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第5章 新たな試練
第116話 エリーからのSOS
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眠い……。
殆ど眠って居ないので、今日は学校を休もうと思っていたのだが、
『ハー君、助けて。お話ししたい』
というメッセージ魔法が来た。
送ったのは間違いなくエリーだろう。わざわざ朝に魔術師ギルドへ寄って送ってきた程なので、余程困っている事があるのだろう。
今日は昼くらいまで寝て過ごすつもりだったので、大急ぎで学校へ行く準備を済ませ……瞬間移動魔法を使っても遅刻してしまった。
既に授業が始まっているので、流石にソフィアも魔法訓練場には居ない。
だが代わりに、エリーが一人で錬金魔法を使用していた。
床にしゃがみ込んだエリーは手元の魔導書に集中しているので、俺とユーリヤの存在に気付いていないのだが、何か様子がおかしい。
落ち着きが無いというか、注意力が散漫というか。
魔導書を眺めては、すぐにページを変えたり、何も無い虚空を見上げたりしていて、そして俺たちの存在に気付く。
「……ハ、ハー君っ!」
エリーが俺に気付いた途端、立ち上がり、駆け寄って来て俺に向かってダイブしてくる。
エリー……普段なら構わないけど、ユーリヤを抱っこしている時には勘弁してくれ。超危ないから。
何とかエリーを受け止め、ユーリヤを押しのける勢いで抱きついてくるので、ずりずりと滑らせるようにしてユーリヤを一旦床へ降ろし、エリーを落ち着かせる。
一先ず話を聞こうと床へ座ると、右側からエリーが、左側からユーリヤが抱きついてきた。
「ハー君、ハー君、ハー君っ!」
「はーく。はーく。はーくー」
……いや、話があるんじゃなかったのかよ。
そして、ユーリヤはエリーの真似をしなくて良いから。
「エリー。どうしたんだ? 何か相談があるんじゃないのか?」
「うん……あのね。最近、ハー君がエリーに冷たい気がするのー!」
「……え? 俺が?」
「そうだよー。教室では他の女の子に囲まれて居てー、エリーが近寄れる雰囲気じゃないしー、放課後はすぐに居なくなっちゃうしー」
「後者は王宮の任務があるから仕方がないけど、前者は俺のせいじゃないよね?」
「でもね、皆は『エリーは家でヘンリー君とイチャイチャ出来るから、教室くらいは良いでしょ?』って……でも、放課後にハー君とは会えない事が多いのにー」
そう言って、エリーが俺の首に回した腕に力を入れる。
何だ。助けてっていうのは、こういう事か。
メッセージ魔法まで送って来る程だったから、余程の事かと思ったけれど、特に大した話ではなかったらしい。
……緊張の糸が切れてしまったからか、急激に眠くなってきた。
「あのねー、ハー君。それと困った事があってねー。最近、お母さんがお仕事から帰って来ない事が増えたんだー」
「……仕事が捗っていて、熱心になっているんじゃないのか? 前に研究が捗るとかって事を言っていた気がするし」
「そうなんだけど、夜にお家で一人だと寂しくて……ねぇ、ハー君。お家に泊まりに来てよー。エリー一人しか居ないし」
「……ふわぁ。そうだな。また今度遊びに行く……よ」
何だかエリーから凄い事を言われた気もするんだけど、ダメだ。完全に睡魔にやられている。
思考が纏まらず、瞼が重くて……寝よ。
エリーとユーリヤが頭を打たないように気をつけながら、ゆっくりとその場に寝転ぶ。
「悪い……昨日、全く寝れなくてさ……」
「わかったー。じゃあ、エリーもハー君と一緒にお昼寝するー」
「ユーリヤもー」
二人の柔らかくて、温かい体温を感じながら、魔法訓練室で爆睡してしまった。
……
「……君。ヘンリー君!?」
女性に名前を呼ばれて目を覚ますと、視界に白い太ももが映る。
どうやら誰かが俺を起こそうと、声を掛けているらしいが、頭のすぐ傍に立って居るから黒いパンツが丸見え……って、何だ?
