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第6章 漆黒の召喚士
第147話 コートニーの願い
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サムソン撃破の後日、週末で学校が休みの日に、今回の功績で二度目となる勲章を頂くことになった。
しかも今回は、俺だけでなくジェーンとマーガレット、そしてユーリヤも一緒だ。
召喚魔法で呼んだ者だから……と、前回フローレンス様を救出した時はジェーンが含まれて居なかったが、日頃から訓練場に居て他の騎士たちとも顔見知りだという事もあり、四人で授与されている。
ちなみに、マーガレットは直接戦闘に参加していないものの、瀕死の騎士や街の人たちなど、もう助からないだろうと思われた人達を大勢救った事による勲章だ。
ただ、国王の前でもユーリヤが抱っこをねだったので、勲章授与式の間は俺と手を繋ぐという事で妥協してもらった。
……周囲に居た偉い人たちから、どっちが母親なんだ? という呟きがちらほら聞こえていたが。
そして授与式の後、
「……では新たに対魔族精鋭部隊を選抜するという事で。詳細は後日。国の、いえ人類の存続の危機です。各部隊、最も適任だと思われる者を専任してください。以上です」
騎士団長や宮廷魔術師長に加え、フローレンス様と何故か俺たち――勲章を授与された全員――を交えた会議が行われ、新たな部隊を作るという事で話が纏まった。
あまり長い会議ではなかったのだが、ユーリヤが寝てしまったのは御愛嬌としておこう。
偉い人たちが部屋を出て行き、フローレンス様と俺たちだけが残る。
「皆さん。この度は本当にありがとうございました。改めて心から感謝申し上げます」
「いえ、第三王女直属特別隊として、宮廷に居る者として当然の事をしたまでです」
「ありがとうございます。ところで逃げた魔族の対策についてです。一先ず各部隊から精鋭を募り、ヘンリーさんの下に就けるのですが、他に何か策は無いでしょうか」
「え? 俺の下……って、さっきの対魔族精鋭部隊って、俺たちの事なんですか!?」
「当然です。これまで二度も私や国の危機を救ってくださり、いずれも魔族と直接対峙して退けているのです。他に適任の者など居ませんよ」
猫被りモードのフローレンス様が当然です! とでも言いたげな表情だけど、魔族を退けた件については、一度目のオリバーはともかく、今回のロリコン魔族は勝手に帰っただけだから何とも言えないんだが。
「一先ず、対魔族という事ですが、以前にも申し上げたドワーフの国、もしくは巨人を探す要員を割り当てていただけないかと」
「聖銀の加工の件ね?」
「えぇ。現在、ドワーフの国を探していますが、流石に人手が足りなさすぎるのと、もしも国内になかった場合、我々では手が出せなくなってしまいます。魔族という人類共通の敵ですし、他国と連携出来ないものでしょうか?」
「なるほど。ごめんなさい。つい、自国の事ばかりに目がいってしまっておりましたが、ヘンリーさんの言う通りですね。他国との連携については、父と相談致します。あと、ドワーフ国探しについても、何か手を打ちましょう」
「よろしくお願い致します」
一通り話を終え、一旦寮の部屋へ戻ろうかと王宮の門に向かって歩いて居ると、廊下でコートニーが待っていた。
「貴方……今回は、本当にありがとう。助かりましたの」
「いや、俺たちも王宮に仕える身だからね。気にしないで」
そう言って立ち去ろうとすると、コートニーが何か言いたげについて来る。
改めて礼が言いたかっただけのかと思ったのだが、
「貴方……お願いがありますの! 少しだけ私の話を聞いて欲しいですのっ!」
何事かと振りかえると、コートニーが深々と頭を下げていた。
「えっと、流石に胸を大きくする方法は知らないんだけど」
「誰もそんな事は言っていませんのっ! そうではなくて、そちらのマーガレットさんの力を貸して欲しいんですの!」
「え、私ですか? 胸ならジェーンさんの方が……じ、冗談ですよっ! 泣かないでくださいっ!」
マーガレットが俺の言葉に被せたから、コートニーが拗ねたじゃないか。
まったく。マーガレットったら。
『明らかに、最初に胸の話をしたヘンリーさんの方が悪いですけどね』
(そんな事を言われても、コートニーのお願いと言えば、貧乳をどうにかして欲しいって事しか思いつかないだろ)
『そうとは限らないでしょう。教会絡みの事とかではないでしょうか』
(それはもう勘弁願いたいな。面倒臭いし)
「で、コートニー。マーガレットに何のお願いなんだ?」
「……先日、マーガレットさんは凄い治癒魔法で、大勢の人を救ってくださいましたの」
「サムソンと戦った時の話か。マーガレットは神聖魔法が得意だからな」
「えぇ。それで……その神聖魔法を用いて、私の妹を助けて欲しいんですの。この通りですのっ! 身体を差し出せというのなら、差し出しますの。私の事を好きにして構わないので、どうか妹を助けて欲しいですのっ!」
コートニーが先程よりも更に深く頭を下げる。
しかし、身体を差し出すから妹を助けてくれって、コートニーは一体どういう目で俺の事を見ているのだろうか。
