上 下
147 / 343
第6章 漆黒の召喚士

第147話 コートニーの願い

しおりを挟む
 サムソン撃破の後日、週末で学校が休みの日に、今回の功績で二度目となる勲章を頂くことになった。
 しかも今回は、俺だけでなくジェーンとマーガレット、そしてユーリヤも一緒だ。
 召喚魔法で呼んだ者だから……と、前回フローレンス様を救出した時はジェーンが含まれて居なかったが、日頃から訓練場に居て他の騎士たちとも顔見知りだという事もあり、四人で授与されている。
 ちなみに、マーガレットは直接戦闘に参加していないものの、瀕死の騎士や街の人たちなど、もう助からないだろうと思われた人達を大勢救った事による勲章だ。
 ただ、国王の前でもユーリヤが抱っこをねだったので、勲章授与式の間は俺と手を繋ぐという事で妥協してもらった。
 ……周囲に居た偉い人たちから、どっちが母親なんだ? という呟きがちらほら聞こえていたが。
 そして授与式の後、

「……では新たに対魔族精鋭部隊を選抜するという事で。詳細は後日。国の、いえ人類の存続の危機です。各部隊、最も適任だと思われる者を専任してください。以上です」

 騎士団長や宮廷魔術師長に加え、フローレンス様と何故か俺たち――勲章を授与された全員――を交えた会議が行われ、新たな部隊を作るという事で話が纏まった。
 あまり長い会議ではなかったのだが、ユーリヤが寝てしまったのは御愛嬌としておこう。
 偉い人たちが部屋を出て行き、フローレンス様と俺たちだけが残る。

「皆さん。この度は本当にありがとうございました。改めて心から感謝申し上げます」
「いえ、第三王女直属特別隊として、宮廷に居る者として当然の事をしたまでです」
「ありがとうございます。ところで逃げた魔族の対策についてです。一先ず各部隊から精鋭を募り、ヘンリーさんの下に就けるのですが、他に何か策は無いでしょうか」
「え? 俺の下……って、さっきの対魔族精鋭部隊って、俺たちの事なんですか!?」
「当然です。これまで二度も私や国の危機を救ってくださり、いずれも魔族と直接対峙して退けているのです。他に適任の者など居ませんよ」

 猫被りモードのフローレンス様が当然です! とでも言いたげな表情だけど、魔族を退けた件については、一度目のオリバーはともかく、今回のロリコン魔族は勝手に帰っただけだから何とも言えないんだが。

「一先ず、対魔族という事ですが、以前にも申し上げたドワーフの国、もしくは巨人を探す要員を割り当てていただけないかと」
「聖銀の加工の件ね?」
「えぇ。現在、ドワーフの国を探していますが、流石に人手が足りなさすぎるのと、もしも国内になかった場合、我々では手が出せなくなってしまいます。魔族という人類共通の敵ですし、他国と連携出来ないものでしょうか?」
「なるほど。ごめんなさい。つい、自国の事ばかりに目がいってしまっておりましたが、ヘンリーさんの言う通りですね。他国との連携については、父と相談致します。あと、ドワーフ国探しについても、何か手を打ちましょう」
「よろしくお願い致します」

 一通り話を終え、一旦寮の部屋へ戻ろうかと王宮の門に向かって歩いて居ると、廊下でコートニーが待っていた。

「貴方……今回は、本当にありがとう。助かりましたの」
「いや、俺たちも王宮に仕える身だからね。気にしないで」

 そう言って立ち去ろうとすると、コートニーが何か言いたげについて来る。
 改めて礼が言いたかっただけのかと思ったのだが、

「貴方……お願いがありますの! 少しだけ私の話を聞いて欲しいですのっ!」

 何事かと振りかえると、コートニーが深々と頭を下げていた。

「えっと、流石に胸を大きくする方法は知らないんだけど」
「誰もそんな事は言っていませんのっ! そうではなくて、そちらのマーガレットさんの力を貸して欲しいんですの!」
「え、私ですか? 胸ならジェーンさんの方が……じ、冗談ですよっ! 泣かないでくださいっ!」

 マーガレットが俺の言葉に被せたから、コートニーが拗ねたじゃないか。
 まったく。マーガレットったら。

『明らかに、最初に胸の話をしたヘンリーさんの方が悪いですけどね』
(そんな事を言われても、コートニーのお願いと言えば、貧乳をどうにかして欲しいって事しか思いつかないだろ)
『そうとは限らないでしょう。教会絡みの事とかではないでしょうか』
(それはもう勘弁願いたいな。面倒臭いし)

「で、コートニー。マーガレットに何のお願いなんだ?」
「……先日、マーガレットさんは凄い治癒魔法で、大勢の人を救ってくださいましたの」
「サムソンと戦った時の話か。マーガレットは神聖魔法が得意だからな」
「えぇ。それで……その神聖魔法を用いて、私の妹を助けて欲しいんですの。この通りですのっ! 身体を差し出せというのなら、差し出しますの。私の事を好きにして構わないので、どうか妹を助けて欲しいですのっ!」

 コートニーが先程よりも更に深く頭を下げる。
 しかし、身体を差し出すから妹を助けてくれって、コートニーは一体どういう目で俺の事を見ているのだろうか。

『ヘンリーさん。そういう目ですよ』

 アオイのツッコミを無視して、一先ずコートニーの話を聞く事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

俺だけ異世界行ける件〜会社をクビになった俺は異世界で最強となり、現実世界で気ままにスローライフを送る〜

平山和人
ファンタジー
平凡なサラリーマンである新城直人は不況の煽りで会社をクビになってしまう。 都会での暮らしに疲れた直人は、田舎の実家へと戻ることにした。 ある日、祖父の物置を掃除したら変わった鏡を見つける。その鏡は異世界へと繋がっていた。 さらに祖父が異世界を救った勇者であることが判明し、物置にあった武器やアイテムで直人はドラゴンをも一撃で倒す力を手に入れる。 こうして直人は異世界で魔物を倒して金を稼ぎ、現実では働かずにのんびり生きるスローライフ生活を始めるのであった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?

シトラス=ライス
ファンタジー
 漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。 かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。 結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。 途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。 すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」  特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。  さすがは元勇者というべきか。 助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?  一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった…… *本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...