英霊召喚 ~ハズレと呼ばれた召喚魔法で、過去の大賢者を召喚して史上最強~

向原 行人

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第5章 新たな試練

第105話 猫耳幼女

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 アタランテにじゃれつく仔猫が緑色に光っている。
 これは成功だと考えて良いのだろうか。

『私とヘンリーさんの様に、頭の中で会話が出来ると言っていましたから、試しに何か質問してみてはいかがでしょうか?』
(なるほど。おーい、えーっと、猫ちゃーん)
『ひゃっほー! みーぎ、ひだり、みーぎ、ひだり……うぅぅぅ、とぉっ! あー、こんどもつかまえられなかったー!』

 えーっと、この子供みたいなはしゃぎっぷりと、全く人の話を聞かない感じは、間違いなく目の前の仔猫だろう。

(あのさ、君の名前を教えて欲しいんだけど)
『つぎこそ……みぎー、ひだりー、みぎー、ひだりぃぃぃ……いまっ! むー、またダメかぁー』
(あのー、君の名は?)
『わかった! こんどは、ひだりからにしよっと。ひだりー、みぎー、ひだりー、みぎー……てぇーい! なんで、ダメなんだー!』

 これは、アオイの魔法が中途半端に成功して、この仔猫の思考だけが一方的に入って来て、こっちの言葉が向うへ行かないのだろうか。

『いえ、ちゃんと発動していますよ。ただ、この仔猫が尻尾に夢中なだけです』
(分かった。要は、アタランテの尻尾が揺れているからダメなんだな)

 仔猫を見つめたまま、そっとアタランテに近づくと、スカートの上から揺れる尻尾を抑える。

「ひゃぁっ! あ、貴方……こ、こんな所で。そ、そういう事は部屋に帰ってからでも良いでしょ?」
「悪い。でも、俺もう我慢出来無くてさ」

 アオイの魔法が成功しているのなら、もうこんな場所へ居る必要は無いし、失敗しているのなら、何が悪いのかを教えて貰わなくては。
 この、成功していそうだけど確認が取れない中途半端な状態って、ちょっとモヤモヤして我慢ならないんだけど……どういう訳か、せっかく尻尾の動きを止めたのに、アタランテが身体を俺に押し付け、くねらせる。
 そのせいで、俺は手を動かしていないのにアタランテのお尻を撫で回しているみたいだし、尻尾が揺れて仔猫がピョンピョンと飛び跳ねるし、オッサンが羨ましそうにこっちを見つめているし……何だこの状況は?

 しかし、アタランテの尻尾の揺れが小さくなったからか、さっきの仔猫が両前足で尻尾をキャッチした。
 今なら聞けるか?

(ねぇ、君の名前は?)
『ん? ぼくのこと? ぼくはタマっていうんだよ』
(そっか。タマ、その尻尾は俺のお友達の尻尾だから、放してやってくれないか?)
『えー。やっとつかまえたのにー? やーだー!』

 名前は分かったものの、尻尾を離すというのは叶わなかった。
 まぁアタランテが痛がっている様子もないし、好きにさせておこうか。
 それに、この猫から聞いた名前が正しければ、魔法の確認としては十分だろうし。

「あの、この魔法ってどうやって解除するんですか?」
「キャンセルと言うだけニャ……って、まさかもう成功したの!?」
「えぇ。この尻尾にじゃれついている仔猫……タマっていう名前ですか?」
「う……そ、その通りだよ」
「よしっ! 猫と意思疎通する魔法を修得したぜっ!」

 まぁ修得したのはアオイであって俺ではないのだが。

「え? お兄さん、あの説明で理解出来たの!? しかも一発で成功……って、やっぱりお兄さんは凄いんだね」
「あー、うん。ま、まぁね。か、風の元素を中心に魔法を組み立ててみると、良いと思うよ」

 驚くマーガレットに、アオイが説明してくれた内容をそのまま話すと、尊敬の目で見られてしまった。
 このまま、「ヘンリーさん素敵!」とか言って、胸を触らせてくれたりしないだろうか。

「……なんだろう。意志疎通の魔法を使った訳でもないのに、お兄さんがエッチな事を考えているのが分かるよ」
「もうっ! 貴方ったら! 今日は私とでしょっ!」
「えーっと、とりあえず魔法を修得出来たし、そろそろ帰ろうか。ユーリヤ、おいでー」

 教えて貰った通りに意志疎通魔法を解除し、仔猫と遊んで居たユーリヤが抱きついてきたので抱っこする。
 ……最近、ユーリヤは抱っこ癖がついて来ていないか?
 まぁこれまでがこれまでだったから、仕方がないかもしれないが。

 一先ず用事が済んだので、講師にお礼を言って教室を出ようとすると、

「待つニャ!」

 呼び止められ、オッサンが教室の奥から何かを取り出した。
 その何かを持って俺に近づき、

「驚いたニャ。こんなに早く魔法を修得した人は初めてニャ。そして、これが猫ちゃんとの意思疎通魔法マスターの証ニャ。好きなのを持って行くと良いニャ」

 様々な種類の猫耳カチューシャを見せてきた。
 こ、このオッサン。どこでこんな物を買ってくるのだろうか。
 俺が何も言えずに絶句していると、

「にーに。にゃーにゃ!」
「おぉ、お嬢ちゃん。黒猫の猫耳を選ぶとは流石だね。よし、それはお嬢ちゃんにあげよう。お父さんとお揃いにしておこうね」

 いつの間にかユーリヤが黒い猫耳カチューシャを装着し、俺の手にもお揃いのカチューシャを握らされていた。

「ふぉぉぉっ! 猫耳美幼女っ! 可愛いっ! まさかこれほどまでの破壊力とはっ! これは、本物の猫よりも可愛いかもしれない!」

 オッサン。熱く叫んでいるが、その発言はただの変態だからな?
 素早く教室の扉を開いてギルドの入口へ移動すると、

「猫耳幼女、最……高っ!」

 先程居た教室の方から、大きな叫び声が聞こえて来て、ギルドの受付のお姉さんが驚いていた。
 ……あ、教室の扉閉めてなかった。
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