上 下
97 / 343
第5章 新たな試練

第97話 シャロンの性欲

しおりを挟む
「あ、あの……私を獣人族の村へ連れて行ってくれますか?」

 シャロンさんが瞳を潤ませながら、至近距離で見上げてくる。
 わざとなのか、単に気付いていないのか、それとも大きさ故に仕方なくなのか、その胸をムニューっと俺の身体に押し付けながら。
 どうする? どうするよ?
 シャロンさんは数年間家族に会っていない。出来るならば会わせてあげたい。
 だけど、知っていると言ったものの、実際はその場所を知らない。
 しかし、おっぱいの感触は気持ち良い……これは違うっ!
 俺が何も返事をしないからか、シャロンさんが泣きそうになっている。
 俺より年上なんだけど、小柄な体と幼い顔で、年下の女の子を苛めているかのように錯覚してしまう。
 自らが招いた事なんだけど、俺は、俺は……

「分かった! じゃあ、シャロンさんを獣人族の村へ連れていこう!」
「ほ、本当ですかっ! ありがとうございます!」
「だが、今すぐにという訳にはいかない。さっきも行った通り、獣人族の村は危険な場所を通らなければならない。ある程度、自分で自分の身を守らなくちゃいけないんだ」
「そ、そうなんですね。で、では今日からでも、剣の練習をしてみます」
「それは良い心がけ……ですが、今まで剣を触った事すら無いシャロンさんが、いきなり剣が使えるようにはならない。そこで、俺が良き剣の師匠を紹介しましょう」
「お、お願いします」

 言ってしまった。
 シャロンさんを獣人村へ連れて行く……それはつまり、どこにあるかも分からない、手掛かりが全く無い獣人村を探さなくてはならないという事だ。
 しかし、やるしかないだろう。
 数年間家族に会えていないと言っているんだ。ユーリヤと同様に、何としても家族を探そう。
 とはいえ、それに先立って、別の問題もあるのだが。

「だけど、その前にクリアしなければならない問題が一つあります。もしも、それがクリア出来なければ、残念ながらシャロンさんを獣人村へ連れて行く事は出来なくなります」
「な、何でしょう? あ……あの、先程仰っていた獣人族の性欲が強いという話であれば、あれは発情期だけなので、その……普段はヘンリーさんを襲ったりしませんが……」
「え? それって逆に言うと、発情期になったら、俺はシャロンさんに襲われちゃうの?」
「……そ、そうならないように、努力します」
「いや、そこはむしろ自分を抑えず本能に従って……げふんげふん。そういう話じゃなくて、もっと別の話だよ。一先ず、その問題解決のために行かなきゃいけない場所があるんだ。ちょっとついて来てください」

 危ない、危ない。
 隣に居たユーリヤから、「にーに。せーよくって、なーにー?」とか聞かれてしまった。
 「そのうち、ユーリヤにも分かる日が来るよ」とか適当な事を言って、頭を撫でたら誤魔化せたけどさ。
 流石に六歳頃の幼女に教えて良い話ではないしね。
 右手でユーリヤの手を握り、フードを被り直したシャロンさんの手をさり気なく左手で引きつつ、いつもの第三王女直属特別隊用? の小部屋へ向かう。
 ……あれ? そういえばシャロンさんの持って来てくれた聖剣の資料で気になる記述があった気がするんだけど……まぁいいか。
 忘れているって事は、大した事ではないんだろう。
 途中で見かけた侍女さんに、フローレンス様への面会をお願いし、二人を連れて小部屋の中へ。
 扉を閉め、この部屋が密室で、それなりに大声を出しても外に声が漏れない事を教えると、

「えっ!? 先程言っていたクリアしなければならない問題って、ヘンリーさんの相手が出来るかどうかという事ですかっ!?」
「はい?」
「み、未経験ですが、私の覚悟一つで家族に会えると言うのなら……ど、どうぞっ!」
「ちょ、ちょっと、シャロンさん!? どうして、いきなり服を脱ごうとするのっ!?」

 何を勘違いしたのか、シャロンさんが上着を脱ぎ、肌着だけの……って、デカイッ!
 こ、これは……上着越しだったから見誤ったか!? もしかしたらニーナにも引けを取らないのでは!?

「にーに。わたしもー!」
「いや、ユーリヤは脱がなくて良いからね……って、シャロンさんも脱がなくて良いんですよっ!」
「それはつまり、着たままがお好みという事でしょうか?」

 先程性欲の話をしてしまったからか、シャロンさんが完全に誤解している。
 そもそもユーリヤの目の前で、何をすると思っているのだろう。
 いや、それ以前に、そもそも俺をどういう目で見ていたのだろうか。

『ヘンリーさん。以前にもお伝えいたしましたが、日頃の行いが滲み出ているんですってば』
(家族と逸れたユーリヤや、シャロンさんを家族と引き合わせてあげようと頑張っているのに)
『あの……それ以外の行いがダメ過ぎるかと』

 そんな事は無いはずなんだけど……と自分の胸に手を当てて考えていると、扉が開いてフローレンス様が入ってきた。

「フローレンス様。お忙しい所、すみません。少し御相談がありまして」
「へぇぇぇー。何かしら? まさか、シャロンとの結婚を認めろって話かしら?」
「はい?」

 フローレンス様は一体何を言っているのだろうかと思っていると、その視線が俺……ではなく、その後ろに向けられている。
 何があるのだろうかと振り返ってみると、突然扉が開いた事に驚いたのか、上半身が裸に近い格好のシャロンさんが俺の背に隠れるようにして、大きな胸を押し付けていた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです

やのもと しん
ファンタジー
「カイリ、今日からもう来なくていいから」  ある日突然パーティーから追放された俺――カイリは途方に暮れていた。日本から異世界に転移させられて一年。追放された回数はもう五回になる。  あてもなく歩いていると、追放してきたパーティーのメンバーだった女の子、アリシアが付いて行きたいと申し出てきた。  元々パーティーに不満を持っていたアリシアと共に宿に泊まるも、積極的に誘惑してきて……  更に宿から出ると姿を隠した少女と出会い、その子も一緒に行動することに。元王女様で今は国に追われる身になった、ナナを助けようとカイリ達は追手から逃げる。  追いつめられたところでカイリの中にある「神の使徒」の力が覚醒――無能力から世界最強に! 「――わたし、あなたに運命を感じました!」  ナナが再び王女の座に返り咲くため、カイリは冒険者として名を上げる。「厄災」と呼ばれる魔物も、王国の兵士も、カイリを追放したパーティーも全員相手になりません ※他サイトでも投稿しています

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

処理中です...