上 下
57 / 343
第4章 マルチタスク

第57話 エロエルフさん

しおりを挟む
 二人が大量に買い、店主に運んで貰ったと言う食料や衣類やらを、人目の無い時を見計らって空間収納魔法で取り込むと、ワープ・ドアでフィオンの洞窟へ。

「洞窟の中で魔法が使えない事もあって、この洞窟の攻略は長期戦になると思われる。一先ず、ここに拠点となる小屋を作ろう」
「私と貴方の愛の巣だね?」
「愛の巣……あー、うん。まぁそうなんだけど、今回は二人っきりじゃないから」

 チャンスがあれば、またアタランテと一緒にお風呂へ入りたいけれど、今回は難しいだろう。
 というか、洞窟の中ではお風呂も難しいと思うのだが。

「ねぇねぇ。今言っていた愛の巣ってどういう事? 二人っきりだと何が起こるの? ねぇ、ちょっと私も混ぜてよー」
「え? 三人では未だ早いというか、先ずはノーマルが先というか……」
「そ、そうだね。マーガレットさんの参加は出来れば控えて欲しいかな」

 何の話かも分からずにマーガレットが混ざろうとしてきたが、俺とアタランテが断ってしまったので、ちょっとへこみだした。

「あー、いいんだー。どうせ私なんて何の特徴も無いもんねー。アタランテちゃんみたいに猫耳でもないしー、エルフの子みたいにロリでもないしー。あーあー、私は仲間外れなんだー」

 マーガレット……ちょっと面倒臭いんだけど。
 だけど、これから洞窟を攻略しようというのに、メンバーがバラバラでは不味い。
 俺は小さく溜息を吐くと、マーガレットに耳打ちする。

「あのな。今から俺が魔法で小屋を作るんだけど、以前そこでアタランテと……その、いろいろあったんだよ。察してくれ」
「なるほどねー。じゃあ、今回は私も混ぜてねー」
「いやそこは普通、引く所じゃないのか!?」
「なんで? 男と女が一緒に居るんだから、いろいろ起こって当たり前でしょ? あ、お兄さんが希望するなら妊娠の加護をあげるから、遠慮なく言ってねー」

 混ざりたがってきたー!
 というか、妊娠の加護とか怖いよ! まだ学生だよ! 責任とか取れないよ!
 いや、そもそも妊娠するような事なんてしないけどさ。

『ヘタレですもんね』
(ヘタレじゃないっての! 俺は紳士なだけなんだ。そういう事は、ちゃんと恋人同士になってからするべきなんだ)
『胸を触ったり、パンツは覗いたりするのにですか?』

「さぁ、小屋を作るぞ。希望があったら言ってくれ。出来る限り応じるから」

『逃げたっ! 胸を触った事を指摘したら、話を一方的に終わらせるんなんて」

「ふむ。個室か。確かに、洞窟内で一緒に居るのだから、休憩時くらいはプライベートな空間が欲しいよな。分かった。他には?」
「ほぅ。大きなお風呂か。了解した。もう無いか?」

『えーん。ヘンリーさんが苛めるー』
(……はいはい。俺が悪かったかよ。とりあえず、小屋を作るから魔法を頼むよ)
『はーい』

 一先ずアオイを宥め、前と同じ要領でマテリアライズの魔法を使い、少し広めの小屋を作成した。

「いやー、お兄さん。凄いんだねー。流石、何人も女の子をはべらせているだけはあるねー」
「まぁな……って、ちょっと待った。何だよ、女の子をはべらせているって」
「え? お兄さんはハーレムを作ろうとしているんじゃないの?」
「違うよっ! 魔王や魔族を倒そうとしているんだよっ!」

 マーガレットに褒められたかと思ったら、ハーレムって。
 漢のロマンではあるものの、そんなの実現出来ないっての。

『実現してると思うんですが……』

 何をだよっ! アオイにツッコミつつ、今度は空間収納魔法でアタランテたちが買った木箱を取り出す。

「二人とも、四部屋作ったから好きな場所を選んでおいて。あと買った物のうち、持って行く分だけ別に分けておいて。洞窟の中では空間収納魔法が使えないから、自分たちで運ばないといけないからな」
「了解だよ。貴方は、どうするの?」
「一先ず拠点作りが終わったからルミを迎えに行ってくる。エルフが居ないと聖銀が採れないらしいしさ」
「……まぁ仕方ないね。いってらっしゃい」

