上 下
135 / 343
第5章 新たな試練

第135話 ゴッドハンド

しおりを挟む
 教会とのやり取りがあった翌日。
 今日は放課後にシャロンのおっぱい――もとい剣術を見て癒された後、買い物と夕食を済ませて、ユーリヤをお風呂に入れ……いつも通りの日常を過ごした。
 そして、ユーリヤが眠った後、静かにベッドから出ると、

「主様。猫ちゃんの所へ行かれるんですよね? 私も連れて行ってください」
「貴方、私も付き合うわよ」

 ジェーンとアタランテが静かに起きてくる。
 三人で先日行った猫の集会で、あの猫たちが獣人族の村を見つけて、連れていくと言ってきたのが今日だ。
 なので、今日は商店街を回り、ちゃんと報酬となる大量の魚も用意している。

「ちゃんと見つけてくれていると良いな」
「そうですね。ですが、きっと大丈夫だと思います。猫ちゃんたち、可愛いですし」

 猫が好きなジェーンの思考が良く分からない事になっているが、猫たちが自ら三日だと言ったのだ。
 きっと大丈夫だろう。
 暗闇の中で二人が着替えるのを見つめ……見えないけど見つめた後、ワープ・ドアの魔法を使うと、三人で猫の集会場所へと移動する。
 移動した先では、ボスの白猫を筆頭に、多数の猫たちがニャアニャアと鳴いて居た。

「貴方。この猫たちは何を騒いでいるの?」
「ちょっと待って。俺も魔法を使わないと分からないよ……コミュニケート」

 俺の言葉と共に、淡い光が白猫を包み込むと、

『待って居たぞ、人間』

 先程までニャアニャア鳴いていた猫の言葉が理解出来るようになる。

(数日振りだな。それより取引の件だが、目的の場所は見つけられたのか?)
『当然だ。我らのネットワークをもってすれば、獣人族の村を見つけるなど、容易い事だ』
(おぉ、本当か! だったら、早速連れて行ってくれ)
『待て。それよりも人間。約束の品はどうした。この前の十倍の魚を持ってくると言っていたのに、何も持って居ないではないか』
(あぁ、その事か。俺は空間収納魔法っていうのが使えてな。荷物をいつでも好きな時に取り出す事が出来るんだよ……こんな風にな)

 手ぶらで来たように見えたらしく、空間魔法で大きめの魚を十匹程出して投げ与えると、不機嫌だった白猫の態度が一転して魚に飛び付く。
 もしかしたら、先程までニャアニャアと猫たちが騒いでいたのは、約束が違うと疑っていたのかもしれない。
 追加で二十匹程魚を取り出すと、周囲で鳴いている猫たちにも与える事にした。

「うふふ……皆、仲良く食べてねー」

 合計三十匹近くの魚を投げたので、ここに居る猫たちが、最低でも魚を一匹は食べられると思うのだが、魚が落ちた位置が悪かったのか、争うようにして魚を取り合う猫が居たのだが、それをジェーンが宥めていく。
 ジェーンは猫と意思疎通を図る魔法を修得していないはずなんだけど……まぁジェーンだからな。
 何でも出来る巨乳騎士だし、気にしないでおこう。
 ボス猫が魚を食べ終えたのを見計らい、

(一先ず今のは魚を用意していると示しただけだ。残りは、俺たちを獣人族の村へ連れて行ってからだ)
『……うむ、分かった。では、早速道案内をしてやりたいのだが、一つ問題がある』
(何だ?)
『その目的地まで、それなりに距離がある。おそらく、一晩走り続けても到着しないだろう。我らは夜に生きる者。夜が明ければ、その辺りで寝るが、人間は同じようにはいかぬのだろう?』
(そうだな。俺たち三人は、徹夜で走り続ける体力はあるが、諸事情であまり時間を掛けられないんだ)

 まぁ諸事情っていうのが、ユーリヤの事なんだが。
 何とかユーリヤが目を覚ます前に帰らないと、またあの一睡も出来ない事態になってしまう。
 結構辛いんだよな、あれ。

(ところで、一晩走り続けても到着しないって言ったけど、それは猫の足での話だよな?)
『もちろんそうだが……人間よ。まさか我らよりも、足が速いと言う気か!?』
(いや、普通に俺たちの方が速いと思うが。そもそも身体の大きさが違うし。物は試しって事で、誰か選んでくれたら、俺たちが抱きかかえて走るけど)
『笑止! 誰が人間などに抱きかかえられるものか! 我らは人間に飼われている猫とは違う! 誰を選ぼうが、自らの足で走る事を選ぶに決まっている!』
(抱きかかえるのは、このゴッドハンドの異名を持つ、猫撫でマスターのジェーンだが)

 ゴッドハンドも猫撫でマスターも、俺が勝手に今名付けた適当な称号だが、猫好きジェーンの撫で技術は良く分かっているのだろう。
 少し間が空き、

『……仕方が無い。取引を確実に遂行するため、我が行こう。いや、あくまで確実にそなたらを目的地へ連れて行く為であってだな。決して、その女に撫でられたい訳では無いのだぞ!?』
(はいはい。そういう事にしておくよ)
『いや、本当だから。本当なのだっ! ……おい、人間。何故、我を見てニヤニヤするのだっ!』

 ボス猫自らが、俺たちへ同行すると言ってきた。
 気持ちは分かるよ。俺だってジェーンに抱っこして貰いたい……というか、あの柔らかくて大きな胸に顔を埋めたいし。
 ジェーンが猫を抱きかかえたら、おのずと胸にくっつけるよな。
 猫、いいなぁ。
 猫に変身する魔法はないだろうか。ドラゴンが幼女に変身するのだから、俺が猫に変身出来ても良いと思うのだが。
 ……今のドラゴン幼女で、ユーリヤの事を思い出した俺は、一瞬部屋へと戻り、ユーリヤが起きていない事を確認して、獣人族の村へと出発する事にした。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

処理中です...