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第4章 マルチタスク
第81話 空腹幼女
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「良かったな。これで、お前は自由だぞ」
――GUGAAAAA
『えーっと、喜んでる感じですね。けど、テンションが上がり過ぎて、洞窟を壊しかねないので、少し抑えるように言って貰えませんか?』
「おーい! 喜んで居る所、悪いんだけど、俺たちが洞窟を出てからにしてくれないか? 勢いで洞窟を壊されたら、俺たちが死んじゃうからさ」
アオイの指摘通り、自重しろと言ってみると、今にも飛び立とうとする勢いだったドラゴンが、申し訳なさそうに小さく縮こまっている……ようにも見える。
「ね、ねぇ。お兄ちゃん。こ、このドラゴンは?」
「あー、ルミにはちょっと辛い話になるかもしれないんだけどな、その……」
今まで混乱状態に陥っており、目の前のドラゴンの事を何も把握していないルミに、経緯を話す。
この洞窟を守らせるために、ルミの先祖であるリンネア=リーカネンか、その仲間が子供のドラゴンをマジックアイテムを使って拘束していた事。
子供ドラゴンが両親を想い、悲しんでいた事。
マーガレットの退魔の力を使い、子供ドラゴンを拘束していたマジックアイテムを破壊した事。
「そ、そんな……でも、マジックアイテムを使って拘束だなんて事をするかなぁ?」
「真相は俺たちには分からない。リンネア=リーカネン本人がやったのか、その死後に誰か別の者がやったのか。ただ事実として、このドラゴンの首に巨大なマジックアイテムが付けられていたんだ」
そう、事実としては、エルフにだけ開く事が出来る魔法の扉や、巨大なドラゴンを拘束する首輪など、人間の技術では作れなさそうな、マジックアイテムが多数あった。
単純に考えれば、それらがエルフの魔力によって作られたと思ってしまうが、そのエルフの英雄であるリンネア=リーカネンは、ルミの直接の先祖なのだ。
一先ず、俺から余計な事を告げるのは控えておこう。
――GUGOAAAA
そんな事を考えながらルミと話をしていると、突然ドラゴンが再び咆哮する。
(アオイ、何て言っているんだ?)
『……まだ? と』
(あー、早く外へ出たいんだよな。そりゃそうだよな。何千年も、ずっとここに居たんだから……って、食べ物とかはどうしていたんだ? 大丈夫なのか?)
『このドラゴンはアースドラゴンですから、土を糧に出来るんじゃないんですかね? もしくは、あの呪いのマジックアイテムの効力で、空腹では死なないとか。いずれにせよ、ドラゴンの生態にも呪いにも詳しい訳ではないので、想像ですけど』
なるほど。
……だったら、このドラゴンに食べ物を与えたら、静かに待っていてくれるだろうか。
お腹を空かせている所へ食料があれば、一先ずそっちに気が向いて、まだかまだかと催促してこない……はず?
「おーい、悪いな。もう少しだけ待ってて欲しいんだ。だから待って居る間に、これでも食べておいてくれ」
洞窟探索用に持って来ていた食料を、少しだけ残してドラゴンの前に置いてみる。
後は聖銀を採って戻るだけだし、中間地点の小屋にも食糧を置いてあるから、俺たちの分の食料は少しあれば十分だろう。
……さて、ドラゴンが食事をしている間に、俺たちは聖銀を採らなければ。この奥なんだろうな。
――GUGAOOOO
って、なんだよ! 待っていてくれって言ったのにさ。
『ヘンリーさん。美味しい、もっと……と言っていますが』
(あ、あれ? あれだけの量の食料をもう食べたのか!?)
『そりゃあ、この巨体ですからね。人間サイズの食糧なんて、一口だと思いますけど』
(……あれ? もしかして俺、大失敗した?)
『えぇ、やらかしましたね。どうするんですかっ!?』
残りの食糧は、俺たちでさえ軽食と思える程の量しか残していない。
どうしよう。
「あー、すまん。もっとあげたい所なんだが、ほら俺たちと身体の大きさが違うだろ? だから諦めて、我慢してくれ」
一先ず正直に言ってみると、ドラゴンが小さく何か言った直後、全身が強く光輝く。
「な、何だ!?」
突然ドラゴンが光ったかと思うと、暫くして光が収まり、その巨体が消えて無くなっていた。
「一体、何が起こったんだ!?」
「あ、貴方。その……後ろ、後ろに……」
「後ろ? 後ろに何が……」
何とか声を絞りだしたかのようなアタランテに言われて振り向くと、何故かそこに小さな小さな幼女が立って居る。
「ごはんー! ごーはーん!」
ルミよりも更に幼く、六歳か七歳くらいの茶髪の全裸幼女が俺の鞄をひっぱり、ご飯を要求してきた。
こ、これってまさか……いや、でも、そんな馬鹿な……
『あの、ヘンリーさん。信じられないでしょうけど、この幼女から、先程まで居た大きなドラゴンと同じ魔力を感じるんですけど』
(……マジで?)
『はい。十中八九、先程のドラゴンが魔法を使い、人間に姿を変えたのかと』
(でも、どうして幼女の姿なんだ?)
