうございます。フローレ……フロウ」
「それはこっちの台詞よ。行方不明の民を無事に保護してくれた訳だし、感謝してもしたりないくらいよ。で、ところでヘンリー。ちょっと相談があるんだけど」
「……お姫様抱っこの事か?」
「そうね。それはそれで後でしてもらう必要があるのだけれど、今は別件よ。先程ヘンリーが連れて来たダークエルフの話なんだけど……大よそで良いから、エルフたちがどこに住んでいるのか、教えてくれないかしら」
「エルフの村の場所? フロウに教えるのは構わないが……先に理由を聞きたい。どうして、エルフの村の場所を知りたいんだ?」
「それは……すぐに分かるわ。けど、決してエルフたちに迷惑を掛ける話では無いの。むしろ、エルフたちを支援するための考えだと思ってくれれば良いわ」
ダークエルフは人間に対して商売をしていたが、エルフは元々人間から距離を取るように、村の入口に見張りを立てていた。
しかも、すぐ近くに魔王城もあるため、俺がユーリヤと共に出向くくらいならともかく、国として、大勢の騎士を引き連れて行くような事は避けて欲しい。
予め用意されていた、王国の地図を前に、フローレンス様が促してくる。
「ヘンリー。大よその位置で構わないから、どの辺りか教えて」
「フロウ。もう一度だけ確認するが、エルフの村の不利益になるような事……例えば、村を攻めたりする訳では無いんだよな?」
「当たり前じゃない。エルフと敵対しようなんて気は無いし、税を徴収しようとか、そんなつもりも無いわよ」
「だったら尚更理由を教えて欲しいのだが」
「それは……場所次第ね。私たちも、場所によっては考えている事が実現出来ない可能性もあるし……って、とにかくエルフに危害を与えたり、干渉を強制するつもりはない事を約束するわ」
暫くフロウの目を見つめ、俺はフロウが言っている事は本心だと思えたので、
「……あくまで大まかな場所ですが、この辺りとだけ」
アオイによる正確な場所ではなく、あくまで俺が認識している大体の場所を指し示す。
「分かったわ。ありがとう、ヘンリー。宮廷魔術師たちが過去の文献などから推測していた場所とも概ね合うし、予定通りに事が運べそうよ」
「予定通りとは?」
「ふふっ。もう少しだけ調整が必要だから、ちょっとだけ時間が欲しいわね。三日……いえ、二日で何とかしてみせるから、二日後に来て貰う事になると思うわ」
「わかりました」
「じゃあ、この話はお終い。そういう訳だから、ヘンリー。抱っこしてー」
話が終わって解放されると思っていたのだが、フロウとユーリヤを同時に抱っこするという、いつもの謎任務からは逃れられなかった。
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