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第5章 新たな試練

第138話 もふもふ抱き枕

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 小柄な身体に、ほどよく掌に納まる大きさの胸。
 シャロンが異様に大き過ぎるだけであって、なんと言うか、ほっこり落ち着くサイズだ。

「おい、だから揉むなと言っているだろっ! それと、私の上から早く降りろ!」

 言われて見てみると、俺は女性の腰の上に腰掛け、左手が女性の胸に乗っている。
 素晴らしい状況なのだが、相手は獣人で、今回はシャロンの家族を探しに来ているので、あまり変な事はしないほうが良いだろう。
 勿体無いと思いつつ、腰を上げようとすると、

「いやっ! 絶対に降りませんっ!」
「え? シャロン?」
「こんな所から落ちたら、死んじゃいますっ!」

 俺の右隣に座るシャロンが抱きついてきた……というより、押し倒してきた。

「あははー。にーに、たおれたー」
「シャロン。ここは少し広いから大丈夫だよ。樹の枝や葉でしっかり足場が組まれて居るみたいだし」
「け、けど、降りるのは無理ですっ! うぅ……また漏れちゃうよぉ」

 あー、さっき樹から落ちた時の恐怖のせいか。
 はっきり言って、あれは俺も肝を冷やした。
 最悪、俺も飛び降りて、ユーリヤとくっついたままシャロンを空中で抱きかかえつつ、その状態からテレポートをするという離れわざを披露しなければならない所だったしな。
 しかし、フカフカの敷き布団に、重厚だけど超柔らかいおっぱい掛け布団に挟まれて、おまけに柔らかい抱き枕まであって……ユーリヤ共々眠ってしまいそうな程、心地が良い。
 というか、もう寝てしまおうか。温かくて柔らかくて気持ち良い……こんなベッドは初めてではないだろうか。

「だ、か、ら、私の上から降りろーっ! 人の尻尾の上で寝るなっ! あと、私は抱き枕じゃないっ! 抱きつくなっ!」
「ん、尻尾? 確かに、フカフカ布団とうより、モフモフクッションという感じかも」
「クッションとか言うなっ! 私たちリス耳族にケンカを売りに来たのかっ!?」
「いやいや、ケンカを売りになんて……って、リス耳族!? リスの獣人なの?」
「見れば分かるだろぉぉぉっ! 樹の上に村を作り、自分の身長くらいある大きなモフモフした尻尾を持つ種族が他にあるかっ!?」
「……キツネとか」
「それは尻尾のモフモフ感だけだけだろっ! キツネが樹の上に棲むかっ!」

 オレンジ色の髪の毛から生える同色の大きな耳と、素晴らしいモフモフ感の大きな尻尾を持っており、小柄で樹の上に棲む……まぁ確かに言われてみればリスかもしれない。
 獣人って、ケモミミと尻尾を除けば普通の人間と同じだし、獣人族の中でも何の種族だとかって、わからないんだよな。

「じゃあ、ちょっと教えて欲しいんだけどさ」
「だったら、まず私を離せっ! 尻尾から降りろっ! ……って、そっちの子供っ! よだれっ! 私の尻尾によだれを垂らすなっ!」

 子供と言われてユーリヤの事だと思い、首だけ動かして探してみると、いつの間にか俺の背中から離れ、モフモフ尻尾に抱きついて気持ち良さそうに眠っていた。
 わかる。わかるよユーリヤ。
 俺も眠い。このモフモフ布団と小さな抱き枕、おっぱい布団の三段攻撃からは逃れられないよな。

「お前ら、いい加減にしろーっ! 本当に何しに来たんだよっ! 樹の上が怖いなら帰ってくれよ。あと、お願いだから、そろそろ胸を触るのをやめて……」

 女性が起こりながら身体を起こそうとするものの、俺が抱きつき、シャロンが覆い被さり、ユーリヤと俺が尻尾の上に居るからか、身動きが取れないらしい。
 これは、あれかな?
 尻尾が弱点的な感じかな?
 尻尾が抑えつけられているから、力が出ない的な。

『ヘンリーさん。既に泣きが入っていますから、そろそろ解放してあげてはどうでしょうか?』
(いや、俺は最初からすぐに離れるつもりだったんだけど、シャロンがどいてくれないからさ)
『そう言いながら、シャロンさんに声を掛けず、二人の胸の感触を楽しんでいますよね?』
(そうなんだよ。手の中に納まる普通サイズのおっぱいと、俺の身体に押し付けられるシャロンの爆乳……こんなの居心地が良過ぎて動ける訳がないだろ)
『……今、この状態で獣人族の援軍が来たら、即座にやられますよ?』

 おっと。アオイの忠告はもっともだな。
 素敵な抱き枕と布団のセットで思わず寝そうになった……というかユーリヤは本当に寝てるけど、もしかしたらこれがリス耳族の罠なのかもしれない。
 可愛いくて、抱き心地の良い女性を入口に配置し、骨抜きになった所を別部隊に攻められたら……この女性ごとテレポートで逃げようか。
 いや、流石に三人を連れてテレポートは無理か。
 仕方が無い。ここはアオイの意見に従うか。

「シャロン。もう大丈夫だから、顔を上げて」
「だ、大丈夫なんですかぁ?」
「あぁ、大丈夫だ。ほら、意外としっかりしているだろ?」
「そ、そうですね」
「俺がついているから、心配するな。ゆっくり起きよう」

 おそるおそるシャロンが起き上がったので、ようやく起き上がれるようになった。
 出来ればずっと抱き枕として抱いていたかったが、身体を起こして周囲を見てみると、

「……って、誰も居ない!? ここは獣人族の村なんじゃないのか!?」

 村の中――木々の間に家はあるものの、視界に誰も映らない。
 どういう事だと思って、すぐ下で倒れている女性に目を向けると、

「言っただろ? ここはリス耳族の村だって。リス耳族は基本的に憶病なんだよ。だから、外的から逃げる為に樹の上に棲んでいるし、何か揉めてそうな事があったら、家の中へ閉じこもって一切出て来なくなるんだ」
「なるほどな。で、胸も尻尾も触って居ないから教えて欲しいんだが、ここにシャロン――この女性の家族は居ないか?」
「出来れば、この子供を尻尾からどけて欲しいんだけど……そちらの女性はどう見てもリス耳族ではないわよね? ここはリス耳族の村。リス耳族以外は誰も棲んで居ないわよ?」
「な、なんだってー!」

 これまでの苦労は何だったのか。
 まぁ、その労力に見合うだけの美味しい、気持ちいい思いをさせてもらったので、俺はとしては構わないのだが。
 そんな事をやや本気で思っていると、シャロンが口を開いた。
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