『ドラゴンですし、人間換算したらこれくらいの年齢だと思いますよ。ドラゴンは寿命が二十万年とも言われて居ますし、二千年経ってようやく人間でいう一歳分の歳を取る感じですし』
(いや、二千年で一歳って! じゃあ仮にリンネア=リーカネンがこのドラゴンを拘束していたとして、約五千年前の事だから、ここで二歳分も過ごした……いや、単位が大き過ぎて訳がわからんよ)
お腹を空かせているであろうドラゴンに食料を与えたら、何故か空腹幼女が現れてしまった。
――GUGAAAAA
『えーっと、喜んでる感じですね。けど、テンションが上がり過ぎて、洞窟を壊しかねないので、少し抑えるように言って貰えませんか?』
「おーい! 喜んで居る所、悪いんだけど、俺たちが洞窟を出てからにしてくれないか? 勢いで洞窟を壊されたら、俺たちが死んじゃうからさ」
アオイの指摘通り、自重しろと言ってみると、今にも飛び立とうとする勢いだったドラゴンが、申し訳なさそうに小さく縮こまっている……ようにも見える。
「ね、ねぇ。お兄ちゃん。こ、このドラゴンは?」
「あー、ルミにはちょっと辛い話になるかもしれないんだけどな、その……」
今まで混乱状態に陥っており、目の前のドラゴンの事を何も把握していないルミに、経緯を話す。
この洞窟を守らせるために、ルミの先祖であるリンネア=リーカネンか、その仲間が子供のドラゴンをマジックアイテムを使って拘束していた事。
子供ドラゴンが両親を想い、悲しんでいた事。
マーガレットの退魔の力を使い、子供ドラゴンを拘束していたマジックアイテムを破壊した事。
「そ、そんな……でも、マジックアイテムを使って拘束だなんて事をするかなぁ?」
「真相は俺たちには分からない。リンネア=リーカネン本人がやったのか、その死後に誰か別の者がやったのか。ただ事実として、このドラゴンの首に巨大なマジックアイテムが付けられていたんだ」
そう、事実としては、エルフにだけ開く事が出来る魔法の扉や、巨大なドラゴンを拘束する首輪など、人間の技術では作れなさそうな、マジックアイテムが多数あった。
単純に考えれば、それらがエルフの魔力によって作られたと思ってしまうが、そのエルフの英雄であるリンネア=リーカネンは、ルミの直接の先祖なのだ。
一先ず、俺から余計な事を告げるのは控えておこう。
――GUGOAAAA
そんな事を考えながらルミと話をしていると、突然ドラゴンが再び咆哮する。
(アオイ、何て言っているんだ?)
『……まだ? と』
(あー、早く外へ出たいんだよな。そりゃそうだよな。何千年も、ずっとここに居たんだから……って、食べ物とかはどうしていたんだ? 大丈夫なのか?)
『このドラゴンはアースドラゴンですから、土を糧に出来るんじゃないんですかね? もしくは、あの呪いのマジックアイテムの効力で、空腹では死なないとか。いずれにせよ、ドラゴンの生態にも呪いにも詳しい訳ではないので、想像ですけど』
なるほど。
……だったら、このドラゴンに食べ物を与えたら、静かに待っていてくれるだろうか。
お腹を空かせている所へ食料があれば、一先ずそっちに気が向いて、まだかまだかと催促してこない……はず?
「おーい、悪いな。もう少しだけ待ってて欲しいんだ。だから待って居る間に、これでも食べておいてくれ」
洞窟探索用に持って来ていた食料を、少しだけ残してドラゴンの前に置いてみる。
後は聖銀を採って戻るだけだし、中間地点の小屋にも食糧を置いてあるから、俺たちの分の食料は少しあれば十分だろう。
……さて、ドラゴンが食事をしている間に、俺たちは聖銀を採らなければ。この奥なんだろうな。
――GUGAOOOO
って、なんだよ! 待っていてくれって言ったのにさ。
『ヘンリーさん。美味しい、もっと……と言っていますが』
(あ、あれ? あれだけの量の食料をもう食べたのか!?)
『そりゃあ、この巨体ですからね。人間サイズの食糧なんて、一口だと思いますけど』
(……あれ? もしかして俺、大失敗した?)
『えぇ、やらかしましたね。どうするんですかっ!?』
残りの食糧は、俺たちでさえ軽食と思える程の量しか残していない。
どうしよう。
「あー、すまん。もっとあげたい所なんだが、ほら俺たちと身体の大きさが違うだろ? だから諦めて、我慢してくれ」
一先ず正直に言ってみると、ドラゴンが小さく何か言った直後、全身が強く光輝く。
「な、何だ!?」
突然ドラゴンが光ったかと思うと、暫くして光が収まり、その巨体が消えて無くなっていた。
「一体、何が起こったんだ!?」
「あ、貴方。その……後ろ、後ろに……」
「後ろ? 後ろに何が……」
何とか声を絞りだしたかのようなアタランテに言われて振り向くと、何故かそこに小さな小さな幼女が立って居る。
「ごはんー! ごーはーん!」
ルミよりも更に幼く、六歳か七歳くらいの茶髪の全裸幼女が俺の鞄をひっぱり、ご飯を要求してきた。
こ、これってまさか……いや、でも、そんな馬鹿な……
『あの、ヘンリーさん。信じられないでしょうけど、この幼女から、先程まで居た大きなドラゴンと同じ魔力を感じるんですけど』
(……マジで?)
『はい。十中八九、先程のドラゴンが魔法を使い、人間に姿を変えたのかと』
(でも、どうして幼女の姿なんだ?)
『ドラゴンですし、人間換算したらこれくらいの年齢だと思いますよ。ドラゴンは寿命が二十万年とも言われて居ますし、二千年経ってようやく人間でいう一歳分の歳を取る感じですし』
(いや、二千年で一歳って! じゃあ仮にリンネア=リーカネンがこのドラゴンを拘束していたとして、約五千年前の事だから、ここで二歳分も過ごした……いや、単位が大き過ぎて訳がわからんよ)
お腹を空かせているであろうドラゴンに食料を与えたら、何故か空腹幼女が現れてしまった。
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