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第5章 新たな試練

第144話 必殺技

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 俺とジェーンによる二方向からの連携攻撃を仕掛け、俺が正面から戦っている内に、

「はっ!」

 ジェーンのレイピアが男の背中に突き刺さる……が、その皮膚を突き破る事なく、レイピアの先端が折れた。
 男は鎧を身に着けず、普通の布の服しか着ていないのだが、身体強化魔法で防御力も向上しているのだろう。
 ……流石に生身で剣を防ぐのは向上し過ぎな気もするが。

「ジェーン、これを!」

 男の剣を受け流しつつ、左手でレイピアよりも頑丈な剣――エストックを生成し、ジェーンの足元に向かって投げる。
 しかし、この男……硬度を上げて生成した俺の剣を素手で防ぐのだが、本当に人間なのだろうか。
 俺の攻撃を回避せず、全て腕で弾き、体勢を崩した所へ強烈な拳が飛んでくる。

「ぐっ……」

 体勢を崩して避ける事が出来ず、何とか拳を盾で防いだのだが、盾を着けている左腕が痺れだす。
 だが、隙だらけになっている男に向かってジェーンが再び斬りつけ、

「お前じゃ話にならん」

 男の回し蹴りにより、ジェーンの剣が弾き飛ばされた。
 刃を素手で止めるし、魔法は効かないし、どうすればダメージを与えられるのか。

『ヘンリーさん。攻撃魔法を使ってくれませんか?』
(アオイ? だけど、こいつに魔法は効かないんじゃないのか?)
『確かに、解除魔法は無効化されました。また騎士たちの話から、攻撃魔法が効かないという話も聞いています。ですから、私が使える最強の魔法の一つを試させてください』
(最強の魔法の一つ!?)
『はい。いくつかあるのですが、街中という事もあり、効果範囲が狭く、かつ威力の高い魔法を使います……本当は、空から隕石を落としたり、次元の狭間へ運んだりする方がより威力が高いのですが、それらを使うと辺り一面を無に帰してしまうので……』
(流石に街を焼け野原にするのは勘弁かな。この男よりも大きな被害を出しちゃマズイだろ)
『えぇ。ですから、極力範囲の狭いものを使います……が、一応ジェーンさんには離れてもらってください』
(わかった)

 アオイが精神を集中し始めたので、男を牽制しつつ、そろそろ頃合いかという所でジェーンに声を掛ける。

「ジェーン! でかいのが行くぞ! 離れろっ!」

 俺の指示に従い、ジェーンが大きく距離を取ったのを確認すると、ベルトに挿した杖を手にして、アオイに言われた通りの言葉を言い放つ。

「焼き尽くせ! コンシューミング・ファイア」

 左手の小さな杖から生み出された、強大な魔力を濃縮させた白い炎の弾が男に向かって飛んでいき、着弾すると共に霧散する。

『そんなっ! 神の力を借りた火――神の火がかき消されるなんてっ!』
「神の火が効かない!?」
『えぇ。あれは本来、対象が燃え尽きるまで燃え続けるという魔法で、対個人としてはかなり高威力の魔法なんです……」

 最強の魔法の一つと言っていた魔法が効かず、あのアオイが動揺している。
 しかし、神の火か。相手が燃え尽きるまで消えない火だなんて、恐ろしいな。
 けれど神の力を借りた火というワードに驚き、思わず口に出してしまったが、その神様の力を借りた魔法が効かないなんて、どうなっているのだろうか。。
 ……って、あれ? さっき使った神聖魔法も、神様の力を借りる魔法だよな。
 しかも、コートニーが居る魔法騎士隊も、半分は教会の人だって言うし、神聖魔法で攻撃を試した時点で効かないって思い込んでいて……もしかして神聖魔法以外なら効くんじゃないのか?

「少年。お主は剣士だと思っていたのだが、魔法も使えたのだな」

 あ……ユーリヤに使って貰っているという設定を忘れていた。
 まぁどのみち、こいつは何とかして倒すつもりなので、バレた所で問題は無いが。
 どうせバレたのだから、カマをかけてみるか。

「あぁ、そうだ。そして、今の実験で分かった。お前は神聖魔法による攻撃を無効化するんだな」
「ふ……その通りだ。ワシの名はサムソン。神に選ばれし者だ。神の力により、ワシには傷一つ付ける事は出来んぞ」
「神に選ばれし者ねぇ。そんな戯言が俺に通じるとでも……ファイアーボール!」

 必殺、無詠唱魔法による会話の途中での不意打ち攻撃。
 ベルトに戻さず、未だに左手に持ち続けていた杖から炎の弾を放つと、サムソンと名乗った男に命中し、爆発した。
 思った通りだ。
 神に選ばれた……という言葉の真偽はさておき、何故か神聖魔法による攻撃や解除魔法は無効化されるけれど、精霊魔法は無効化出来ないらしい。

『さすがは外道王様です』
(外道王ってなんだよ。変態王じゃなかったのかよ。いや、変態王って呼んで欲しい訳ではないけどさ)
『いえ、あのタイミングで魔法攻撃を放つなんて、騎士はもちろん、普通の人では思いつかないなと』

 アオイと話している内に、爆発による煙が薄れ始めると……左の掌が少し焦げただけのサムソンが、不敵な笑みを浮かべて立って居た。
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