上 下
139 / 343
第5章 新たな試練

第139話 青田買い

しおりを挟む
「あの、ヘンリーさん。お忘れかもしれませんが、私は牛耳族なんですけど」

 うん、知ってる。知っているんだ。
 けど、獣人族が更に細分化された種族毎に村を作っているなんて、知らなかったんだよ。
 ……まぁ今になって思えば、樹の上に村がある時点で違うと気付くべきだったのだが。
 けど、リスと牛でも同じ獣人族だ。
 もしかしたら、何か知っているかもしれない。

「シャロン。この女性の話っぷりと、この獣人族の村の立地からして、ここには確かにリスの獣人族しか居ないかもしれない。けど、獣人族の繋がりで家族に繋がる情報があるかもしれないだろ? ……という訳で、どこかで牛耳族の村の事を聞いた事はないか?」

 困惑した表情のシャロンをなだめつつ、リス耳族の女性に尋ねてみると、

「え? 聞いた事なんてないけど」
「じゃあ、知っていそうな人は誰かいない?」
「いないだろうな。みんな樹の上から殆ど降りないし」
「え? マジで? どうやって生活しているの!?」
「どうやって……って、木の実とか樹液とか、あと雨水を貯めておいたりするし、あと時々近くの泉へ行ったりとか……」

 いつの時代の文化だよと、思わず突っ込みたくなる。
 とはいえ森の中に珍しい樹があるそうで、その樹液を採取して街へ行き、衣類などと交換する事もあるのだとか。
 うーん。何だか、ここの獣人族の村人たちは人生を損している気がする。
 もちろん、部外者である俺が口出しすべき事ではないのは十分わかっているんだけどさ。

「えっと、君はこの樹から降りた事は無いの?」
「樹から降りた事くらいはあるに決まっているだろう。泉で水浴びしたりするし」
「街へ行ってみたいとかって思わないの?」
「まぁ興味はなくはないが……けど、母さんたちが許してくれないからな」
「ふーん……って、母さん? あ、あれ? まさかとは思うけど、まだ子供なの?」
「子供って言うなー! 私はもう十三歳だっ!」

 十三歳!? 俺より二つも年下!?
 いや、確かに顔も身体も小柄だし、十三歳と言われればその通りなんだけどさ。
 けど、村への侵入者を防ぐ門番みたいな役割を担っているのが子供とは思えないから、シャロンの爆乳みたいに小柄な種族だと思ったんだけど……違うのか!?

「えっと、リス耳族は十三歳で仕事をするの?」
「仕事? まぁ家のお手伝いはするけど?」
「お手伝い……この村の門番もお手伝いなの?」
「門番? そんな事してないんだけど。ただお昼寝してたら、知らない人たちが突然現れたから、入って来るなって言っただけだ」
「……でも、ずっとここで俺たちをくい止めているよね?」
「それは、お前らが私の尻尾に乗っているからだろっ! 胸は揉むし、抱きつかれるし、尻尾はよだれまみれだし……酷過ぎるっ!」

 言われてみれば、俺とシャロンは立ち上がったけど、ユーリヤは未だに女性、いや少女の尻尾の上で幸せそうに眠っていた。

「……ま、待ってくれ。確か君は十三歳って言ったよな?」
「言ったわよ」
「君の名は?」
「……ティナ」
「ティナ……君はもしかしたら、凄い逸材かもしれない。五年後……いや、三年後にまた会ってくれ!」

 十三歳にしてエリーと同じくらいの程良い大きさの胸の少女ティナ。
 十三歳だぜ、十三歳。ソフィアより年下なのに、この胸……この子は、将来ニーナやジェーン程の巨乳になる可能性を秘めているぞ。
 しかも仮に巨乳でなかったとしても、モフモフ尻尾付きだ。
 是非、育った姿を見てみたい!

『逃げてっ! ティナさん、変態から逃げてーっ!』
(誰が変態だ。今は何もしていないだろ)
『あれだけ抱きついて、その上にずっと胸を触っておいて、何もしていない!? ……ヘンリーさんは、再会した時には何をする気なんですかっ!』
(いや、あれは不可抗力だし。手の中におっぱいがあったら、揉むのは仕方がないだろ?)
『仕方なくありませんよっ!』

 リス耳族のティナ……もしかしたら、巨乳三銃士の新たな一人となるかもしれない少女の事を、しっかりと覚えておこう。
 改めて、マジマジとティナを眺めていると、

「で、いつ帰ってくれるの!? 出来れば、もう来ないで欲しいんだけど」

 ティナが心底疲れた表情で俺を見てくる。

「そうだな。他の獣人族の村がどこにあるか教えてくれたら、すぐにでも帰るぞ」
「だから、知らないって言ってるだろ!」
「そこをなんとか」
「なんとかなる訳ないだろっ!」

 ティナと不毛な言い合いをしていると、

「ヘンリーさん。私の家族を探すためとはいえ、本当にご存知ないみたいですし、そろそろ……」
「……わかった。シャロンがそういうなら、諦めるか」
「お姉さん……ありがとう。あと、この子供を尻尾から降ろしてくれると助かる」

 見かねたシャロンが諦め……いや、最初から俺しかこだわってなかったんだけどさ。
 眠っているユーリヤを抱っこすると、ようやくティナが立ち上がる。
 改めて見ると、結構可愛いし、小柄な割にそこそこの胸……イイな!

「じゃあ、三年後にまた来るから」
「来なくていいよっ! というか来るなっ!」
「あっはっは。照れなくても良いって。その時は、俺は君を連れて帰る。ティナに俺の元へ来て欲しいんだ」
「照れてなんか……え!? それって、どういう意味……」
「じゃあ、そういう事で!」

 驚いた表情を浮かべるティナの前で、テレポートの魔法を使って宮廷へ。
 ユーリヤを抱っこして、シャロンを抱き寄せてテレポートしてみたけれど、意外といけるな。

「シャロン。すまない。家族の情報が何も得られなくて」
「いえ、仕方ないですよ。気になさらないでください」
「また任務の途中で獣人族の情報があったら、教えるから」
「ありがとうございます。……ところで、最後のティナさんへの言葉って、どういう意味だったんですか?」

 神妙な表情から一転したシャロンが困った質問を投げてきた。
 バカ正直に、「胸を揉んでもあまり怒らなかったティナに、胸が育ってから毎日触らせてもらうため」とは言えない。

「あ、あれは……見所があったからね。樹の上で生活しているリス耳族の少女だし、きっと身体能力に優れているから第三王女直属特別隊に推薦しようと思って」
「なるほど。流石ヘンリーさんです。常に部隊や姫様の事を考えられているんですね」

 シャロン、ごめん。
 キラキラと目を輝かせて俺を見つめてくれるけど、本当は違うんだっ!
 というか、むしろシャロンの胸も気持ち良かった……って思ってたくらいなんだ。
 流石に心が痛むので、ユーリヤを抱っこしたまま、今日はそうそうに引き上げる事にした。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...