上 下
101 / 343
第5章 新たな試練

第101話 逢引

しおりを挟む
「なるほどねー。ドワーフの国かぁ。お兄さんも大変だねー……あ、すみませーん! これ下げて貰っても良いですかー?」
「それに加えて、獣人族の村ねぇ。しかも貴方、まだ手がかりが無いのよね? ……店員さん、これおかわりくださーい!」
「にーに。おいしー!」

 マーガレットとアタランテ、それからご飯の匂いで起きたユーリヤが食事を、ニーナとジェーンが甘い物を食べながら話をしているのだが……しかし、よく食べるな。
 特にユーリヤは寝て食べて……って、大丈夫か?

「アタランテは獣人族がどういう所に住んでいるのかは知らないんだよな?」
「分からないよ。だって私は、人間だもの。ただ、ちょーっと神様に怒られて、ライオンにされちゃったけど」

 アタランテは見た目も身体能力も完全に獣人族なんだけど、元々獣人族として生まれた訳ではないから分からないと。
 困った。
 獣人族の村については、ちょっとアタランテに期待していたのだが。

「マーガレットは何か知らないか?」
「んー、確かドワーフって鉱山の近く、というか鉱物が沢山採れる場所の近くに住むんでしょ? 魔法とかで、鉱物が沢山ある場所とか分からないかなー?」
「なるほど。確かに、鉱山から鉱山へ移動する種族だって言っていたな。鉱物の場所を知る事が出来たら、ドワーフの国の発見に役立つかもしれない」

(アオイ。魔法で鉱物が沢山ある場所を調べたり出来ないか?)
『うーん。私は出来ませんが、可能性があるとしたら精霊魔法ではないでしょうか』
(精霊魔法か。精霊魔法と言えばルミだな。エルフの村へ行ってみるか)
『でも、エルフとドワーフって仲が悪いというのが定番ではないですか? 私はドワーフに知り合いが居ないので、正確な所は分かりませんが』
(そうなのか。まぁとりあえずルミに聞いてみるか)

 ちらっとユーリヤを見てみると、アタランテと共におかわりしたご飯を笑顔で食べている。
 食べ過ぎだとは思うが、機嫌が良いので今がチャンスかもしれない。

「ユーリヤ。ちょっとだけ、席を外しても良いか?」
「にーに。どこかいくのー?」
「あぁ、エルフの村へ行ってくるよ。でも、すぐ帰ってくるからさ」
「わかったー。いってらっしゃーい」

 おぉ、食べ物が沢山あるとユーリヤがぐずらない。
 これから学校へ行くときも、食料を大量に用意してから行こうか……いや、学校は時間が長いから無理か。
 ユーリヤが食料を食べきった後、大惨事に成りかねないしな。

「じゃあ、行ってくる。……テレポート」

 エルフの村へ瞬間移動し、ルミの家へ。
 ノックをすると、中から人妻エロエルフ、リリヤさんが現れた。
 ……相変わらず、露出が激しくてグッドだ。

「あら、魔術師さん。さぁ、どうぞ。中へ入って」
「あ、いえ。今は本当に時間が無くて……ルミちゃんは居ますか?」
「まぁ、ルミを入れて三人でしたいんですね? ルミなら長老様の所へ行っていて、そのうち帰ってくると思うから、先ずは私たちで楽しみましょう」

 そう言って、リリヤさんが俺の手を両手で握り、胸の谷間を見せつけるようにして迫ってくる。
 三人で……は、さておき、俺もリリヤさんと楽しみたい。というか、いろいろ教わりたい。教わりたいのだが、

「ほ、本当にごめんなさい。俺もリリヤさんと一緒に居たいんですが、今は本当に時間が無いんですよ」

 本気で涙目になりながら家を後にした。
 早く帰らないと、ユーリヤが暴走して町が壊れる可能性がゼロではない。
 ……今度ユーリヤも一緒に連れてきて、ルミにユーリヤを見てもらっている間にリリヤさんとイチャイチャしてはどうだろうか。
 けど、どれくらい時間を要するものなのかが、未経験故に分からない。
 ルミがどれくらいユーリヤの事を見ていられるだろうか……と真剣に考えている内に、エルフの長老であるサロモンさんの家へ着く。

「失礼します。ルミちゃんは居ますか?」
「あー、お兄ちゃーん! ルミに会いに来てくれたのー?」
「あぁ、ちょっと相談したい事があってな」
「分かったー。ちょっと待っててねー……お爺ちゃん、ちょっとだけ出てくるねー」

 テケテケと小走りで駆け寄ってきたルミに連れられ、家から少し離れた森の中へ。
 少し大きな樹の傍で、家から見えない場所へ来ると、唐突にルミが両手を上げる。

「ふふっ。はい、お兄ちゃん。抱っこしてー」
「……なんで、抱っこ?」
「え? だって身長さがありすぎて、このままじゃチュー出来ないよ?」
「いや、チューって何の話だよ」
「え? 逢引じゃないの?」

 逢引って、ルミは意味を分かっているのか?
 というか、どこでそんな言葉を覚えて来るんだよっ!

「……そういうのじゃなくてだな。ちょっと教えて欲しいんだけど、ルミはドワーフの国がどこにあるか知らないか?」
「えー、違うんだー。……あとドワーフは知らないよー」
「じゃあ、サロモンさんとか知らないかな?」
「うーん。お爺ちゃんも知らないと思うよー。ルミはドワーフを見た事ないけど、エルフとドワーフって昔から仲が悪いらしいしー」

 やっぱりそうなのか。
 というか、逢引を否定した途端にルミが拗ねているんだが……何を期待していたんだ?

「お兄ちゃん。それより、そろそろ時空魔法を教えてくれる気になった?」
「あ、そろそろ帰らなきゃ。じゃあ、そういう事で」
「そういう事で……じゃないよっ! ねぇ、教えてよー! お兄ちゃーん! 教えてくれたらルミの事を好きに……」
「テレポート」

 無い胸を頑張って寄せようとして、クネクネしていたルミを見て、面倒臭さで逃げるように瞬間移動してしまった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...