 一人ファッションショーを始め出したマーガレットはさておき、アタランテに見送られながら、テレポートの魔法でエルフの村へ。
 ……って、来たけどルミの家ってどこなんだ? 長老サロモンの家に行けば良いのだろうか。
 初めてこの村へ来た時は、見張りみたいな人が居たはずだけど……っと、居たな。あの女性に聞いてみようか。

「すみません。ルミ……ちゃん、というかルミ=リーカネンの家って、どちらなんでしょうか」
「あら。失礼ですが、どちら様でしょうか? それに、どうやって村の中へ?」
「失礼しました。俺はヘンリー=フォーサイスという者で、ルミちゃんに洞窟を案内してもらう約束をしていたんですが……」
「あぁ! 貴方が伝説の魔術士様なんですね!? 話はルミから聞いています。どうぞ、こちらへ」
「ちょっと、伝説の魔術士って何ですか!?」
「え? ロストマジック――時空魔法を使われるんですよね? しかも高等魔法である召喚魔法まで」

 いや、確かにアオイの力で時空魔法は使えるけれど、伝説の魔術士って。
 流石にその呼ばれ方は恥ずかしいのだが。
 しかし俺たち人間社会と違い、エルフの村では召喚魔法が高く評価されているらしい。
 高等魔法かー。こっちは自分の力で使えるから、ちょっと嬉しいかも。
 しかも、この女性は二十代前半といった感じで、出る所がしっかり出ているのに、身体は細い。
 胸を覆う布と、ミニスカートみたいに短い腰布だけで、お腹や太ももを露出しまくった……正直エロエルフさんなのだが、エルフの女性はみんなこういう格好なのだろうか。

『エルフは主に精霊魔法を使うから、服の面積が小さいんじゃないですか?』
(なるほど。うちの学校の実習服の話は、エルフでも同じなのか)
『まぁ精霊を介さない私には関係の無い話ですが』
(正直、それは本当に助かる。だって俺、あんな格好したくないし)

 エルフのお姉さんの太ももを見ながらついて行くと、小さな木の家に案内された。

「どうぞ。ルミはこちらに居ますよ」
「ありがとうございます」
「ルミー。お客様よー」

 このお姉さんはルミと知り合いだったらしく、扉を開け、ルミを呼び出してくれた。

「はーい。どなたーって、ママ! お兄ちゃんを連れてくるなら、先に言ってよー! もぉっ、髪の毛乱れてるしー」
「あらあら、ごめんなさいねー」

 いや、洞窟探索へ行くのに髪の毛とか関係ないと思うのだが……

「……って、ママ!? 今、ママって言った!?」
「うん。お兄ちゃんの隣に居るのはルミのママだけど?」
「な、なんだってー!」

 予想外のルミの言葉に、思わず硬直してしまった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無能はいらないと追放された俺、配信始めました。神の使徒に覚醒し最強になったのでダンジョン配信で超人気配信者に!王女様も信者になってるようです

やのもと しん
ファンタジー
「カイリ、今日からもう来なくていいから」  ある日突然パーティーから追放された俺――カイリは途方に暮れていた。日本から異世界に転移させられて一年。追放された回数はもう五回になる。  あてもなく歩いていると、追放してきたパーティーのメンバーだった女の子、アリシアが付いて行きたいと申し出てきた。  元々パーティーに不満を持っていたアリシアと共に宿に泊まるも、積極的に誘惑してきて……  更に宿から出ると姿を隠した少女と出会い、その子も一緒に行動することに。元王女様で今は国に追われる身になった、ナナを助けようとカイリ達は追手から逃げる。  追いつめられたところでカイリの中にある「神の使徒」の力が覚醒――無能力から世界最強に! 「――わたし、あなたに運命を感じました!」  ナナが再び王女の座に返り咲くため、カイリは冒険者として名を上げる。「厄災」と呼ばれる魔物も、王国の兵士も、カイリを追放したパーティーも全員相手になりません ※他サイトでも投稿しています

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...