英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人

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第5章 新たな試練

第140話 爆発事件

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 シャロンの家族は見つけられなかったものの、一先ず獣人族の村へ連れて行くという約束は果たす事が出来た。
 なので、今まで獣人族の村探しを担当してもらっていたジェーンとアタランテもドワーフの国探しに参加してもらい、第三王女直属特別隊で一丸となって本来の目的に全力を注ごう。
 そんな事を考えながら宮廷の正門に向かって歩いて居ると、突然風の魔法か何かで拡張された声が響き渡る。

「城下町にて爆発事件発生! 第一騎士隊及び魔法騎士隊はただちに出動! 冒険者ギルド並びに自警団と連携を取り、正確な現場の情報を入手せよ。繰り返す……」

 今いる場所が訓練場の近くだからだろうか。
 それとも、今まで俺が王宮に居た時にこのような事が起こらなかったからだろうか。
 いずれにせよ、周囲が慌ただしくなり、遠くから騎士たちと思われる怒号にも似た声が聞こえてくる。

「ん……にーに。どーかしたのー?」
「あ、ユーリヤ。今ので起きちゃったか。詳しい事は俺もわからないけど、街で事件があったんだって」
「ふーん。……じけんって、なーに? おいしいのー?」

 まぁユーリヤには分からないよね。
 というか、俺にも何が起きたのか全くわからないんだけどさ。
 しかし正式には仕官していないとはいえ、一応俺も第三王女直属特別隊という王宮に仕える者の一人だ。
 ドワーフの国を探すという任務に就いているものの、緊急事態っぽいし、しかも運が良いのか悪いのか、宮廷に居あわせているのだから、何かすべきだろうか。
 それとも、正規の騎士団の邪魔にならないように任せるべきか。

「……うん。こういう時のルールを聞いていないから、わからないな。という訳で、聞きに行こうか」

 まだ眠そうなユーリヤをおんぶしたまま、正門からいつもの小部屋へと進路を変える。
 暫し歩き、あと少ししたらいつもの場所へ着くという所で、顔見知りのメイドさんと遭遇した。

「ヘンリー様! お探し致しました。第三王女フローレンス様がお待ちですので、謁見の間へお急ぎください」
「謁見の間!? いつもの小部屋ではなくて?」
「はい。そちらのお子さんは私が見ておきますので、とにかく急いでください」

 いつもはもっと丁寧な女性なんだけど、先程の事件のせいか、いつもと様子が違う。
 ユーリヤが眠そうに、というか殆ど眠っている状態に近いので、メイドさんに預けて俺は謁見の間へと急ぐ。

「失礼します。第三王女直属特別隊隊長ヘンリー=フォーサイスです」

 魔族からフローレンス様を助けて勲章を貰った時以来となる謁見の間へ行くと、国王様とフローレンス様、そして以前俺をスカウトしてきた騎士団長の三人が居た。
 国王や第三王女が居る謁見の間に三人しか居ないという一目で異常事態だとわかる状況で、真っ先にフローレンス様が王女モードで口を開く。

「ヘンリー=フォーサイス隊長。急にお呼び立てしてしまい、申し訳ありません。ですが、時間も無いので率直に要件を伝えます。魔族が……街に魔族が現れました」
「えっ!? ま、魔族ですか!?」
「はい。より正確に言うと、魔族ではないかと疑う程、強力な者が現れ、街で暴れているという事です」

 魔族と聞いて、魔法学校に生徒として潜入していたオリバーの事を思い出す。
 目的は未だにハッキリとわかっていないが、フローレンス様を狙っていた事だけは確かだ。
 はっきり言って、人間に化けられると見た目では全く気付けないので、オリバー以外にも居るのではないかと思っていたが、やはり存在したらしい。
 だが仮に魔族だとしたら、今まで人間に紛れて過ごしていたのに、どうして街で暴れるという目立つ行動を取ったのだろうか。

「あの、魔族だと疑う根拠は何でしょうか? 正直言って、魔族が堂々と街で暴れるなどというのは考えにくいのですが」
「先程も申し上げた通り、魔族ではないかもしれません。ですが……その、異様な強さと申しますか……」

 フローレンス様が言い難そうにしていると、直立不動で立って居た騎士団長が口を開く。

「姫様。ここは私から説明させていただきます。ヘンリー殿。現在、我が騎士団の二隊が現地に居るのだが、最初に駆けつけた第一騎士隊は全滅。第二陣として向かった魔法騎士隊も半数が戦闘不能となり、残った半数が状況を知らせに戻って来たという状況となっている」
「騎士隊が全滅!? 正規の騎士たちが!?」
「あぁ。報告によると、暴れているのは二十代半ばの男が一人だけ。魔法は使わず、物理的な腕力だけで数十人の騎士隊を圧倒。一方で、魔法騎士隊による遠距離からの魔法攻撃は、着弾しているにも関わらず、効いていないそうだ。今は第二騎士隊と街の自警団などが街の人々を避難させている。誠に遺憾だが、我が騎士団では足止めをするのが精一杯なのだ。ヘンリー殿、力を貸していただけないだろうか」

 なるほど。
 たった一人で数十人をもろともしないとなると、確かに魔族だと疑わざるを得ないな。

「わかりました。一先ず向かいます。今、その男はどこに居るのでしょうか」
「最初に爆発があったのは、錬金ギルドだ。今は、そのすぐ近くの広場で何とか足止めをしているという状況だ」
「錬金ギルドですね。わかりました。今すぐ出ます」
「すまない。すまないが……頼む」

 緊急事態なので今すぐテレポートを使いたいという気持ちを抑えつつ、俺は急いで謁見の間を後にした。
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