スカートとパンツだし、女性の太ももには違いないんだが、ちょっと太いような……
「……って、うわぁぁぁっ! イザベル先生!? 寝起きに何て物を見せやがるんですかっ!」
薄らと開いた視界から眺めていた太ももとパンツがイザベル先生の物だと分かり、かなり気持ち悪くなる。
せっかく気持ち良く寝ていたのに、目覚めが最悪じゃないか。
「へぇぇぇ。遅刻してきた上に、お昼休みまで訓練室で女の子二人と一緒に寝ていたヘンリー君が、そんな事を言うのね?」
「ち、違うんです。まさか起きた直後にそんな即死級の罠があるとは……じゃなくて、昨晩ユーリヤがグズって一睡も出来無くて」
「ふぅぅぅん。小さい子のお世話が大変なのは分かるけど、ちょーっと態度が酷くないかしら?」
うわぁ。イザベル先生がめちゃくちゃ怒ってるよ。
ちなみに俺より先にエリーが起こされ――というか、俺がなかなか起きなかったらしく、既にエリーはしっかり怒られた後らしい。
訓練室の入口近くに立たされ、シュンとしている。
一先ず、イザベル先生に謝り倒し、午後の授業は真面目に受けるという事で、許して貰えた。
……睡眠は取れたから身体的には大丈夫だとは思うけど、即死級の精神的ダメージの方が辛いよ。
殆ど眠って居ないので、今日は学校を休もうと思っていたのだが、
『ハー君、助けて。お話ししたい』
というメッセージ魔法が来た。
送ったのは間違いなくエリーだろう。わざわざ朝に魔術師ギルドへ寄って送ってきた程なので、余程困っている事があるのだろう。
今日は昼くらいまで寝て過ごすつもりだったので、大急ぎで学校へ行く準備を済ませ……瞬間移動魔法を使っても遅刻してしまった。
既に授業が始まっているので、流石にソフィアも魔法訓練場には居ない。
だが代わりに、エリーが一人で錬金魔法を使用していた。
床にしゃがみ込んだエリーは手元の魔導書に集中しているので、俺とユーリヤの存在に気付いていないのだが、何か様子がおかしい。
落ち着きが無いというか、注意力が散漫というか。
魔導書を眺めては、すぐにページを変えたり、何も無い虚空を見上げたりしていて、そして俺たちの存在に気付く。
「……ハ、ハー君っ!」
エリーが俺に気付いた途端、立ち上がり、駆け寄って来て俺に向かってダイブしてくる。
エリー……普段なら構わないけど、ユーリヤを抱っこしている時には勘弁してくれ。超危ないから。
何とかエリーを受け止め、ユーリヤを押しのける勢いで抱きついてくるので、ずりずりと滑らせるようにしてユーリヤを一旦床へ降ろし、エリーを落ち着かせる。
一先ず話を聞こうと床へ座ると、右側からエリーが、左側からユーリヤが抱きついてきた。
「ハー君、ハー君、ハー君っ!」
「はーく。はーく。はーくー」
……いや、話があるんじゃなかったのかよ。
そして、ユーリヤはエリーの真似をしなくて良いから。
「エリー。どうしたんだ? 何か相談があるんじゃないのか?」
「うん……あのね。最近、ハー君がエリーに冷たい気がするのー!」
「……え? 俺が?」
「そうだよー。教室では他の女の子に囲まれて居てー、エリーが近寄れる雰囲気じゃないしー、放課後はすぐに居なくなっちゃうしー」
「後者は王宮の任務があるから仕方がないけど、前者は俺のせいじゃないよね?」
「でもね、皆は『エリーは家でヘンリー君とイチャイチャ出来るから、教室くらいは良いでしょ?』って……でも、放課後にハー君とは会えない事が多いのにー」
そう言って、エリーが俺の首に回した腕に力を入れる。
何だ。助けてっていうのは、こういう事か。
メッセージ魔法まで送って来る程だったから、余程の事かと思ったけれど、特に大した話ではなかったらしい。
……緊張の糸が切れてしまったからか、急激に眠くなってきた。
「あのねー、ハー君。それと困った事があってねー。最近、お母さんがお仕事から帰って来ない事が増えたんだー」
「……仕事が捗っていて、熱心になっているんじゃないのか? 前に研究が捗るとかって事を言っていた気がするし」
「そうなんだけど、夜にお家で一人だと寂しくて……ねぇ、ハー君。お家に泊まりに来てよー。エリー一人しか居ないし」
「……ふわぁ。そうだな。また今度遊びに行く……よ」
何だかエリーから凄い事を言われた気もするんだけど、ダメだ。完全に睡魔にやられている。
思考が纏まらず、瞼が重くて……寝よ。
エリーとユーリヤが頭を打たないように気をつけながら、ゆっくりとその場に寝転ぶ。
「悪い……昨日、全く寝れなくてさ……」
「わかったー。じゃあ、エリーもハー君と一緒にお昼寝するー」
「ユーリヤもー」
二人の柔らかくて、温かい体温を感じながら、魔法訓練室で爆睡してしまった。
……
「……君。ヘンリー君!?」
女性に名前を呼ばれて目を覚ますと、視界に白い太ももが映る。
どうやら誰かが俺を起こそうと、声を掛けているらしいが、頭のすぐ傍に立って居るから黒いパンツが丸見え……って、何だ?
スカートとパンツだし、女性の太ももには違いないんだが、ちょっと太いような……
「……って、うわぁぁぁっ! イザベル先生!? 寝起きに何て物を見せやがるんですかっ!」
薄らと開いた視界から眺めていた太ももとパンツがイザベル先生の物だと分かり、かなり気持ち悪くなる。
せっかく気持ち良く寝ていたのに、目覚めが最悪じゃないか。
「へぇぇぇ。遅刻してきた上に、お昼休みまで訓練室で女の子二人と一緒に寝ていたヘンリー君が、そんな事を言うのね?」
「ち、違うんです。まさか起きた直後にそんな即死級の罠があるとは……じゃなくて、昨晩ユーリヤがグズって一睡も出来無くて」
「ふぅぅぅん。小さい子のお世話が大変なのは分かるけど、ちょーっと態度が酷くないかしら?」
うわぁ。イザベル先生がめちゃくちゃ怒ってるよ。
ちなみに俺より先にエリーが起こされ――というか、俺がなかなか起きなかったらしく、既にエリーはしっかり怒られた後らしい。
訓練室の入口近くに立たされ、シュンとしている。
一先ず、イザベル先生に謝り倒し、午後の授業は真面目に受けるという事で、許して貰えた。
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