上 下
53 / 343
第4章 マルチタスク

第53話 パンツ! パンツ! パンツ!

しおりを挟む
 フローレンス様から魔法学校が再開されると聞いた翌朝。
 寮の自室で三人の少女に囲まれて起きた俺は、朝の準備を整えた後、テレポートを使って先ずジェーンを王宮へと連れて行く。
 昨日、フローレンス様とニーナにも、顔合わせだけはしておいたので、後の時間配分や訓練の内容はニーナとジェーンで決めてもらう。
 ちなみに、ジェーンは俺やエリーと離れるのを嫌がったが、王宮での任務だというと、しぶしぶだが了承してくれた。
 騎士だからなのか、王宮やお城での任務であれば、単独行動でも問題ないらしい。
 それから俺は、次にアタランテとマーガレットを街の市場へと連れて行く。

「二人は俺の授業が終わるまでに、フィオンの洞窟を攻略するのに必要だと思われる物を買い揃えておいて欲しい。資金は十分に渡しておくから、必要だと思ったらわざわざ俺に確認なんてせず、二人の裁量で購入して構わないから」
「確か、魔法が使えない洞窟だって話しだったね。松明なんかも要りそうだね」
「厳密に言うと、土の魔法は使えるけどな。買った物は後で俺が空間収納魔法を使って運ぶから、重量とか体積なんかも気にしなくてよいから」
「分かったよ」

 頷くアタランテに金貨の入った麻袋を渡し、同じくマーガレットにも渡す。

「お兄さん。本当に何を買っても良いんだよね?」
「……洞窟の攻略に必要な物ならな」
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと分かってるってー」

 マーガレットは随分と軽いけれど、本当に理解しているのだろうか。
 アタランテと共に魔物を倒しまくって得た素材を錬金ギルドに買い取ってもらったお金と、第三王女直属特別隊としてフローレンス様から預かっている支度金があるので、資金は潤沢にある。
 二人に渡したお金だって、普通の家族が一ヶ月は余裕で暮らせるくらいの金額だけど、それでも全体の資金の十パーセント程度にしかならない。
 なので、最悪無駄遣いをされても致命的にはならないが……あまりふざけた物は買わないで欲しいのだが。

「アタランテ。マーガレットの事をよろしく頼むよ」
「あぁ、任せといて」
「ちょっと、お兄さん!? どうして私を不安そうな目で見て来るのさっ! ホント、大丈夫だってば」

 マーガレットが大丈夫と言えば言う程、不安になるのは何だろうか。

「じゃあ、俺は学校に行ってくるから。もしも緊急で連絡を取る必要があったら、マーガレットが俺にメッセージを魔法を送ってくれ」
「はーい。オッケー」

 これは昨晩知ったのだが、魔術士ギルドが魔法代行サービスとして行っている、遠く離れた相手に言葉を伝える魔法を、何故かマーガレットが使えるのだとか。
 よくよく考えると、アオイを除けば英霊で魔法を使えるのはマーガレットが初めてだったな。
 どこかで時間を作って、出来る事の全容を教えて貰わなければ。

「……って、こんな事をしているうちに、もう少しで授業が始まる時間じゃないか。テレポート!」

 人気の無い路地へ姿を隠し、すぐさま瞬間移動で魔法学校の魔法訓練室へ。
 直接教室の中へ移動しても良かったのだけど、若干時間に余裕があるし、久しぶりの学校でクラスメイトを驚かせるのもどうかと思ったので、ここから歩いて行こうと思ったのだが、

「な、な、な……なんで、アンタがここに居るのよっ! というか、いつから居たのよっ! この変態っ!」

 何故か突然女子生徒に怒られてしまった。
 その女子生徒はどうやら着替えている途中だったらしく、制服のローブも着ずに、薄いシャツとスカートだけの姿で、いきなり現れた俺を前に驚き、固まっている。
 とにかく謝らなければと思ったのだが、ついつい着替え中の姿に俺の視線が吸い込まれてしまい、スカートからスラリと伸びる細い脚や、シャツの下でほんのり小さな膨らみを見せる、控えめな胸……

「って、何だソフィアか」
「何だとは何よ。というか、アンタ。今、ウチの顔を見る前に、胸を見てウチだって判断しなかった!?」
「……ソ、ソンナコトナイヨ?」

 十四歳にして、全く膨らむ気配が無い胸でソフィアだと気付いてしまったが、えっと……そうだ。声とか、話し方で気付いたんだ。そう、そうなんだ。
 まぁでも、ルミに比べればまだソフィアの方が……って、当然か。
 ルミは人間換算したらまだ十二歳だしな。これでソフィアより大きかったら……

「で!? アンタは、いつまでウチの着替えを覗いているつもりなの!?」
「あぁ、悪い悪い……って、ちょっと待った! 今思い出したけど、俺この前の魔法大会で勝ったよな! だから、学校でもギルドでも、いつでもどこでもソフィアのパンツ見放題って約束だろ」
「……な、何の事かしら?」
「おいおい。惚けようったって、そうは問屋が卸さねぇぜっ! ほら、早く自分でスカートを捲り上げて、『ウチのパンツを見てください』って、言えよ」

『ヘンリーさん。経緯はどうあれ、そこだけ聞くと、ド外道ですよ?』
(いいや、これは立派な契約だ。俺とソフィアはパンツを掛けて、魔法大会という舞台で勝負したんだ。途中、いろいろ有り過ぎたけど、それでも勝ちは勝ちだっ!)

「あ、あれは……ほ、ほら。戦いの途中で魔族が現れた訳だし、また日を改めて再戦って事で」
「いーや、ダメだ。俺はソフィアのパンツを見せてもらうまで、ここを動かねぇぜっ! ほら、パ・ン・ツ! パ・ン・ツ! パ・ン・ツ!」

 ソフィアもアオイと同じように魔族が……なんて言い出したけど、そもそもその魔族だって殆ど俺とジェーンで倒したんだ。
 魔法学校の被害を最小限に抑え、フローレンス様を救った俺に、パンツのご褒美くらいあったって、罰は当たらないだろう。

「早く見せろよ! パ・ン・ツ! パ・ン・ツ! パ・ン・ツ!」
「で、でも、ついさっきウチの着替えを覗いたじゃない」
「けど、パンツは見てないぞ! パ・ン・ツ! パ・ン・ツ! パ・ン・ツ!」
「だけど、シャツ越しにウチの胸を見たしさ」
「あぁん!? そんな胸だか背中だか、分からないような物をシャツ越しに見た所で……あ、あれ? そ、ソフィア……さん? ちょ、ちょっと落ち着いて……」
「乙女の胸を見ておいて……ふざけるなぁぁぁっ!」

 調子に乗り過ぎた俺は、魔法大会でも見せなかったソフィアの強烈な魔法の一撃で、見事に吹き飛ばされてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

俺だけ異世界行ける件〜会社をクビになった俺は異世界で最強となり、現実世界で気ままにスローライフを送る〜

平山和人
ファンタジー
平凡なサラリーマンである新城直人は不況の煽りで会社をクビになってしまう。 都会での暮らしに疲れた直人は、田舎の実家へと戻ることにした。 ある日、祖父の物置を掃除したら変わった鏡を見つける。その鏡は異世界へと繋がっていた。 さらに祖父が異世界を救った勇者であることが判明し、物置にあった武器やアイテムで直人はドラゴンをも一撃で倒す力を手に入れる。 こうして直人は異世界で魔物を倒して金を稼ぎ、現実では働かずにのんびり生きるスローライフ生活を始めるのであった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...