『ヘンリーさん。そういう目ですよ』
アオイのツッコミを無視して、一先ずコートニーの話を聞く事にした。
しかも今回は、俺だけでなくジェーンとマーガレット、そしてユーリヤも一緒だ。
召喚魔法で呼んだ者だから……と、前回フローレンス様を救出した時はジェーンが含まれて居なかったが、日頃から訓練場に居て他の騎士たちとも顔見知りだという事もあり、四人で授与されている。
ちなみに、マーガレットは直接戦闘に参加していないものの、瀕死の騎士や街の人たちなど、もう助からないだろうと思われた人達を大勢救った事による勲章だ。
ただ、国王の前でもユーリヤが抱っこをねだったので、勲章授与式の間は俺と手を繋ぐという事で妥協してもらった。
……周囲に居た偉い人たちから、どっちが母親なんだ? という呟きがちらほら聞こえていたが。
そして授与式の後、
「……では新たに対魔族精鋭部隊を選抜するという事で。詳細は後日。国の、いえ人類の存続の危機です。各部隊、最も適任だと思われる者を専任してください。以上です」
騎士団長や宮廷魔術師長に加え、フローレンス様と何故か俺たち――勲章を授与された全員――を交えた会議が行われ、新たな部隊を作るという事で話が纏まった。
あまり長い会議ではなかったのだが、ユーリヤが寝てしまったのは御愛嬌としておこう。
偉い人たちが部屋を出て行き、フローレンス様と俺たちだけが残る。
「皆さん。この度は本当にありがとうございました。改めて心から感謝申し上げます」
「いえ、第三王女直属特別隊として、宮廷に居る者として当然の事をしたまでです」
「ありがとうございます。ところで逃げた魔族の対策についてです。一先ず各部隊から精鋭を募り、ヘンリーさんの下に就けるのですが、他に何か策は無いでしょうか」
「え? 俺の下……って、さっきの対魔族精鋭部隊って、俺たちの事なんですか!?」
「当然です。これまで二度も私や国の危機を救ってくださり、いずれも魔族と直接対峙して退けているのです。他に適任の者など居ませんよ」
猫被りモードのフローレンス様が当然です! とでも言いたげな表情だけど、魔族を退けた件については、一度目のオリバーはともかく、今回のロリコン魔族は勝手に帰っただけだから何とも言えないんだが。
「一先ず、対魔族という事ですが、以前にも申し上げたドワーフの国、もしくは巨人を探す要員を割り当てていただけないかと」
「聖銀の加工の件ね?」
「えぇ。現在、ドワーフの国を探していますが、流石に人手が足りなさすぎるのと、もしも国内になかった場合、我々では手が出せなくなってしまいます。魔族という人類共通の敵ですし、他国と連携出来ないものでしょうか?」
「なるほど。ごめんなさい。つい、自国の事ばかりに目がいってしまっておりましたが、ヘンリーさんの言う通りですね。他国との連携については、父と相談致します。あと、ドワーフ国探しについても、何か手を打ちましょう」
「よろしくお願い致します」
一通り話を終え、一旦寮の部屋へ戻ろうかと王宮の門に向かって歩いて居ると、廊下でコートニーが待っていた。
「貴方……今回は、本当にありがとう。助かりましたの」
「いや、俺たちも王宮に仕える身だからね。気にしないで」
そう言って立ち去ろうとすると、コートニーが何か言いたげについて来る。
改めて礼が言いたかっただけのかと思ったのだが、
「貴方……お願いがありますの! 少しだけ私の話を聞いて欲しいですのっ!」
何事かと振りかえると、コートニーが深々と頭を下げていた。
「えっと、流石に胸を大きくする方法は知らないんだけど」
「誰もそんな事は言っていませんのっ! そうではなくて、そちらのマーガレットさんの力を貸して欲しいんですの!」
「え、私ですか? 胸ならジェーンさんの方が……じ、冗談ですよっ! 泣かないでくださいっ!」
マーガレットが俺の言葉に被せたから、コートニーが拗ねたじゃないか。
まったく。マーガレットったら。
『明らかに、最初に胸の話をしたヘンリーさんの方が悪いですけどね』
(そんな事を言われても、コートニーのお願いと言えば、貧乳をどうにかして欲しいって事しか思いつかないだろ)
『そうとは限らないでしょう。教会絡みの事とかではないでしょうか』
(それはもう勘弁願いたいな。面倒臭いし)
「で、コートニー。マーガレットに何のお願いなんだ?」
「……先日、マーガレットさんは凄い治癒魔法で、大勢の人を救ってくださいましたの」
「サムソンと戦った時の話か。マーガレットは神聖魔法が得意だからな」
「えぇ。それで……その神聖魔法を用いて、私の妹を助けて欲しいんですの。この通りですのっ! 身体を差し出せというのなら、差し出しますの。私の事を好きにして構わないので、どうか妹を助けて欲しいですのっ!」
コートニーが先程よりも更に深く頭を下げる。
しかし、身体を差し出すから妹を助けてくれって、コートニーは一体どういう目で俺の事を見ているのだろうか。
『ヘンリーさん。そういう目ですよ』
アオイのツッコミを無視して、一先ずコートニーの話を聞く事にした。
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