英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人

文字の大きさ
上 下
145 / 343
第5章 新たな試練

第145話 召喚魔法

しおりを挟む
「少年、やるではないか。あのタイミングで攻撃してくるとは思わなかったぞ。ただ、その程度の魔法であれば、発動した所でワシに傷を与える事は出来んがな」

 サムソンは片手でファイアーボールを防いだらしく、平然と立って居る。

「な、なんだって。まさか俺の……ファイアーボール……が効かないなんて! そんな……ファイアーボール……が。……ライトニング……なら、どうだ?」

 再び会話とみせかけて炎の弾を二発と、風の精霊魔法に属する電撃の魔法も放ってみた。

(アオイ。効果範囲が狭くて、威力の高い精霊魔法って何がある?)
『残念ながら、上位の精霊魔法は効果範囲が広い物が多いので、街中では不向きなんですが……それより、容赦ないですね』
(当然だ。無関係で、戦闘要員ですらない街の人々に危害を加えるような奴に、情状酌量の余地はない!)

 アオイと会話しつつも、煙から目を逸らさずに注視していると、中から人影――サムソンが飛び出してきた。

「少年、見そこなったぞ! 男なら男らしく、魔法などとくだらない物を使わず、直接ぶつかってこい!」

 流石に先程の無詠唱魔法三連続は防げなかったのか、上半身が裸になっている。
 相変わらずダメージを負っているようには見えないが、かなり頭にきているようだ。
 しかし、自分自身を神聖魔法で強化しているというのに、魔法をくだらないって……矛盾しまくりなんだが。
 まぁ確かに、こいつ自身が魔法を使って攻撃はしてこないけどさ。

『待ってください。あの怒りで顔を真っ赤にした状態での、魔法がくだらないという発言……もしかして、あの男は本気で言っているんじゃないですか? 魔法なんて要らないと』
(いや、でも思いっきり身体強化してるだろ。神聖魔法で)
『えぇ。ですが、それが自分で使ったものではなく、誰かが掛けたものだとしたら……少し調べますので、時間を稼いでもらえますか?』

 アオイの依頼に従い、精霊魔法で男を氷漬けにしては、数秒で氷を破られ、土の壁で固めて同様に突破される。
 その度に距離を取って、周囲に被害が出無さそうな大通りで鬼ごっこを続けていくと、

『わかりました! サムソンと名乗る男は、どうやら本当に神様から選ばれた男らしく、伝説級の人物みたいです』

 アオイが想定外の言葉を告げる。

(おいおい。伝説級の人物って、要はジェーンみたいな過去の英雄だって言うのか!?)
『残念ながら、そういう事です』
(だけど、それっておかしくないか!? ジェーンだって、エリーのホムンクルスが無いと実体が……って、待てよ。じゃあ、ホムンクルスみたいな物があって、俺と同じように過去の英霊を召喚する奴が現れたら……)
『えぇ、そういう事です。ですが、それを考えるのは後です。このサムソンは身体を傷付ける事が出来ない代わりに、弱点があります。あの男性にしては長すぎる髪――あれを切れば、神様から与えられた力を失うようです』

 アオイがどうやって調べているのかは知らないが、弱点まで分かるのか。

「ウインドカッター!」

 以前、ソフィアが俺に向けて放った風の刃を放つと、

「……むぅ」

 俺との鬼ごっこで怒り狂っていたサムソンが、一転して真顔になり、初めて自ら後ろへ下がった。
 どうやらアオイの言う通り、髪の毛が弱点というのは正解らしい。

「ジェーン! そいつの髪の毛を狙え! 髪の毛を切られると、こいつは弱体化する!」
「……くっ!」
「逃がすかっ!」

 身をひるがえし、先程までの戦いが嘘のように攻守逆転する。
 だが背を向けて逃げる相手だろうと、俺がやる事は変わらず、風の刃をその背に向けて十連続で放つ。
 元々パワーだけで敏捷性に欠けるサムソンは、四つ目までは避けたものの、五つ目の風の刃で髪が切られ、残り五つの風の刃をもろにくらって、身体に大きな傷を受けて倒れる。

「とどめだ!」

 それから俺は大きく跳び、倒れたサムソンの心臓へ剣を突き刺して……流石に動かなくなった。

(アオイ。先程の英霊の話が真実だとすると、こいつをどうするのが正解だと思う?)
『私が言うのも何ですが、ちゃんと成仏させてあげるのが良いかと。マーガレットさんに来てもらいましょう』

 上手い事を言って一人で戻って来て欲しいとメッセージ魔法で伝え、現れたマーガレットに事情を説明すると、

「ターンアンデッド」

 聖女らしく、サムソンの魂を成仏してくれた。
 だがその直後、サムソンの身体が急激に縮み、人型の小さな何かに変わっていく。
 いや、俺はこれに見覚えがある。

「ホムンクルスか……」

 そこには、少し形は違うものの、エリーと一緒に作ったホムンクルスがあった。

『ヘンリーさん。先程のマーガレットさんの魔法で、このホムンクルスの亡骸から、暗黒魔法の魔力が消えました。あの男の髪を切った時点で神聖魔法の魔力は消失していたので、おそらく暗黒魔法によって魂が召喚されていたのではないかと』
(え? 俺が使う召喚魔法も、暗黒魔法の一種なの!?)
『いいえ。そうではありませんが……待ってください。この亡骸から、僅かながらエルフの魔力が感じられます』
(という事は、このホムンクルスを作ったのはエルフなのか?)
『わかりません。エルフが作ったのだとしたら、もっと強い魔力を感じると思うのですが』

 アオイが亡骸に対して魔力の調査を行っていると、突然そのホムンクルスが黒い炎で燃え上がり、灰すらも残らずに消えてしまった。

「何が起こったんだ!?」
「すみません、わかりませんでした」
「お兄さん、ごめん。私にも何が起こったのか、さっぱり」

 ジェーンとマーガレットが驚き、

『魔法を感知する事が出来ませんでした。かなり強力な魔力で隠蔽されていると思われます』

 アオイすらもお手上げ状態となっていた。
 そんな中で、

「にーに。そこに、へんなのがいるよー」

 唯一ユーリヤが何かに気付いた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

処理中です...